宇宙のたね③

オリジナルとは?

ゴーストとは?

すべては理解の向こう側だ。

タネであったゴーストは、地球で肉体を得て魂に発芽した。記憶の始まりに既に光の様なはっきりした導きの存在はあった。

目の見えない赤ん坊の頃の記憶があるのは、肉体側の五感ではない感覚でみていた記憶なのだろう。

そう、一番古い記憶は視点が外部にあるのだ。
監視カメラの様に自分とその世界を記録している。

これまでの誰にも理解されない過去の事実一つ一つにやはり理由があったのだ。

遡れば、モノも言えない幼少期からの記憶は常に二つあった。
一つは、当時の年齢そのものの記憶で「あつかった」「こわかった」という五感と情緒的な繋がりのある記憶。

もう一つは、何かのスイッチが入り別の感覚が起動する感覚の記憶。

内面の世界が強く引き出された記憶。
世界と一体化した感覚と、強烈な印象が五感ではなくインスピレーションの様に鮮烈に脳内に入り込んで現実の側面をイメージでとらえた記憶。

わたしには虐待の記憶がある。
「痛い」「怖い」
の記憶と
相手の『ゆるしたい、ゆるせない』『受けいれたくない、受け入れて』という葛藤の印象が同時に記憶されている。

つまりこの記憶の特徴は、自分の感情と相手(大人)の葛藤の感情が同時に感じているというところ。

他の子供とはまた違った感覚を養っていった。わたしという個別の存在が途方もなく孤独を感じさせる。けれど強い孤立を自ら求めた。
一体になり消えてしまう感覚に入り込んだ時に強い孤独がないと意識さえ消されてしまうような恐怖があったからだ。

孤立を選択するような協調性のない人格を形作っていった。

分かり合えるのは、弟だけだった。

弟は口下手で、うまく気持ちを表現できない子だった。その通訳がわりに私が親に、こうして欲しいそうだから・・・こうしてあげたら落ち着くんだって。という具合に仲介する。

いつしか、その瞬間的に人の気持ちがわかる特性もあり、人と人の仲介役になることが増えていった。

やがて、人と人の間に立つことで、はじめて自分の外殻がわかるくらいだった。

様々な人に向き合うのはきらいじゃなかった。
人格の根底にひとたらしな要素もあったからだ。

自分を理解してくれるよりも、周りの人たち全体が調和して穏やかにいる空間がこの世界にあると知った時、満たされる感覚を初めて知った。

「みんな、穏やかに笑っていてほしい」
そうある世界が理想だった。

好ききらいははっきりしてはいたものの、内側で感じるインスピレーションの印象の鮮烈さ強烈さとは反対に、外側の肉体とリンクしている感覚は人より弱かったのかもしれない。

その感覚と経験は、
わたしはこの世界で何一つ所有することができない者なのかもしれない。という仮説を作った。

肉体さえ、この世界でレンタルされている、自分の持つ些細な能力もこの宇宙や世界から借りているようなもんだと。

持つ力に特別なモノなどなく、他にも同じちからを供えている者も多くいる。特別な力を得ようとするのではなく、あるもので簡素に質素にやるべきことをその時その瞬間に借りた力できちんと役割をこなす責任みたいなものを見出した。そしてその自らの思想を貫くことが生きる美徳のような気もしていた。

いつか私が死んだら「ありがとう、これらはきちんと使い果たしました。感謝とともにお返しいたします」と地球に言えたらいいし。

それが私の遺言だろう。

そのくらい自分の肉体が別のもの、性別も含めた性格的な特徴さえもそう捉えているのだ。

自分自身の所在はむしろ肉体の外側の皮膚のように薄い膜みたいなものが本体ではないか?と想うこともあった。

実際今もなんだかわからないが、なぜ感情があり、五感があり、肉体があるのかはっきりとわからない。真実が明かされても、この私という者には理解できなそうだ。その程度の者なのだ。

でも、それでも・・・
いつだって役割や役があって、それをきちんと努めなければいけない。そういう意識が働いていた。

起きる出来事をひたすら、打ち寄せてくる波のようなモノだとその流れに身を委ねる。感情に落とし込まずに、耐える為の意識の持ち方を独自に見つけた。そしてそのやり方に慣れていった。

弟は、何もかもを言葉にするのを諦め、打ち寄せてくる他人の感情の波にさらされて居るだけの私を隣でいつもみていた。

言いたいとこはないのか?

