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「きのう何食べた?(主にジルベール)」と私

「きのう何食べた?」のSeason2は、時々私の心をガリガリと引っ掻く。
(注:脚本や世界観は丁寧に丁寧に、様々な立場の人に思いやりを持って書かれているので大好きである前提のもとに。)

Season1からジルベールが苦手だ。
私がかつて大嫌いであり、なりたいと心のどこかで思いながらも軽蔑していた「知り合いたち」の姿そのものだからだ。
そして認めたくはないが、ジルベール自身にかつての私を垣間見るのだ。

彼はシロさんの年齢(50歳)に対して、電話口で揶揄していたが
正直、傍から見たら言っている彼も若くはないのだ。
「小悪魔」と言われる時間は、花の咲くように儚い。
あれらの世界では、28歳~30歳を超えたら途端に魔法は消える。
これは私の身を以て学んだことであるのだが、本当に一瞬で消え去るのだ。

ジルベールは、ソファーに寝転んでわさビーフをかじりながら
パートナーが未来永劫、自分のことを変わらず好きでいてくれて
今の住まいにずっと住めると信じているのだろう。
一点の疑いもなく。

2011年の秋、笹塚のマンションで同居していた私は
ある日突然、告げられた。
「結婚するから、家を出てくれない?」

まさに青天の霹靂。

私は当時、毎週末は新宿で遊び惚け、
酒臭い息をまき散らしながら、朝方に大声で歌いながら家に帰っては
「気持ち悪いから、消化にいいものを作って」
と布団の中から宣っていた。
そして生活費として(家賃含む)5万を渋々渡すものの
その他一切の稼ぎは、自分に使い込んでいた。
自分で書き起こしながら「うわぁ」と自分にも呆れてきたが書き続けよう。

それもこれも、自分には今日と同じ明日が、
延々と続くと思っていたからだ。
熊本の両親は病気もせずずっと健在で、
愛犬の柴犬コロは元気に庭を走り回って
年上の同居人は今後も私と一緒にいるしかなく、
私との生活を手放すことなどあり得ないと「信じていた」

あれは2011年だったので、12年と干支がちょうど巡った今、どうだろう。

笹塚を出た数年後、実家を熊本地震が襲い、家屋は全壊した。
そしてそののちに、父はガンが発見され、発見された1週間後にあっけなく旅立ち、
母が一人残された。
柴犬コロは寝たきりになったものの17歳2か月の与えられた歳月を生き抜き、大好きな父のもとに旅立った。
当時の笹塚での同居人は、大分の司書をしている女性とお見合いで結婚をした。
世界はどうだっただろう。未知のウイルスに翻弄され、閉ざされた。
私自身も大病による手術と入院を経た。
他に変わったことといえば、10年来の友人がそれを機に「パートナー」になったことだろうか。
そうして今、歳はそれなりに重ねたが、幸せに過ごしている。

ジルベールよ、いつか気づくといい。
若さを振りかざさなくとも、豊かな時間はいつだって訪れるのだ。
必死に握りしめているものは、幻に過ぎない。

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