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ダニーロ・ゴメス:2023 J1 第6節 アルビレックス新潟×名古屋グランパスエイト

退場がなければ間違いなく圧倒的なサッカーで圧倒的に勝っていたと全新潟が疑わない試合。前半はそのくらい質の高いサッカーをやっていた俺たちの新潟だったけど結果は結果。辛い。

そんな試合で良い部分も悪い部分もたくさん見せてくれたダニーロ・ゴメスについて記録しておこうと思う。

テキスト読むよりも動画を見た方がダニーロの良さと悪さがわかりやすいので公式ツイートを置いておく。

まずはゴールに絡むストロングから。

行けると判断したらゴリゴリ進んでドカーッ!と蹴飛ばすダニーロ。このドリブルはゴリゴリだけど、サイドアタックを仕掛ける時には独特なヌルヌルしたドリブルでタイミングをズラして守備を抜き去ったりする。

そしてアカンやつ。ダニーロはこういうのが本当に多いしこれからも俺たちは何度も頭を抱えることになると思うやつ。

これは4種(小学生年代)でもメチャクチャ怒られるやつ。

ダニーロとしてはボールにタッチしながら躱し切れるというクソ度胸だったと思うし本人もイケると思ったんだろうなという感じ。が、結果はボールロストしてゴールを割られるということに。

これ以外にも相手陣内で不用意にボールロストしてカウンター被弾というプレイが印象的ではあるが、そんな優等生ではないがクラスの人気者という感じなダニーロのプレイを振り返ってみることにする。

奪われそうで奪われないドリブルとセオリー破壊

主戦場は右サイドハーフか右ウィング。非常にわかりやすいアタッカーのダニーロ。そんなアタッカーなので特徴は明確。左利きでカットインするので右サイド以外はできないと思う。前半29:40のカットインとかダニーロのドリブルの特徴がよく出ているプレイ。

前半0:50のシーン。ハーフスペースを埋めて名古屋の攻撃を牽制していたら結果的にボールを奪うことができてカウンターを発動させる俺たちの新潟。ダニーロが引っ掛けて鈴木孝司の兄貴に渡して孝司がカウンターで俺のポジション中央ゴール前に運ぶぞオラー!と爆走ドリブルで駆け上がるスペースと同じスペースにもの凄い勢いで走ってゴール前で鈴木孝司を追い越してゴール前まで突き抜けてしまうダニーロ。なんで孝司とスペース被りに行くんだよ!

カウンター発動時において圧倒的な走力でゴール前に走り込むダニーロ。勢いは大事。

カウンター時にボールを後ろから追いかけるんなら中央を走るというのはセオリー(シュートしてキーパーに弾かれたこぼれ球を押し込むことができる)ではあるが、追い越すんなら話は別だ。追い越すんならワイドに開かないとゴール前に守備が密集して決まるものも決まらなくなってしまう。

とはいえ、結果的にダニーロがセンターバック2人を中央に引き寄せて孝司はフリーの太田にスルーパスとなったのでこの形を狙っていたダニーロなのかもしれない。でも、やっぱりワイドに開いておけばセンターバックの中央が割れるから孝司の兄貴がシュート打てたよなとか考えてしまうし、ダニーロが右に裏抜けしてとかいう世界があったのかもしれない。

実際どんな判断だったのかはダニーロしか知らないところだが、ダニーロのセオリー破壊のやり方が今まで見たことないタイプなので試合開始直後に結構な衝撃を受けた。これからも見たことのないセオリー破壊の世界を見せてほしい。

前半15:40の自陣深くで見せたシャペウでの危機回避とか前半24:05のヒールでトラップして前進とかも訳がわからない。ノリノリの時は手が付けられないということになりそうなポテンシャルを持っている俺たちのダニーロ。この試合で見せたやらかしポテンシャルも無限大なのだが、そこも含めて魅力的なプレイを見せてくれる。

