見出し画像

廃墟

廃れた街の中心にそびえたつビル。

街のすべてを吸い込み吐き出して息をしていた面影はもうなく,その栄光は錆びた茶色い涙を流す看板だけが知る。


やがて刃が向けられた。


いとも簡単にその服は剥がされた。

ガラガラと音を立てて崩れていく。時折,鉄と鉄がこすれあって悲鳴を上げる。最後の抵抗も空しく,非情なほどに淡々と作業は進められていく。

ずたずたにされむき出しになった鉄の骨はこの時を待っていたかのようにただ静かにそれを受け入れていた。



読んでくださり,ありがとうございます。