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お湯を求めて

北アルプス物語その4 〜Aの悲劇

Aは街から持参してきたカップ麺。

私は山小屋で購入したカップ麺。

私にはお湯がある、

しかし彼はどうにかお湯を

手に入れなければならない。

私はAの行動に注目した。

Aは小屋の売店にアテをつけた。

あそこならお湯あるよね?

こちらの同意を得て

安心しようとしているが、

私はうなずかない。

私にはお湯があり、

彼にはないからだ。

圧倒的な格差だ。

私はAのそばで成り行きを見届けた。

Aが小屋の売店の女性にすり寄る。

お湯ってもらえますかあ?

当然もらえるよね?

そんなスケベ心が見えた第一声。

急に女性の表情が曇る。

すぐ見抜かれたようだ。

持ち込みだということが。

怪しいヤツは見破られる。

人ごとなので、

私はなんともない。そよ風である。

女性は近くにいた上司を呼び、

お湯をあげてよいか確認する。

しばらくして、

上司が目の前に来た。

「ダメだよっ!」

結局、Aは小屋の上司に一喝される。

売店の女性なら、

最悪ナントカなるかも。

Aは、甘い気持ちを見事に粉砕される。

周りから見ると

私まで叱られたようだが、

そうではない。

Aと私は大きく異なる。

私には、お湯がある。

繰り返す。お湯がある。

追伸。

彼は叱られながらも

お湯をゲットすることができました。

安心してください。

小屋の方は注意をしただけです。

ルールを守ることが肝要です。

結果。小屋の方には頭があがりません。

Aのお湯、ありがとうございました。

きつく言って聞かせますんで。

その5につづく。


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