『ザ・ハント』 感想

 広大な森の中で目を覚ました12人の男女。そこがどこなのか、どうやってそこに来たのか、誰にもわからない。目の前には巨大な木箱があり、中には1匹のブタと多数の武器が収められている。すると突然、周囲に銃声が鳴り響く。何者かに命を狙われることがわかった彼らは、目の前の武器を手に取り、逃げ惑う。やがて彼らは、ネット上の噂に過ぎないと思われていた、セレブが娯楽目的で一般市民を狩る「マナーゲート」と呼ばれる“人間狩り計画”が実在することを知る。絶望的な状況の中、狩られる側の人間であるクリステルが思わぬ反撃に出たことで、事態は予想外の方向へと動き始める。そして次第にマナーゲートの全容が明らかになり……         (映画.com https://eiga.com/movie/92843/ より引用)

 歴史に残るような傑作であると声を大にして言えるわけではないが、自分の人生を振り返った時に思い出すことになる映画が誰にでもあると思う。『ザ・ハント』はそんな一本になった。

 まず、序盤、中盤、終盤と全く違うテイストになっているのが大変面白い。序盤ではクリスタルの存在感は全くなくほかのキャラクターがただ狩られるだけのスプラッタ作品となっているのだが、中盤でクリスタルが本領発揮した時には逆転してハント作品となる。そして、終盤まで顔が見えなかったボスの顔(=マナーゲートの背景)が分かった時にはガチンコ格闘映画+風刺映画に様変わりする。カメレオンのようにその表情を変えていく様子も見事な手際だと関心した。序盤のあまりに露悪的なゴア描写も中盤では鳴りを潜めていったのもこの為だろう。

 映画の内容が好みだったということもあるが、この映画が大好きになった理由は、主役・クリスタルを演じたベティ・ギルピンの存在感が段違い、圧倒的に良かったからだ。言葉通りに「格」が違った。リンダ・ハミルトン、シガニー・ウィーバーに並んでも遜色ない圧倒的強者の貫禄を見せつけていて、ただのジャンル映画以上の価値をこの映画に与えたと言っても言い過ぎではないだろう(むしろ足りないくらい)。クリスタルの造形がかなりミステリアスで掴みどころが無く底が見えないのだが、そのキャラ造形に説得力を持たせている。とにかく素晴らしかった。

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