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おしぼりと日本人

おしぼり

皆さんは、ご家族やお友達とお食事にはどれくらいの頻度で行かれるでしょうか?
おそらく週に1回という方もいれば、月に1回という方もいるでしょう。お誕生日の日やお祝いごとの時は、いつもより一段敷居の高いレストランに行くこともあるでしょうか。

自宅で食事をする時はあまり見ないかもしれませんが、日本ではレストランの価格帯に関わらず、必ずと言い切って良いほど、「おしぼり」が出てきます。使い捨てタイプのものもあれば、何度か使用できる布地タイプもあります。この「おしぼり」ですが、国によって扱い方が異なっています。

日本では、どのような扱われ方をするのでしょうか。

おしぼりの歴史

諸説ありますが、その歴史は古いです。1つには、712年の書物「古事記」(現存する日本最古の歴史書)が編纂された頃に、「公家が客人を自宅に招く際に、おもてなしのために出した布」という説があります。
これが事実であれば、今から1300年以上も前になるため、「おしぼり」には長い歴史があると考えられます。
さらに1947年以降、戦後復興で日本には飲食店が増えていったことで、おしぼりの習慣の普及は加速しました。当時は「おしぼり」を、お店の人が自分たちで洗って提供していましたが、日本は外食産業が盛んで、客数が増えることにより、手作業では提供が追いつかなくなりました。
1955年頃になると、「おしぼり」を貸す、いわゆる「おしぼりビジネス」まで誕生しました。

おしぼりの衛生基準

「おしぼりビジネス」が日本に誕生したことで、日本国の厚生省より衛生基準が設けられました。その内容は以下のように記載されています。

・変色及び異臭がないこと
・大腸菌群が検出されないこと
・黄色ブドウ球菌が検出されないこと
・一般細菌数は一枚当たり10万個を超えないことが望ましいこと
・借用後4日を過ぎたおしぼりは客に提供しないこと
・おしぼりは手指及び顔面等を清潔にするための用に供すること
・おしぼりを提供する際は加温する、加温しない時は4℃以下にすること
・使用済みのおしぼりは、ふた付きの容器等に入れておくこと
・塩素剤等による消毒の場合、さらし粉、次亜塩素酸ナトリウムの遊離250ppmの水溶液中に3分間以上浸すこと
・熱湯等による消毒の場合、80℃以上の熱湯に10分以上浸す、又は、100℃以上の蒸気に10分間以上触れさせること

このように「おしぼり」は、衛生的に厳しい管理を行っています。

そんな厳しい管理基準に置かれる「おしぼり」は、日本では多くのレストランで提供されます。また、海外でも格式の高いレストランや、日本と同じようなKIREIへの感度の高い文化圏の国で提供されるようになっています。
しかし、この「おしぼり」ですが、日本では他の国と明確に異なることがある私は考えます。それは出されるタイミングです。

「おしぼり」の価値をさらに高める一工夫

日本は「サービス大国」と感じられる場面が多々ありますが、この「おしぼり」もその一つです。

通常、海外のレストランでおしぼりが提供される場合、最初からテーブルに配置されているか、食前のみ提供されること、または常温で提供されることがほとんどです。しかし、日本では違います。

多くの場合、お客様がテーブルに案内され(日本では、お客様は入店後、勝手に席には行かず、店員よりご案内を受けテーブルにつきます)、オーダーを考えるためメニュー表を見ている間に、水やお茶とともに「おしぼり」が出されます。
このタイミングが絶妙です。外気に触れた状態で店内に入り、『食前には手を洗いたいなあ』と思ったタイミングで、「おしぼり」が提供されるのです。

さらに多くのレストランでは、夏には「冷たいおしぼり」冬には「温かいおしぼり」が提供されます。
また、格式の少し高いレストランでは、入店時のみならず、食後もこれまた絶妙なタイミングで提供されます。食事が終わり、デザートが出された後、デザートを食べ終わりそうなタイミングで、食後のお茶とともにその「食後おしぼり」が登場するのです。
食事をした後は、口のまわりの汚れがあったり、食事中に摂取した油が顔に少しずつ出てきたりします。「食前のおしぼり」は何度か使用したことで汚れているため、この「食後おしぼり」が何とも言い難い、素晴らしい価値を持つのです。

サービス価値と店員の行動

しかし、この「おしぼり」の価値を高めているのは、他ならぬレストランの店員の行動だと私は思います。日本が「サービス大国」だと前述しましたが、日本は相手の気持ちを汲み取ったサービスがとても上手です。
店員の身なりだけでなく、所作や言葉遣い、相手を想ってかける言葉などは何よりもKIREIな言動だと感じます。

日本が世界に誇れるものは、他ならぬ日本人のそういった国民性にあるような気がします。

参考:全国おしぼり共同組合連合会


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