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本能だったらしょうがないの?『消滅世界』 

小さい頃から「本能」という言葉に違和感があった。
「本能的に求める」「本能だから仕方なかった」「本能には逆らえない」・・・

欲望という、なまなましい、最も醜いものを「本能」ということばであらわすと不思議と清く尊いもののように思える。なんの穢れもない、まっさらなもののような・・・。

そもそも欲望とはどこから来たものなのだろうか。狩猟本能は私たちの中に本当にあるのか?狩猟なんてしなくてもその辺のコンビニで食糧は手に入る。お金がなくて食糧が欲しいと思っても、狩猟しようとはまずならないだろう。

本能的に人は人を求める?それは子孫を残すため?であれば、この本のように人工授精がデフォルトになった世界で人はセックスをしなくなるということなのだろうか。

分からない。私が美味しいものを食べたいと思うのも、新しいことを知りたいと望むのも、男性と恋に落ち愛し愛されたいと思うのも、本当に自分の中から湧き上がった感情なのか。

小さい頃から人はそのようなものだと言い聞かされていたからではないか?本能とは幻想的な概念なのか?

わからない、わからない。わからないまま流されるのが正常というものなのか?そこから目を背けることを発狂と呼ぶのか?苦しい。自分が得体の知れないものの中に溺れていくのを感じる。

「正気」を保つためにaikoをききながらこの本を読んだ。aikoはいい。わたしとあなたが中心の世界。一緒にいて幸せだから一緒にいる。一緒に居たいけど叶わない、だから辛い。

あぁ、これが「正常」。「発狂した正常」。よかった、私はまだ正常だ。

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