通学路

焦げた食パンと紅茶が低学年の私の朝ごはんだった。朝が弱いので、あまりたべれなかった。赤いランドセルをしょつてとぼとぼと、歩き出す。通学路にはいわゆるお屋敷街というものがあった。黒塗りの高そうな車に羽箒をかけている若い運転手、誰が乗るんだろう一度も会ったことがなかった。家はみな生垣に囲まれていて、中の様子もわからない。でも何人か同じ学校の生徒がいたので心強かった。鉄の門がある家は樹が生い茂って家が見えないきっと素敵な建物が建っているのだろう、と勝手に想像していた。バラが咲き乱れているお家もあった。大人になったらどんな家に住もうかな夢はどんどん膨らんでいった。友達も男女問わず出来た。まずまずの生活だった。ある日いつものように歩いていると違う所に大きな車が止まっていた。その屋根がポンと大きな音を立てた。お前だろう。少年のような男が急に怒って来た。私は怖くなり猛ダッシュで駆けていた。こんなのはじめてだった。またあ同じ道を帰るのかとうんざりしながら歩いていると、親方に頭をたたかれている今朝の少年を見た。よく庭の木をみるとタイサンボクという樹で、真ん中の芯が落ちるのだった。あれか、新築の工事をしている所はなるべく避けるようにした。都会は大変だ。