夕暮れの奔走
重たい体を起こして,外の空気に触れようと運動着に着替える。
体への刺激を求めて,動き出せば楽になれると言い聞かせながら玄関へと足を向ける。
久しぶりに下駄箱の中から出した運動靴は,踵の方のゴムが劣化していて歩くたびにガリガリと音を立ててアスファルトと擦れ合う。
生ぬるい空気と湿り気が漂う夕暮れ。
夜が迫りつつある住宅街へと走り出す。
キャッチボールをする小学生や犬の散歩をする夫婦,家路へと向かうリュックの男性の横を走り抜ける。
何も考えることなく,ただただ走る。
呼吸が荒くなって,もうやめてしまいたいと思うまで走る。
じわじわと汗をかき,もう止まろうと速度を緩めるとついたのは小さい頃通っていた近所の大きめの公園。
街灯も人気もないそこは,忘れ去られた場所のようなさみしさがあった。
老朽化のためロープが張られ利用できなくなった木造の遊具。
人が通らなくなったその場所は,雑草で覆いつくされていた。
子どもの頃,輝いて見えた公園は,時代の流れとともにくすんで自然に覆いつくされていく。
さみしさと恐怖を胸に私は暗くなっていくその場所を後にした。
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