スペースメイクという個人戦術

新潟式ビルドアップでボールが中央を転がっている時には大外に張ってボールを待つダニーロ。

中央に守備が集まれば大外は薄くなるのでその状態でダニーロにボールを渡せば一気に突撃できるし、その形になるようにビルドアップで仕込む俺たちの新潟。将棋のようなロジカルさが新潟にはある。

同じように左サイドでボールを動かして左サイドに守備を寄せればサイドチェンジ一発でダニーロに大きなスペースを与えた状態でボールを預けることができるようになるし、それが決定機創出のカウンターに繋がったりもする。

中央や逆サイドにボールと人を集めることで生まれる右サイドのスペース。ここへサイドチャンジや中央経由の繋ぎで素早くボールを供給するとダニーロで突撃できる。

前半4:30のシーン。ビルドアップで左サイドに守備を密集させてから秋山&マイケル経由ダニーロ行きというプレイとなるが、ダニーロが受けた位置がハーフウェイライン付近とあまり高くなかったのでダニーロは内側にボールを運んで守備を動かしてからマイケルにボールを戻す。

こうすると守備が再度中央に集まるのでダニーロは大外に移動して無限ループということができるようになる。

守備を動かしてスペースメイクというのが新潟のサッカーだし、それを個人戦術として遂行するダニーロ。わざと低い位置でボールを受けてサイドバックやウィングバックを釣り出すポジショニングが本当に上手い。

内側にボールを運ぶことでサイドバックやウィングバックを釣り出すダニーロ。ダニーロに守備が集まることで涼太郎や孝司が動けるスペースを作り出す。

仮にダニーロがブレイクした後の世界、各チームはダニーロ対策として「付いていくな!」という選択肢を取ることが多くなるような気がするが、それならそれでダニーロは単騎でボールを前に運ぶんじゃないだろうかと思う。そういったスキルも持ち合わせているので今後が非常に楽しみなダニーロである。キーワードを置くとしたら偽ウィングといったところだろうか。

前半5:20のシーンでは最後方からボールが飛んでくる前の予備動作として中央にポジショニングし、ボールが出た瞬間に大外へ向かって走り出すというプレイを見せる。その動きにピタリと合うロブを供給するマイケルが素晴らしい。このシーンではトラップが苦しくなったもののヌルヌルとボールをキープして戻してやり直すの俺たちの無限ループ新潟。

前半12:20には前線中央に陣取って相手ウィングバックの配置をバグらせてからのマイケルフィードを大外で受けましょう!というプレイも見せてくれた。新井のポジショニングの良さとの相乗効果は抜群だった。

中央にポジショニングするダニーロと大外に張る新井。ダニーロ番の守備が新井にアタックせざるを得ない状況を作り出してからフリーのダニーロにボールを預ける。

前半19:50にはボールを受けてウィングバックを釣り出して後ろに生まれたスペースに新井が内→外に走り込む→新井に釣られて中央守備がスペースを空ける→空いたスペースにダニーロが切り込んでゴール前中央でチャンスメイクという圧巻のプレイを見せてくれた。

相手ウィングバックを無理矢理中央に引っ張り出して守備配置を破壊するダニーロ。ダニーロを放置するとゴール前中央でボールを持たれてしまうので受け渡しが事前に整理されていないと付き合うしかなくなる。

サイドバックやウィングバックを釣り出して背後にスペースを作るというダニーロの個人戦術に注目してほしい。

ゴール前に押し込んだら中央からゴールを狙う

ダニーロ本人はゲットゴールしたい性分なんだろうと思わずにいられないのだが、チームがゴール前まで押し込んだら中央に陣取って積極的にシュートを狙う。ボールが転がってきたら迷いなく蹴り込むメンタルを持っているはずで、ゴールへの執念は鈴木孝司と並ぶかそれ以上ではなかろうか。

