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やめておけば、よかった05

05 可哀想な男の子

想定外の事実に、私は目を逸らすことが出来なかった。もっと生意気で単純な理由だと思っていたから。私なんかと同じような、屑な理由だと思っていたのに。

「いつから…?」

「分からない。もうずっと前から」

何よ、それ…こんな綺麗な顔からは想像出来ないくらい重い事実。私の周りにはなかった問題だから、何も言えない。

「あんた、18なんでしょ?家を出ればいいじゃない!」

「前に出たことがあるけど、父さんに連れて帰られた。どこにいても、あの人からは逃げられない」

そう…だよな。こんなふうに出れるんだから逃げるよな、普通。それでも逃げる気力を削ぐくらい躾られたのかもしれない。彼に八つ当たりするのはお門違いだけど、湧き上がる怒りをぶつけられずに、つい声を上げてしまった。

「それに俺、コセキ?世間ではいないことになってるらしいから」

「…は?」

「産まれてすぐ母さんがいなくなって。死んだんだっけ?それから父さんと二人きりで過ごしてて、学校にも行ってない」

頭がクラクラする…。そんな子、実際にいるんだ…。

「だから俺みたいな人間らしいは、父さんがいなくなったら生きていけないんだって。だから逃げるなんて、したらいけないって」

そう、言い聞かせて生きてきたんだ。知らないことをいいことに、この子から未来や自由を奪って…!

「間違ってる!逃げられないことはない!」

この子がこんなに苦しい思いをしなければならないなんて、間違ってる。どうすればいいとかそういうのは分からないけど、何か方法があるはず。

「私が助けてあげるから、また来なさい!この時間なら、家から出れるの?」

「うん、女の人が来てるから、大丈夫」

自分の性欲を満たすために子供を追い出すなんて、本当にクズ親。私がそう思うんだから、よっぽどの悪態だ。

「私は佐藤、アンタの名前は?」

「俺はレイ。佐藤さん、ありがとう」

私はまだ何もしてない。けどこの子は、誰にも手を差し伸べて貰えないまま生きてきたんだろう。唯一無二の味方である親から邪険にされて…。

「あまり期待しないでよ?私だって初めてなんだから…こういうの」

この時の私は、事態の深刻さを知らなかった。まさかこのせいで人生がグチャグチャになるなんて、思いもしなかった。

……To be continued


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