文章は身体で読む-小林秀雄『読書について』
文章を読むことは身体の経験だと思う。
ある文章を「読める」かどうかは、自身の力量にかかっている。力量とは、技術の程度ではなく、保持している全て:頭、身体、記憶、経験を含む「私」総体のことだ。文章に対峙するときはいつも、全てが引っ張り出され、無防備に晒される。
読みのコントロールが難しいのも、読解が身体の経験であることに拠っている。「読める」とき、文の内容だけがインプットされるのではなく、読んだ時間、そのとき考えていたこと、感情、反応、誰かとの会話、読まなかった時間をひっくるめ