『株式会社リストラ』#ショートショートnote杯
その男に声を掛けられたのは、場末の小さなバーだった。仕事がつらく、ヤケ酒をしていた俺の横で、同じように痛飲していたのがそいつだった。
男は俺と似た境遇だと言い、やれ激務だとか、人を騙すようなことをして気分が悪くなるだとか、会社に対する愚痴を散々浴びせてきた。
どんな仕事かは聞かなかったが、文句を言いながらも会社にしがみつくその姿があまりにみっともなくて、俺は不思議と気が楽になった。
こいつよりは前向きに生きられるはずだ。明日、辞表を出してしまおう。きっと輝ける場所は他にもある。
それを告げると、男は羨ましげに笑った。
ターゲットが店を出たのを確認した男は、上司に電話を掛ける。
「終わりました。明日辞めるそうですよ」
「よくやった。クライアントも社内のリストラが進んで喜ぶだろう。さすがはウチのエースだな」
何か辞めさせるコツはあるのかと聞く上司に、男は「正直でいることです」と答えて、また深く酒をあおるのだった。
自己投資します……!なんて書くと嘘っぽいので、正直に言うと好きなだけアポロチョコを買います!!食べさせてください!!