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縦パス超突破と平行パス:2022 J2 第23節 横浜FC×アルビレックス新潟

勝てば圧倒的首位独走昇格ロケットに乗ってGO!!だったのだがそんなに上手くいくわけもなく敗戦&首位入れ替わり。ブローダーセン!アーッ!

とはいえ、この試合では体感的にチャレンジングな長距離縦パスとゴール前の平行パスが多かった印象なのでその辺りを確認してみる。

ビルドアップは低い位置でプレーする島田

カード累積出場停止の高(ヤン)に代わってスタメンに入ったのは島田でコンビは星。

基本的にヤンの役割は島田が担うが、島田はビルドアップにおいて、ヤンの「デフォルトポジションである相手の442ブロックの2の間に立ってボールを出し入れしながら相手守備をコントロールするポジショニング」ではなく、サリーダ(ボランチがセンターバックの位置まで下がるポジショニング)などで低い位置に落ちて、低い位置でボールを捌くということを基本的な行動としていた。

個人的には全体をコンパクトにするためにも、ヤンと同様にもう一つ高い位置でボールを捌いて前進した方が良いのでは?と思いながら観ていたが、島田の低いポジショニングはリードされて迎えたハーフタイムでも修正が入らなかったので低い位置の島田はチーム戦術の一部だったのだろう。

では、島田が低い位置でボールを捌くメリットや狙いはなんだったのかということになるが、おそらくズバットな縦パスだったのではないだろうかと想像しているし、インタビューからもその当たりが伺えるがなかなかに反省の弁が強い。

ということで自分の感覚が合っているのかどうか確認したくなったので、この試合のチャレンジングな縦パスと平行パスの数を数えてみた。

なお、何がチャレンジングで何がズバットなのかはワタクシの主観で決めておりますこと、予めご了承願います。

千葉和彦

さすがの配球能力を見せる千葉。

相手のプレスを縦にかわして持ち上がってからの大外タッチラインの至恩へピシッと通す千葉。運んで運んで1人でボールを縦に40m以上前進させるという、千葉マイケルらが標準装備している現代新潟サッカーを体現するプレイ。

前半25:20、圧巻の縦パスは右サイドから中央にスライドしてスタンバイしていた松田目掛けて蹴り込まれる。松田はそのままフリックして星がエリア内でフリーでボールを前を向いて保持するも守備2人に挟まれてターンエンド。星のタラレバシュートが決まっていたりしたらスーパープレイ認定できた一連のプレイ。

前半35:50、鈴木目掛けてフィードを送るが距離が足りずに相手に当たってしまうが落下地点に走り込んでいた至恩が悠々とボールを回収して波状攻撃に繋げる。こういうの大事。

前半38:25、相手の442ブロックの前2列を一気に突破した千葉高木ライン。プレッシャーを受けない状態で縦パスをレシーブした高木は悠々とターンしてゴール前まで前進する。

前半39:45、余裕の表情でサクッと35mのパスを至恩に通す千葉とレシーブしてドリドリ切り込む至恩。相手がボールに間に合わない位置にいるかいないかというのを千葉の経験値が教えてくれるんだろうか。あまりにも簡単にパスを通しすぎるので簡単なプレイに見えるがそんなことはないと思う。その後も似た場所から似た位置に至恩がドリブル開始しやすい位置やゴメスがボールを捌きやすい位置へボールを供給する。

前半42:50、低弾道高速ロブを鈴木孝司に蹴り込む千葉。最終的にボールは奪われてしまうが蹴り込む千葉も収める鈴木孝司も当たり前にプレイしすぎ。こういう形からずっと俺たちのターンという流れを決めたい。

後半47:30、ハーフウェイラインから斜めにドリブルしてブロックを歪ませておいてから中間ポジションにいる高木へポン。高木は余裕でターンして攻撃を組み立てる。

後半55:40、プレッシャーに耐えきれずクリアを兼ねてチャレンジしたロブ。結果としてターンエンドになるが、こういうのが通れば一気にカウンター成立となるので練度が上がることに期待している。最終的にはワチャワチャ囲んでマイボールにする。


舞行龍ジェームズ

マイケルによる前線へのロングフィードとそれを収める鈴木孝司やシマブク。

試合開始直後に通した鈴木孝司へのロングフィード。ピタッと収めた孝司の兄貴も素晴らしい。

前半10:30、フリーでボールを保持するマイケルから落ちて受ける鈴木への5レーンを利用したハーフスペースな縦パス。相手のブロックのグリッドを歪ませるという現代サッカーの基本が詰まったプレイ。さらにその後に裏抜けを狙う鈴木から松田に縦パス供給でチャンスメイク。

前半25:15、マイケルから鈴木への斜め楔。マイケルと孝司の兄貴は地上戦におけるセンターバック to センターフォワードという現代サッカーにおける中盤省略を体現している。