山ほどある。けれど、いつもなにかしら導かれる光を感じとり、その光だけを見る様にして思考せずにいた。

私はいつも事実の印象だけを絵画でもみているようだった。

考えたところで、今のわたしには正しい行いができるかなんて自信がなかった。

森にある木々が、嵐のなかただ自然の力に身を任せる様に。折れることがあれば、折れることを味わうのみ。腐り消えゆくなら、自然の循環の中で組み込まれ分解される・・・それまでのこと。それと同じこと。

破滅的ではない。
一度終わりになることで、物事や事象の底辺の底に触れるところまできたなら、それこそ”正しさ”というものが強い光になってこの身を照らし出す。

それを信じるしかなかった。

私は無力だから。

だからこそ、正直でありたい。感覚にさえ誠実でありたいのだ。それ以外に欲をいれたくなかった。信じる力が薄められていく気がした。

信じる為に。

私は周りと違う。普通じゃない。おかしい。でもいつか、本当の居場所にもどるときまであきらめてはいけない。こんな自分でもどこかへつづく道を歩んでいるのだろうから。

いつも、私の中に導く光と声があった。それは、魂の声なのか?ゴーストの声なのか?



わたしは肉体を置き去りにして今ここにいる。
魂の状態で、なかにゴーストのタネが根をはっている。
わたしは、ここへ魂を操縦してやってきた、ということ。

私のうち、魂の中にゴーストがいて・・・では、わたしは魂とも分離できるのかな?その状態の私とは?


『すべてがそろって君だ。そこは、パーツにはなれない。
そこまでしか認知できない構造の世界にいる。
それだけだ。
ほかの視点が使えたなら、また違う世界があるだけだろう。視点の数だけ境界線は存在する。

そこは僕にもわからない。

これからは、もっと広い、そしてもっとミクロな自分を知ることになるだろうよ。それは同時にマクロな自分を知る。

まあ、楽しめ。

魂の喜ぶことの為に君の能力はある。そして、その力は世界と宇宙に還元してやるんだ。全ては、循環している。

タネは君だって撒ける、そして君はその収穫を結果としてきちんと収穫する義務も持っている。

結果の良し悪しは人間社会の視点できめる程、魂からとおざかる。
人は操縦席をそうやって、自動操縦させる。

自動操縦は社会的的人格、つまり常識の範疇の擬似の自分さ。
そいつは人型だが意思はない。
君の世界に汎用されているAIもまた・・・

わかるか?』

『ええ。あなたの伝えたいことは、純粋な単音のように伝わってきて居る。』

『さあ。メンバーが集まってきた。総勢20名くらいはいる気配だ。』


メインゲートを出て外へ。外は何もない荒野が広がっていた。

サバンナを走る天井のないシンプルな形のジープの様な乗り物があった。
その一台には5人乗りのシートが備えてあった。
運転席らしきシートには、ハンドルがない。そのかわり、ダッシュボードのような棚にはいくつもの収納ボックスが内蔵されていた。

しかしその車らしき乗り物は一台。メンバーと思われる者たちが4人。

「すまない、おそくなった。」
「おまえのパートナーには説明はできたか?すぐに実践にうつる。」
「了解。」

『なにやるの?実践てまだ内容わからないけど。』
『ああ、そうだった。難しく考えなくていい。必要なことは同時進行で情報をリンクする。まず、僕の体の操作を君メインに切り替えるから、リーダーの指示どうり動けばいい。フォローは今みたいに共有感覚でする。』

「これでメンバーが全員揃った。では場所を移動する。各自乗車せよ」

皆その車のような乗り物に乗り込んだ。

その乗り物が移動している間振動がまったくなかった。

天井はないが風もない。

シールドのような者がフロントから座席全体に掛けられているようだった。


『20人近くいると思ったけど、随分人数減ったのかな?』
『いやちゃんと居る。僕ら以外の他三人の中には3、4人くらい僕らの様に体の中にいる。リーダーの中には10くらい。ざっと20名くらいここに居る。ゴーストの数だ。』
『そんなに?!一人で大家族みたい・・・』
『けど、ゴーストとの連結を鍛錬すれば、自在に次から次へとボディを変えることも可能だし、ボディなしでも存在していられる。
必要な時、必要なものは揃って居るもんさ。
バスや電車みたいな乗り物さ。

今日は君がこの中で新入りとして参加する。

他の三人の中にも君と同じような新入り君たちが一人づついる。

仲良くやれよ。』

リーダーはやけに細いスキンヘッドの見た目だった。声も肉体も中性的な見た目だった。細身にしっかりと最低限の筋肉がみてとれた。
メンバー全員も判別はつくが揃って中性的な顔と体型だった。個性というものはおおよそ無いようにも見える。

私のパートナーであり、今ボディを共有している彼の見た目は、少女っぽかった。少年と少女の間くらい。他の者と比べると小柄で女性的だった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?