[読書メモ]『ニッポンの歯の常識は?だらけ』(河田克之, 赤松正雄)

p23
歯科医師という存在は立派な先生ももちろん多いが、残念ながら「儲け主義」的な印象を持たせる方々も少なくない。

p29
人間の身体は明確にすべてがきれいにわかっていて、形態学的にはみんな同じなのに、 人間個々の動き方は天と地ほど違う。

p34
毛先が極細とか、細かく割ったりねじったり、某メーカーだけでも歯ブラシの種類は六〇〇種もあると聞きます。

p39
他の多くの先進国では歯の美しさがステイタスシンボルであり、教養の象徴です。でも、日本にはそのような認識がほとんどないように感じます。

p40
自己管理ができるかどうかは非常に重要な要素です。たとえば「頭が痛いので会社を休ませてくれ」はアメリカでもOKです。頭痛は事前にコントロールすることができないからです。ところが、「今日は歯が痛いので会社を休ませてくれ」はNG。後者は普段から歯の検診を受けていれば防ぐことのできる痛みだからです。

p71
これからの歯科医療は衛生士が主役でしょう。 歯医者は悪くなった歯を直す (修理)役割、健康な状態に治すのが衛生士です。

p74
同じ日に治療すると一方が保険請求できないとか、治療しても請求項目がないようなおかしなことが多すぎます。

p82
健康であること、そして無駄な病気を作らないことが最善の医療費抑制だと思っています。

pp92-93
日本の保険って、世界一のものでしょう。絶対壊してはいけない、世界に誇る保険制度です。その世界に誇る保険制度を維持するためにも、国民の健康を犠牲にしてしまっている現状を変えなきゃいけない。

p102
好きな言葉の一つですが、歯科医として、私の最も愛する言葉は「歯槽膿漏」です。反対に、最も嫌う言葉は「歯周病」です。

p121
虫歯になりやすいか、なりにくいか。歯周病の進行が速いか遅いか。虫歯にも歯周病にも強い人がたまにいますが、そんな恵まれた人はおそらく二〜三%ですから、ほとんどの人は人生八〇年以上として、そのままではいつか「歯なし」になると覚悟すべきでしょう。ということで、できるだけ早い時期から歯のケアに取り組まないと、ほとんどすべての人が、いつかどこかで「歯なし」になってしまいます。

p127
歯周病が病気として不都合な症状を現し始めるのは、通常は早くても二〇歳以降です。その点、虫歯は歯が生えてから早ければ数か月で症状が見え始めます。しかも、歯が成熟して三〇歳を過ぎるころになると、やや減少傾向が見られます。 この観点からすれば、虫歯が子どもの病気、歯周病が大人の病気という認識は間違っていないと思います。

pp130-132
親知らずの場合、わずかな異常を見つけたら、すぐに抜歯することをお勧めします。 親知らずはできるだけ早い時期に抜歯して、それ以外の歯は一本たりとも抜かないというのが基本的な姿勢です。 親知らずは人類の進化の過程で不要になった歯で、生える場所がない、生えてきても出来損ないというのがほとんどです。場所的にも治療ができないとか、治療しても満足な結果が得られないことも抜歯をお勧めする理由の一つです。また、親知らずを残しておくと、手前の歯に多大な損失を与えることが多いということもあります。

p151
歯科医療が医学の一環として行われるべきだという考えは正しいと思います。しかし、現状では歯学と医学の隔たりがあまりにも大きすぎて、同じ土俵に乗り切れないのではないでしょうか。 卒後研修という制度が一〇年ほど前から始まっています。一部の歯科医が医学の研修に参加していますが、大学六年間に異なった教育を受けているので、医師と歯科医では言葉が通じないような状況です。 医学常識では考えられないような発想が歯学界に根付いているからです。/そこには歯のことに特化したよい面も多くあります。 しかし、医学常識の欠落は致命的な溝を作っています。統合医療を行うからには、専門家としての最初の教育、つまり基礎医学を一緒に学ぶことから始めなくてはいけないと思います。 歯学部を廃止して、「医学部のなかの歯学科」が望ましい将来像です。

p158
「歯石は取ったほうがよい」と感じている歯科医は多いかもしれませんが、歯石こそ歯周病の真犯人だという私の主張を積極的に支持してくれる歯科医は少ないと思います。

pp159-160
「常在菌による細菌感染の原因は異物の存在である。したがって、歯槽骨破壊と歯槽骨再生を妨げる原因は異物である」という共通認識に基づいて集まった学会であれば、私の主張は画期的な話題となり、議論の対象にもなるでしょう。

【誤植】
p106
誤:歯を黒く染める習慣があったやに聞きます。
正:歯を黒く染める習慣があったと聞きます。


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