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攻守両用可変ビルドアップ:2021 J2 第30節 東京ヴェルディ×アルビレックス新潟

結果としては3-1で勝利したものの内容は手放しで喜ぶわけにはいかない試合というのが率直な感想でして、でもまぁ勝ったから気にしない!高木凄い!

そんなこんなで今の新潟のストロングポイントとウィークポイントがこれでもかというくらい鮮明に出てしまった試合だったので、その辺りを記録しておく。

チャレンジし続けた攻撃と疎かにしない守備

この日の新潟はこれ。とにかくリスク上等でガンガン強気の選択肢を選び続けてその多くを通した。リスク上等と言えどもリスク管理はキチンとしており、その象徴が早川史哉の右サイドバック起用。順を追って説明する。

まずはこの試合を象徴となる仕事をした三戸。

この試合のスタメンの特徴は、年代別代表から帰ってきて久しぶりに先発した三戸舜介背番号37の身長158cm体重50kg今年の目標は運転免許取得の19歳という右利きアタッカーは右サイドに配置される。そして前回のヴェルディ戦同様に右利きなのに左足でミドルレンジからゴールを突き刺す越後のセルジュ・ニャブリである。ゴールシーン以外でも左足を振り抜くシーンが目撃される。

この三戸舜介、試合後の監督インタビューでも明確にコメントが出た通り、攻撃力は素晴らしいが守備には課題が多く残っている選手である。

新潟の右サイドバックは藤原奏哉が常に君臨しており、藤原のストロングは攻撃参加と強靭な体幹を自信の源泉とした対人守備である。

守備に課題のある選手と同じサイドでユニットを組んで三戸と藤原二人で元気に攻撃したら後ろスカスカになってしまうのは誰の目にも明らかだが、今まではロメロという機動力戦車が全力プレスバックで時間を稼いでいる間に藤原が自陣に帰還というようなことをやっていた。ロメロがプレスバックしなくても藤原は全力で戻っていた。藤原マジ神。お願いだから個人昇格しないで。

守備に課題のある三戸だが、機動力と決定力は実績もあり期待できるのでこの試合ではそのストロングを存分に発揮してもらいましょうということで右サイドからキュキュッ!っと左足でカットインしてズドン!と幻の左を打つわけです。いやこれ左サイドの至恩、右サイドの三戸というカットイン大国新潟が爆誕。

しかしながら、開幕から出ずっぱりの藤原にロメロと二人分倒れるまで走れと言うのは流石に無理で、さてどうしましょうかという状況で新潟が誇る走るスーパーコンピューター早川史哉の登場である。この試合のキーマン2号。

史哉、スタメンを見たときには昨シーズン至恩をオフ・ザ・ボールでサポートするサポート魔神の役割を担うのかと思ったら普通に守備職人としてのタスクを愚直に遂行する。そしてこの作戦が大当たりとなる。

この日の新潟は三戸に気持ちよく攻めてもらって最終ラインはガッチリ固めるというのが基本戦術になるのだが、この最終ラインの組み方がいわゆる可変と呼ばれるもので新潟らしいモダンなサッカーを披露していた。

新潟の基本フォーメーションは4-2-3-1だが、攻め上がるのは三戸だけではなく、トップ下の高木やヤン島田の両ボランチ、左サイドバックのゴメスも元気いっぱい攻め上がることになるのだが、そうすると当然ゴメスの跡地に生み落とされる広大なスペース。そこを他の誰かで埋めなくてはいけない必然。

新潟のセンターバックは千葉マイケルで屈強だからどんな攻撃が来ても跳ね返せるっしょ!と言いたいところだが、ヴェルディの攻撃は幅一杯を使った両ウィング突撃×ゼロトップの裏抜けである。とてもじゃないが千葉マイケルの2人でどうこうできるものではない。ということで戦術史哉である。

いつもは両サイドバックが上がって攻撃に全振りする新潟だが、この日はゴメス突撃時=みんな元気に攻撃時において、千葉とマイケルが左スペースにスライドして史哉もそれに連動してスライドすることで3バックを形成する。

こうすることで、最終ラインとボランチでボールを回している間はヴェルディの4-4-2ブロックを無効化できるという算段だ。実際にヴェルディは前半飲水タイムまでの時間、届かないプレスをひたすら掛け続けて体力を消耗させられる事になる。

実際には相手のポジティブ・トランジション(守→攻への切り替え)が発生したらゴメスかヤンが最終ラインに即時に入って4バック化してウィング対応という形を徹底していた。場合によっては三戸も全力で戻るという「走れ!新潟スタイル」を体現していたりもした。

こうすれば中央突破とウィング突破を両方防げるだろうという新潟の守備戦術である。かつ、この形にすることでビルドアップ時に千葉が必然的に中央に配置されることになるので、ヴェルディの4-4-2ブロックの2トップの間を狙ったボランチへのパスをチャレンジとしてズバズバ通すことができるようになる。

上の絵はキーパーからボランチの話だけど、別にセンターバックでも同じ話になる。ボランチにパスが入るようになれば4-4-2ブロックの2トップは中央を締めざるを得ない。ボランチにボールが入って即ターンとかされたら攻撃を一気に加速させることになるし、この日の新潟はビルドアップもアタッキングサードも「中央経由サイド行き」をひたすら繰り返していた。

結果としてシン・アタッキングサード左式からのこぼれ球→越後のニャブリの左足である。本当に全てが噛み合ったしこの一連のプレイは選手の自信にも繋がっているはず。

いやこれは千葉がマジ凄い。自伝インタビューの高校生&オランダパートマジウケる。なんでこんなに壮絶なサッカー人生なんだよ。

いや、まぁ、なんというか、試合を通してヴェルディに裏抜けされてもオフサイド!縦突破されてもポスト神!みたいな狙ったプレイなのかどうなのか判断しきれないケースが多々ある最終ラインだったけど、結果としてヴェルディに与えたゴールはPKの1点のみだったから守備は狙い通りだったんだと思う。

後半飲水明け以降は常時流れで新潟5バックみたいな状況でタコ殴りにされたにも関わらず何故か新潟にゴールが加算されて勝っていたので結果オーライ。前半は新潟がセカンドボールを多く回収していたのに後半はヴェルディが全部拾って終わって見ればボール支配率42%という新潟らしくないスタッツ。

新潟の守備を上回るボール回しをするチームには勝てないというのがここ最近の新潟だったけど、この日は泥臭く決してエレガントではなかったけど規制&奪取がハマらないんならとりあえず全員戻って人の壁作って絶対阻止するべし!の逆パワープレイ。

あとから振り返れば、これはこれで勝つための方法として十分機能していたんじゃないかと思うけど、ダムが決壊したら一気に崩れそうだし決壊する可能性は決して低くない方法だけに、この辺りアルベルト監督は手当して欲しいなぁとは常々思案。

シーズンも終盤、残り全勝すると勝ち点90になるので怒涛の13連勝で昇格決めておきましょう!


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。