宇宙のたね④

乗り物は目的地についたとアナウンスし、停車した。
メンバーは降りた。

石があちこちに落ちて居た。
見た所平野で山らしきものはなかった。
その景色は、火山の噴火口ちかくにごろごろ落ちている大小様々な岩、石、石ころ、じゃり。地面は赤っぽいところどころ深い緑がまざっていた。

みたこともない色の地面だ。

『これらは全部、隕石だ。』

『え?こんな大きい岩も?
なのに、衝突したら地面が陥没したりするんじゃない?
でも、こんな平野に岩みたいな隕石ってどういうことなんだろう。』

『そういう”当たり前の知識”はここでは、忘れることだ。
間違えではないが、なにが真実か、永遠か永遠じゃないものかを見極める訓練をやりなれていない者には難しく感じるかもしれない。

地球にもどったら、よーくそれを訓練しておくといいな。

なにが起きても、素直に。自分に集中するんだ。君はそういうのは慣れて居るだろう。』

『必要なことは、目の前のことに集中か』
『よろしい。』

リーダーが片手を上げ注意を促しながら
「では、各自石を回収するように。今必要だとおもう石だけを回収ボックスに収納すること。では集合の合図がでたらここに戻るように。」

『石あつめか。必要な石。』
適当に足元にあった石を、手のひらに乗せてコロコロと転がしてみる。いつも見るその辺の石ころの様にしか見えない。

『ぴんと来てないってことは必要じゃないんだよ。』
『そっか。』

いくつかひろいあげ、手のひらに乗せるが、ちっともピンとくるものはない。

『本当にあるのかな?』


『石を呼べ。』

『・・・?石を呼んだら返事するの?』

『今必要な石に呼びかける、”私はここですよ”って。言ってみるんだ。』

『私はここですよ。』

何も感じない。

『もっと見つかるって信じて。自分の感覚を信じきって、それ以外は考えるな。僕の声も聞こえないくらいに。』

私は呼びかけた。それは、呼びかけというより、念じたと言った方がいいかもしれない。

沈黙のなか揺れ動く意識の振れ幅を大きくしていく。
大きな振り幅は雄大なリズムを描き始めた。一往服が半日、24時間・・・振れ幅の軌道が惑星の起動を描くようなイメージ。

自分自身も星になったようだった。振れ幅が宇宙の流れにまで見えてきた。

暗く静かな宇宙に沢山の星たちの意識を感じ取る。

すっと意識に何か入り込んできた。

入り込んだ何かに意識が引っ張られた。左のずっと先のほう。直感でそう読み取った。
『そこだ。』

走って向かう。
『おい、走るな。寄せるんだ、対象物に自分を。そして、対象物と一体化して、このボディを引き寄せるイメージを持て。』

無心で言われるがままやってみる。

より対象物に意識をピントを合わせる様に集中する。

対象物の視点のポイントがわかった。
『次は、そこから自分のボディを探索するんだ。君の意識はここと、対象物の二つに別れて居る。それを一つに絞る様に念じろ。意識のポイントの両極を中心点に一気に寄せるんだ。』

それは、ヨギーニの体の使いかたのようだった。同時にからだの感覚と意識を体内と肉体の外からすり合わせるかの様な作業だった。

私は今石とこの体の両極にいる。中心はどこだ。私を私と、すべてを知覚しているその視点はどこだ。

『フラットになれ。この空間と一体になれ。』

マップの様な映像がみえた。彼がヒントにビジョンをみせてくれた。

同時に、記憶から
人と人の間にいる時の感覚を思い起こした。

中心。中心位置がメインの私。そこから末端と末端の私を繋ぎ引きあわせるイメージ・・・。

意識がまた切り替わり、渦を描く様に一つの点に流れ込む。

その瞬間、石は目の前にあった。

『これって、テレポーテーション?瞬間移動??』
『みたいなもんだ。初めての割にはいい出来だ。けど、君は石のもとに移動しただけの段階だ。
本来は、その場所にいながら石を回収する。』

『え。仙人じゃんそれ。仙人ってほんとうにいたのか・・・。』

『そりゃ、地球のヒトには骨や肉体に色々名残があるだろ。
存在している形には真実を模倣しているものがほどんどだ。
意識は肉体より骨と共振してる。
仙骨、蝶形骨…骨は宇宙からの信号をもろにキャッチして音を出して居る。一人一人その音は違う。

話が逸れたな。

君はとにかく歩いて戻るしかない。結構歩くぞ。』

『元の場所まで結構遠いの?そんなに移動できたんだ。』

『遠いな。距離数は今は気にしても仕方ない。しかし、君はちゃんと自分を信じた。それがこの結果につながった。よくやった。』

脳内に音声が入って来た。リーダーの声だ。

「集合時間だ」

『間に合うかな、石一個しか拾ってないけど。』
『ほんのわずかな時間だと君は感じてるんだろ。君の想像の10倍、いや、君の世界では時間をお金なんかに交換している共通意識がはたらいているが、それ以上の時間を君は変換したんだ。

一個でもみつけれらた。そして、片道だが、移動した。上出来だ。

君の世界で表現するなら”意識の書き換え”に等しい。

それとこの星、この世界では数字は共通言語みたいなもんだ。覚えておくといい。』

私は満足した。

パートナーの彼も私に微笑んでいるようだった。


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