かざぐるま

子供の頃よく出かけるデパートがあった。商店街を抜けると細い路地がある、その場所に風車を売っている老人がいた。彼は車いすに乗っていた。赤やピンクのカラフルな風車とは対象的に地味な服装をしていた。目が合うとかすかにほほ笑んでくれる。おじいさんはどうして車いすに乗っているのか不思議だった。足元は布で隠されていた。デパートから帰る時もまだその場所にいた。母にねだって買って貰った。おじいさんはこれが良く出来ている、と言って赤い風車を渡してくれた。道すがらくるくるとよく回った。家の中でもよく遊んだ。大人になって偶然その場所に行ってみた。そこは普通の路地だった。かつて大空襲があった町だ。母は娘時代に東の空が何時までも赤く染まって怖かったと何度も聞かされた。彼もその犠牲者かもしれない。