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稟議書の書き方ー5つの基本項目を網羅せよ【社内政治の教科書】

「あなたは、稟議書の書き方の基本を知っていますか」

多くの人は稟議書を面倒なもの、不要なものと思っているでしょう。確かに日本企業では稟議書を通すことに膨大に無駄な時間を使っているという見方もあります。とはいえ、社内に稟議書システムがあるかぎり大きなことをしたければ必ず稟議書を書いて社内を通さなければなりません。であれば、四の五の言う前に、まずは楽に確実に通すやり方を学ぶべきでしょう。

私は新規事業のプロジェクトマネジャーとして多くの企業で稟議書を書いてきました。多いときは2年連続100本の稟議書を通したこともあります。営業日で言えば2営業日に1本の計算です。稟議申請から承認までは1-2週間かかっていましたから、常時5本程度の仕掛かり稟議書を抱えている計算です。

このような中で身につけた稟議書の書き方の基本をまとめたいと思います。

1.稟議書の定義

稟議書とは、会社の費用支出がある場合や社外と契約書を締結する場合に、企業内で実行承認を行うための書類です。

「起案者」が作成し、規定された権限に基づき、起案者の上司や関係者が「決裁承認」します。一義的には稟議書は、書類・文書のことです。しかし、実務上は、稟議書とは書類を含めた企業内の承認業務フロー全体のことと理解した方がよいでしょう。

なお、厳密には決裁書・起案書とは異なります。ただし、企業の社内業務においては、実質的に「稟議書は、決裁書・起案書と同じもの」と考えて良いでしょう。

2.稟議書の書き方 5つの基本項目

稟議書で記載すべき項目はなんでしょうか。下記5つの項目が網羅されている必要があります。

①稟議書決裁案件の実行目的
②稟議書決裁案件にかかわる金額(支出または収入がある場合)
③稟議書で決裁承認してほしい契約内容(契約書締結が必要な場合)
④稟議書決裁案件が実行された場合の予想されるリターン
⑤稟議書決裁案件の実行に当たって予想されるリスク

私は過去100人以上の商品企画者の稟議書を見てきました。その経験から、稟議書・決裁書が却下される原因の多くは、初歩的な基本項目の記載モレである、と断言できます。

3.稟議書では、企業のリターンを定量的に示す

稟議書で却下される要因の一つが、承認が下りた後のリターンの記述レベルです。

コストがかかる場合費用にみあるリターンが、定量的であること、経済合理性に基づいていることが必須です。つまり、【稟議対象の費用 < 稟議実行した場合の経済合理的リターン】という式が成り立っている必要があります。

例えば、何かのシステムを購入するなら、そのシステム導入により「業務効率化などで投資額以上にコストが減る」「販売増などにより投資額以上に利益が増える」のどちらか、またはその足し算です。

これらの経済合理的計算を理性的には理解していても、「面倒だな。あの課長いちいち細かいところまで指摘しやがって」という感じで毛嫌いしている方も多いでしょう。でも考えて見てください。これは営利企業である限り当然のことをしているだけなのです。

まず営利企業は善悪にかかわらず必ず設けなければなりません。例えば、明らかに損失がでる投資決断を行ったら株主から訴えられても仕方ありません。そして、社内で適切な投資判断が行われているかをチェックするための仕組みが、稟議システムなのです。

営利企業である限り、経済合理性のない稟議判断をすることは、極論犯罪行為です。そのため、監督責任をもった承認者は細かい数字までチェックせざるを得なくなります。

4.稟議書では実行リスクを明記する

稟議書が却下される大きな要因に実行リスクがあります。承認された稟議の内容は社内の証拠、これも極論すると株主への約束です。このとき承認者が最も気にするのがリスク回避です。発生可能性のあるリスクとその対策を事前に明記します。

また、リスク回避の対策を示す代わりにリスクが小さいことを示すこともあります。「●●のリスクはあるが、発生したとしても××のため影響は軽微である」といった書き方です。

なお、承認をとりやすくするためリスクはあえて書かない方がよい、と考える方もいるでしょう。「承認者が気にしそうなリスクは、先手を打って提示しておくべき」が私の立場です。いくつもの稟議を確認する上位承認者は、リスクの有無、大小を重点的にチェックします。そして経験のある承認者は、起案者が隠したリスクを見逃しません。それよりは、起案者が言われる前に出すことで「私はリスクを十分考慮して申請しているので安心してください」と思ってもらうと承認がスムースです。

5.稟議書例文

具体的な、稟議書例文を見てみましょう。構成や文言の書き方などの注意点は、過去の実在の稟議書を、ほぼ再現しています。稟議書例文を通して、基本5項目の書き方を確認してください。

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【タイトル】●●サービスの設備増強に関する追加設備の購入について

■1.目的・概要
●●サービス設備稼働率が、XX%となっており、設備増強の必要がある。
ついては、「2」記載の設備購入について承認お願いします。
なお、現在A社に7月導入希望で、サービス契約の内諾をいただいており、本稟議の設備購入は早急に進める必要があります。

■2.今回の購入設備
1)●●に関する設備増強
製品A:一式
製品B:13式
※その他詳細については、添付1のF社見積ファイルを参照ください。
2)購入金額
XXX,XXX,XXX円
※2017年度予算残額、YYY,YYY,YYY円
詳細は、添付ファイル2の「2017年度予算管理票」を参照ください。
3)購入予定会社
I社
※2017年計画時のコンペにて、最低価格であり継続購入。
なお、年初計画時の検討資料については、添付3「2017年度購入設備シミュレーション結果」を参照ください。

■4.収支計画
今回の設備購入および売上を勘案した収支計画は添付4「2017年収支計画(2017年5月10日版)の通りです。
なお、2017年度収支計画および設備投資予算計画については、2017年4月2日付けの決済番号XXXX-XXの稟議を参照ください。

■5.その他補足事項
今回購入設備は、決裁番号XXXX-YYと同じ製品であり、すでに2017年2月より、J社にてサービス稼働中です。

■6.本稟議に関連する契約
本設備投資に当たり、添付4の「●●に関する保守サービス契約書」の締結が必要となります。
なお、本契約書は、決裁番号XXXX-YYでの設備購入時と同一であり、契約内容は、法務確認済みです。

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引用元

https://project-facilitator.com/how-to-write-approval-documents/


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