ポトフ
最近はずっと、窓を開けていることが多い。
北海道の家にはほとんどクーラーがついていないので、今年は扇風機を買わなければいけないと危惧していた。
6月に差し掛かる頃、電気量販店に行くたびにぼんやりと見て回っていたけれど、結局買うに至らなかった。
そして買うことなく、夏が終わろうとしている。
その広く開けた窓から網戸をすり抜けて、毎晩いい匂いが流れ込んでくる。
肉じゃがのような匂いだったり、焼き魚だったり、とうきびを茹でたような香りのこともある。
今夜はポトフだった。
もっと具体的に言えば、コンソメスープの匂いのようなものだったので、ポトフではないかもしれないけど。
ふわあっと鼻を掠めた瞬間、「ポトフだ!」と思ったのでポトフなのだ。
ポトフで思い出したことがある。
小学生の頃、クラスごとに1年の目標を決めて、それを表した旗を作ろうというものがあった。〇年〇組、という文字とクラス目標をいれた旗のデザイン案を全員で考えて教室の後ろに張り出し、投票で選ぶシステムだった。
何年生の頃か忘れたけど、クラス目標がポトフに決まった。
ソーセージにじゃがいもににんじんにキャベツ、とにかく色んな野菜がそのままゴロゴロ入っているポトフ。
クラスにも色んな人がいるけれど、ポトフのようにひとつの料理となって認め合い助け合おうね、という意味だったと思う。
結構、いい目標だったんじゃない?
聞いただけで温かさが伝わるし、
なんでポトフ?って聞きたくなるし。
その目標になるまでポトフのこと知りもしなかった。
もっと言うと、今何気なくググってポトフがフランスの料理だと知った。pot-au-feu.
どこからかポトフの写真を調達して一生懸命描いて、結構いいところまで残ったとこまで記憶がある。
選ばれたのか落ちたのかそれだけ思い出せなくて。
思い出せないってことは、落ちちゃったのかな。
通ってた小学校の古びた教室の後ろの壁に、ずらりと並ぶポトフの絵、その光景だけ鮮明に覚えている。
コンソメ系の料理ってあんまり作らないから、食べたくなってしまった。お盆を超えたらもうだいぶ涼しくなるし、暖かい料理も恋しくなってくるんだろうな。
どこの家の香りか分からないけれど、美味しそうな料理の匂いはそれだけで幸せな気分になる。
そして、すっかり忘れていたような記憶がふとよみがえったりするから面白い。