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やめておけば、よかった09

09 悪いことをしたら、お仕置

「ごめんなさい、家まで来てもらって」

電話をして、奥さんに言われたことは直接話して欲しいというお願いだった。もちろん私には拒否権はないし、端からそのつもりだった。

彼女のお腹はすでに大きくなっていて、その存在から目を逸らすことが出来なかった。本来なら新しい命が芽生えた時に終わらせないといけないことだったのに、こんなになるまで逃げていたなんて。自分の愚かさに嫌気が刺す。

「結婚して、お腹に子供がいることも知っていたのに、私…すみませんでした」

床に手を着いて、生まれて初めて土下座をした。これで許される訳じゃないけど、ケジメはつけなければ。

でも奥さんは私を見ないで、ずっとお腹を摩っていた。無表情で、何を考えているのか分からない。もしかしたら刃物で刺されるかもしれないし、雑言罵倒でギタギタに打ちのめされるかもしれない。

「……今日、夫の会社から電話がありました。夫が誹謗中傷のビラを撒き散らしていたとか」

「え、何でそれを…?」

「監視カメラに映っていたそうです。面白がった社員が家の連絡先を調べて、ご丁寧に教えてくれました」

そんな暇なこと誰がしたのか。なんにせよ犯人がバレている以上、私達の関係がバレるのも時間の問題だった。恐らく今頃、職場では藤原との話題で持ち切りだろう。

「本当に馬鹿ですよね。気づいていたんですよ、浮気してるって。スマホは手放さないし、あんな頻繁に宿泊ばかりして…。ニヤニヤした顔が気持ち悪いったら仕方なかった」

けど私もあなたも、そんな男が好きで固執していたんだ。

「赤ちゃん出来たら変わるかなって思ったけど、やっぱり浮気する人は一生浮ついてるんですね」

「……すみません」

「いいの、私も悪かったんだから」

ちゃんと怒れば良かったのかな、とか…甘えれば良かったのかなとか。けど、もう手遅れねと、初めて私の顔を見て話し出した。

「知ってた?彼の浮気相手、あなただけじゃないのよ?他にあと二人はいる」

「え……?え!?」

思わず声を上げて驚いてしまった。あんなにマメに連絡が来ていたのに、本命の他にあと二人?馬鹿だ、正真正銘の馬鹿だ。五年も付き合っていて気づかなかった私も馬鹿だけど。

「正直、もう愛情も何も無いわ。むしろ今回のことで思い切り慰謝料請求して別れることができるわ」

タフというか、なんと言うか…思っていなかった展開に言葉を失った。ぬけぬけと浮気されるような人だから、どんな間抜けな人だろうと思っていたのに、今まで騙しきれていたって勘違いしていた自分が恥ずかしい。

「もちろんあなたからも慰謝料は頂くわ。私一人だったらいらないって言うんだけど、この子がね…。あなた達に負けたくない一心で作ったけど、そんな理由はこの子には関係ないからね」

ーーそうだよね、私はこれで藤原と縁が切れるけど、子供がいたらそうは言えない。この人は母になって育てていかないといけないんだ。

「いくらでも払います…」

「いいのよ、弁護士に頼んで相場で求めさせてもらうから。ゴメンなさいね」

「いえ、私達って男見る目がありませんでしたね」

「悪い男ほどモテるから不思議よね。他にもいい男がいるのに」

本当にその通りだ。あんな屑男には何人も彼女がいて、二宮みたいな良い男は一人ぼっち。世の中って本当に理不尽。

慰謝料のことは後日連絡すると話して帰った。思ったよりもあっさり終わって、少し呆気に取られた。けど気を抜いてる場合じゃない。次はレイくんの番だ。


その日の晩に保護シェルターの篠原さんと待ち合わせてレイくんのところへ向かった。

……To be continued

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