レポート;プレヴォー前編

前回のレポートの最後でエミール・ゾラの話が出たので、今回はフランス関連作家ということでプレヴォーについて考察する。
ただ、プレヴォーについて現代日本でどれくらいの知名度があるかは少し自信がない。フランス文学専攻でもないと知らないレベルまで忘れ去られているかもしれない。しかし、後の文学に大きな影響を及ぼした重要な作品である。

アントワーヌ・フランソワ・プレヴォーことアヴェ・プレヴォーはアヴェ=僧侶の通り、元は聖職者だった。だが、飲む・打つ・買うの破戒僧だったと伝えられている。
同じく修道女だった女性と恋人になったとか、波乱万丈な人生を送っていたらしい。
その豊富な人生経験を元に書いた作品が代表作の『マノン・レスコー』である。
ちなみに、この作品を元にしたオペラもある。筆者はこの話の存在をオペラで知った。

プレヴォーのホロスコープは以下の通り
1691/4/1  12:00(出生時間不明)

『マノン・レスコー』あらすじ…物語の書き手はある時、とある青年と出会う。彼はデ・グリューと名乗り、自分のこれまでの人生について語る。ドイツの騎士階級の出身である自分(デ・グリュー)はマノン・レスコーという美少女と出会い、一目惚れして駆け落ちする。しばらくは幸せに暮らしていたが、実家から持ち出した金が底をつくと同時に人生の歯車が狂い出す。贅沢好きなマノンは彼を捨てて別の男に走り、どうしても彼女を忘れられないデ・グリューは彼女のために罪を重ねて転落していく。

この「書き手(作者自身)が語り手(物語の主人公)から実際に聞いた話ですよ」というスタイルの書き出しはこの後もよく見られるようになる。例えば同じくオペラ化して超有名になった『カルメン』(メリメ)や『椿姫』(デュマ・フィス)。特に『椿姫』はこの作品を大いに参考にしたらしい。地味で知名度が低いが、この作品は言わばオペラの発展にも貢献しているのである。

作品そのものは、というと、お金や性に奔放な女性によって破滅に追い込まれる男という典型的なファム・ファタール(運命の女)ものである。身近な例では谷崎潤一郎の『痴人の愛』のナオミだろう。前述した『カルメン』や『椿姫』もこれに当たる。多分、これの第1号がこの『マノン・レスコー』である。盛り上がりに欠けたり、ラストの展開に無理やり持っていく力技など、先駆者ゆえの不完全さはあちこちに見られるものの、やはり偉大な作品である。マノンがいなければナオミもいなかった、のかもしれないのである。

(蛇足だが、牡羊には先駆者が多い。前に考察したアンデルセンは創作童話と言文一致小説のパイオニアで、日本の言文一致運動の走りである二葉亭四迷もがっつり牡羊座である。常に自分のやりたいこと、新しいことを始めるのが好きという性質や、失敗してもめげない性質が関係しているのかもしれない)

後編に続く。

2020/04/12

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