前半50:15、守備2人にパスコースを消されていそうだけど球足の速いパスでキッチリ高木に通すマイケル。高木は島田にレイオフして攻撃を組み立てる。

後半59:25、鈴木孝司目掛けてピンポイントでフィードを送るマイケルと余裕の表情で胸トラップする孝司の兄貴。当たり前の光景になるすぎてる感。

後半73:05、2点ビハインドで急いでいる状況なのでチャレンジが多くなってくるが結果に繋がらない。交代で入った谷口の抜け出しタイミングもマイケルのパスのコースもスピードも十分だったが守備の網に掛かってしまう。

後半87:15、中央にスタンバイするシマブクに長めの斜め楔を打ち込むマイケル。こういうセンターバック to フォワードの楔をガンガン打ち込んでゴール前を制圧してほしい。

堀米悠斗

ゴール正面への平行パスで機会創出するゴメス。

前半1:15にチャレンジした高木への縦パスだったが見事にインターセプトされてしまう。高木に通して電光石火のターンというイメージだっただろうか。

前半5:13のシーンでは後方でボールを動かして守備ラインを上げさせておいてから至恩をスペースに走らせる意図のロブを繰り出すが呼吸が合わず。

前半9:45、サイドで守備2人をドリブルでかわして逆サイドからダイアゴナルに走り込んでくる松田にダイアゴナルな鋭いパスを出すが松田の飛び込む場所に合わず。パスの出し手と受け手のタイミングを合わせたかったシーン。

後半57:40、最終ラインが崩れている隙を見逃さずにゴール前平行パスを素早く通すゴメス。平行パス時には松田がトップに入るという約束事があるのだろう。最終的には松田がダイレクトで落として至恩が得意の巻き気味ファーへのシュートで全新潟がガッツポーズを決めて喜びを爆発させる2秒前だったがフローダーセン。アッー!

後半61:40、「クロスではない、平行パスだ!」という言葉が聞こえてきそうなゴール期待値爆アゲプレイが飛び出すものの決めきれず。守備ラインを下げ切らせることでスペースを生み出してグラウンダーの高速平行パスで鈴木孝司に叩き込んでもらう作戦だったがボールは虚しく枠の外。これは決めておきたかったが良い形が作れたので今後の再現性に期待している。

後半80:20、守備ブロックの中間ポジションにいる秋山に目掛けて斜めにパスを出すが秋山が内側に入りすぎていてパスをレシーブできずにターンエンド。試合出場頻度の差が関係していたいりするんだろうか。

後半82:45、ゴール前で谷口にズバット縦パスを通して谷口もゴリドリってから右足海キャノンするが枠の外。圧倒的に密集している中にボールを蹴り込む堀米も収めてシュートまで持っていく谷口も迫力十分。

藤原奏哉

とにかくボールを前に運ぶ意識が強い藤原。

前半3:15、パスを受けて即出しせずにボールキープで守備を引きつけておいてから松田への縦パスを狙うが松田が守備に負けて受けきれず。30mというパスの質は良かったがレシーバーの質が足りなかったシーン。

前半6:30、ボールを受けた藤原はドリブルを開始し、それをトリガーにして松田が縦タッチライン際に裏抜けするアクションをする。結果として守備が松田に引っ張られることで生まれるドリブル線路。そのドリブル線路40mを一気にゴールに向かって持ち上がる藤原。パスではないが縦の超突破という意味ではチャレンジングなプレイ。

前半26:15、裏に走り抜ける鈴木孝司目掛けてピンポイントなフィードを供給する藤原。鈴木は守備とのフィジカルバトルに負けてしまうがフィードの質は非常に高かった。

後半47:10、ハーフスペース高い位置で繰り広げられるサイドバック藤原とボランチ星のコンビネーション。最後はワンツーで藤原がシュートを狙うが打ちきれず。

後半51:25、斜め楔っぽい平行パスを打ち込む藤原。いかにしてゴール正面でボールを持つかというのはこの試合のテーマだったように思う。

島田譲

強気の長距離縦パスを蹴り続ける島田。

前半4:55、サリーダで最終ラインの位置まで落ちてからボールを受けてドリブルで前進しながら前線から落ちて受けにくる鈴木へ楔を打ち込んで守備4人の意識をボールに集中させる。

前半13:05、ハーフウェイラインにおいてフリーでボールを持つと前線に構える鈴木に長距離フィードをピンポイントで供給。相手2人に挟まれて流石に身動き取れない鈴木だが競り合いを頑張って藤原と松田が前線に詰めてセカンドボールを回収するという新潟ストーミングなプレイ。

前半17:50、至恩からボールを受けた島田はダイレクトに定規で線を引いたような鋭い縦パスを蹴り込むが星の待機位置と噛み合わず。これが噛み合っていたらメチャクチャカッコいいズバット縦パスチャンスメイクだったはず。

前半31:50、島田がこの試合を通して何度も狙っていた鋭い縦パスと電光石火の高木ターンが噛み合ったプレイ。縦パスで一気にボールを前に運んで高木のターンで守備をかわして前を向く。フィニッシュ目的の高木から至恩へのパスは守備に引っかかってしまったが一連の流れはまさに電光石火だった。こういうプレイでのゴールをたくさん見たい。

後半51:40、ペナ内に入った藤原目がけて守備を十分に引き寄せてから斜め楔を打ち込む島田。島田は守備を引き寄せてからパスというのが非常に上手い。藤原はそのままターンして巻き気味のシュートをファーに放つが枠の外。惜しい!

