起き抜けとんとんまる

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記憶を纏う色-OSAJI 08 Ameagari〈雨あがり〉

OSAJIというブランドの「雨上がり」という色のリップバームを買った。 化粧品を購入するにあたっては、自分に似合っているかと気分が高揚するかという要素が最も重要なので、いつもリサーチを重ね、店舗で試して、一旦持ち帰り、と検討に時間をかけてから買うようにしている。 でも、この商品に関しては、人に勧められたあと間髪入れずにすぐ買った。似合っているかどうか、時間をかけて選んだかどうかよりもまず、そのときわたしに与えられたコンテクストを大切にしたいと思ったから。 とてもとても大切

    • 文章は身体で読む-小林秀雄『読書について』

      文章を読むことは身体の経験だと思う。 ある文章を「読める」かどうかは、自身の力量にかかっている。力量とは、技術の程度ではなく、保持している全て:頭、身体、記憶、経験を含む「私」総体のことだ。文章に対峙するときはいつも、全てが引っ張り出され、無防備に晒される。 読みのコントロールが難しいのも、読解が身体の経験であることに拠っている。「読める」とき、文の内容だけがインプットされるのではなく、読んだ時間、そのとき考えていたこと、感情、反応、誰かとの会話、読まなかった時間をひっくるめ

      • 心の端に置くもの 絲山秋子『沖で待つ』について

        仕事場で大好きな社員の方が辞めることをお聞きし(今月2人目)、感情が大きく揺れ動く1日だった。 帰り道に思い出したのは、自分が昔読んだ文章と、その感想文のこと。感情が揺れ動いた時に思い出せる文章があること、記憶に染み付くほど豊かな文章がこの世にあることは、本当に素敵なことだと思う。 1年前に書いた『沖で待つ』の感想文を引っ張り出して、改めて作品を読み直した。たくさん読んだ芥川賞受賞作品の中でも、特に印象に残っている大切な作品。 心の端に、文学に取り組む中で得た記憶がある

      記憶を纏う色-OSAJI 08 Ameagari〈雨あがり〉