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即興小説置き場

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即興小説置き場。未完もゴッチャ
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#即興小説

DASH 0円食堂

そのじゃがいもにしてみれば晴天の霹靂である。
母の手に繋がれてどのくらい立ったろうか、土の中は暖かく心地よかった。兄弟達はピクリとも動かなかったけれど、意志らしきものは感じられた。今日は雨が降るね、ああ、モグラが其処まで来てる、ミミズが這ってくすぐったい。時折兄弟が激しい日の光に晒されたのち、母の手を離れ声を失ってしまったが、すぐさま新しい母があり、兄弟を、姉妹を、そして自分をしっかりと土の中に守

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ちぇんじ、ざ、すたっぷ細胞

同性愛者を、社会的に認めなくなったのは、明治の初期、海外から西洋文化の波が押し寄せてからだという。
キリスト教的な一夫一婦制、永遠の愛を誓い、生涯相手を変えないという結婚のスタイルは、それまでの日本の性風俗を一変させた。妾、陰間、男色、夜這い。性というものに倫理を使わなかったと見える日本人にそれはどう映っただろう。かつての日本において、男色は嗜みであったし、夜這いも、寂しい未亡人を慰める一つの手段

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昼下がり先生

二年A組の担任で、現国を教えている日盛(ひさかり)という教師がいる。昼休みには職員室の窓から校庭を望みながら、こくりこくりと居眠りをするので生徒からはこっそりと、昼下がり先生、と呼ばれていた。頭皮を申し訳なさげに覆う髪を、暖かな昼下がりの風に靡かせて今日も昼下がり先生は居眠りをしている。細い棒のような体に似つかわしくない大きな頭が船を漕ぐたびに、度数の高い黒縁メガネが落ちそうで、落ちなくて、その様

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