後半54:15、落ちてきた鈴木目がけて最後方からズバットするがインターセプトされてしまう。チャレンジパスの失敗例でショートカウンター受けて、あわや失点というシーン。

後半59:30、左サイド高い位置に走り込む至恩に合わせる形でサイドチェンジなフィードを蹴り込む島田。結果には繋がらなかったが島田にサムズアップで応える至恩。

星雄次

高木を活かすためのパスが目立つ星。

前半2:15、相手のクリアボールを拾ってからドリブルで前進して高木に楔を当ててワンツーで受け取ってシュートでフィニッシュというプレイ。実質相手3人を置き去りにしたナイスプレイ。

前半41:35、ゴール前における平行パスを通したシーン。新潟のストロングは地上戦なのでクロスを上げるよりも平行パスでゴール正面にボールを置いた方が決定機が増えるのではないだろうか。この後相手守備はワチャワチャ慌てていたので決め切っておきたかったところ。

秋山裕紀

至恩に収まるロングフィードはさすがの秋山。

後半78:20、島田に代わって入った秋山のプレイスタイルを体現するロングフィードは至恩がドリブルスタートしやすい位置にピッタリ落下する。地上高速パスの島田と空中飛行パスの秋山といった感じ。

松田詠太郎

クロスを上げるのではなく平行パスでフィニッシュを狙う松田。

前半16:05、ドリドリ持ち上がって逆サイドに見つけたゴメスにインターセプトを恐れぬ横パスを蹴り込む松田。心臓に毛が生えてそうな松田のパスを受けて戸惑ってフリーなのに硬直するゴメス。

前半16:45、ドリドリと中に切り込んでくる松田が選択したのはドリブルと逆方向に守備の背後からボールを受けようとする鈴木へのアウトサイドパス。ボールの出先がバレバレで上手くいかない。

後半62:30、「アーリークロスはもう古い!」と言わんばかりにエリア手前ゴール正面に高速平行パスを素晴らしいコントロールで通す松田。守備4人の隙間をボールが転がっていった。高木が収めきれずにクリアされてしまったが、クロスよりも高速平行パスと高木ターンで剥がした方がゴール決まりそうな雰囲気。

後半83:25、ペナルティエリア内でボールを受けた松田が選択した行動は、再後方からダッシュしてくる千葉に対する平行パス。グラウンダーだと守備に引っかかるので微妙に浮かせたボールだったため千葉が点で合わせることができずに空振り。全新潟が頭を抱えたシーンだったがその後も諦めずにボールを拾って全員で波状攻撃を続けたのは偉い。


本間至恩

自らを囮にしてゴール前の守備を薄くしてから中央に平行パスを出す至恩。

前半11:50、めちゃくちゃフリーな状態でボールをドリドリ運んで鈴木孝司にポストマンして波状攻撃に繋げる。このシーンは相手の守備が緩すぎたので決め切っておきたかった感じもあり。

後半50:40、左に守備を寄せておいてから空いた中央へ悠々とパスを平行パスを通す至恩。平行パスはインターセプトされやすいしされたら大ピンチなので乱用は控えないといけないが、インターセプトされない平行パスであればその価値は非常に高い。ゴール前で平行パスが通れば決定機創出となる。

後半61:05、サイドでボールを持ってジリジリとペナ角に近づいて平行パスで高木にボールを預ける至恩。高木はさらにそこから素早くゴール正面の鈴木孝司へ平行パスを繰り出してチャンスを狙う。

後半62:50、ハーススペースを猛スピードで駆け上がってくるゴメスに合わせる形で並行パス。ゴメスのトラップが大きくなってシュート枠内完遂できなかったが期待感の持てる良い形。

後半81:55、ドリブルで内側に切り込んで守備の視線を自分に向けさせておいてからフリーの高木にパスを出して攻撃を組み立てる至恩。

高木善朗

高木はラストパスを受ける立場だが、自らもゴールシーンを演出しようとする。

後半55:45、奪ったボールを無理矢理サイドチェンジでチャンスメイクに繋げようとしたプレイ。ボールが飛んだ先には松田不在。

鈴木孝司

偽9番として落ちてきた時にはハブの役割となる鈴木。

前半10:30、ハーフスペースを落ちることでマイケルからボールを受け、守備を引きつけてから松田の裏抜け超特急に合わせてスペースに蹴り出すプレイ。相手の最後の一歩が早くて松田がボール保持できず。

前半14:40、ハーフウェイラインまで落ちて受けて入れ替わりで前線スペースに走り抜ける星に縦パス供給。落ちた時にはストライカーではなくハブに徹する孝司の兄貴。

以上、事実確認でした。

縦パスをズバッと通してゴール前の平行パスでガンガンゴールを決める俺たちの新潟という試合がたくさん見たいですね。



「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。