この試合の先制点に繋がったプレイや前半10:20の守備と競り合う突撃シーン、前半11:50の最終ラインに生まれた中央ギャップにドリブルで突撃するシーン、前半終了間際のシュートシーンなどは非常に印象的だったし、近日中にこういう場面からゴールが生まれるはず。

鈴木孝司が落ちることで生まれる最終ラインのギャップに勢い良く飛び込むダニーロ。ゴールへの執念はストライカー気質を感じる。

前半13:00のシーンとかゴール前中央でメチャクチャボール触ってて、それ孝司のタスクじゃありませんかね?というくらいゴール前中央でボールに絡もうとするのだが、このプレイに傾倒したがためにサイド守備が薄くなって超絶カウンター被弾なんかに繋がらないことを祈る。

などなど、派手なドリブルや爆走や思い切りの良いシュートだけではなく、個人戦術によるスペースメイクというストロングも併せ持つダニーロ・ゴメス。

あり得ないレベルのやらかしはこれからも目撃してしまうことになるだろうが、それも含めて魅力的なフットボーラーではないでしょうか。

愛されダニーロを楽しみましょう。

試合雑感

阿部と新井スタメンでゴメスが復帰、秋山への期待と信頼、そしてみんな大好きダニーロ・ゴメス。なかなか新鮮なスタメンでダニーロのカップ戦を観れていないのでダニーロのプレイは非常に楽しみにしていた。

名古屋は3421の守備的なチームと聞いているし長谷川健太監督なのでそんなに新しいことは特に無いだろうなと思ったが、523守備でプレスとブロック(ペンタゴン)を併用する形を繰り出してくる。練度も割と高かった。名古屋はいつもこれなんだろうか。ポゼッション対策としての523守備が当たり前の世界になってしまった。

結果は残念だったものの、どんな状況でも新潟のスタイルを貫き通すという強い意志を感じたので感情的には大満足。尖った意志を貫き通すパンクロックのような俺たちの新潟。中央レーン攻撃が印象的だった。

名古屋ペンタゴンを崩す新潟式セオリーとして、秋山島田のどちらか一方がペンタの中央に位置取りして、もう一方が縦関係を作って低い位置でボールを扱うというのが基本の仕組み。そして突然ペンタの真ん中に落ちてくる涼太郎なんかで圧倒する。結果としてポゼッション70%近くを叩き出してしまう俺たちの新潟。

名古屋はどうにもならなくて途中514みたいな形に変えてプレス&ブロックという変則守備を繰り出してきたが、これは高い位置で奪って刺し切るという意志表示だろう。フォーメーションやポゼッションの数字は守備的かもしれないがやってることは結構アグレッシブな名古屋。

個人レベルでは阿部のキックもビッグセーブを絶賛するしかないし、涼太郎が繰り出した決定機創出のパスはイニエスタか!と叫んでしまった。ゴール前新潟式死守ブロックも非常に固くて名古屋からしたらワケワカランという状況だったはず。

そしてダニーロ。これは素晴らしいブラジル人を掘り当てた。

攻撃でも守備でもヌルっとした脚の動きで相手を翻弄するし、チームの勝利への執念とワン•フォー•オールのスタイルが非常に良く出ていた。これはずっと見ていたくなる選手。

太田の左サイドも良いパフォーマンスでゴメスとのレーン交換は非常にスムーズだった。

マイケルのレッドは妥当。故意ではないにせよ選手生命を脅かす危険なプレイ。一発レッドかと思ったらイエローでラッキーとか思ったあとのVARからのOFRで普通にレッド判定。

その後は10人になって出口の孝司がいないとこうなるのかという俺たちの新潟。とにかく中央前にボールを付けられない。偽9番の動きとそれを繋ぐ伊藤のコンビネーションがどれだけ効果的だったのかというのを見せつけられる。

それでもピッチ上にいる選手であれこれ工夫してゴール前中央までボールを運ぼうとしている光景が誇らしい俺たちの新潟。シマブクのリトル孝司みたいな偽9番スタイルも今後が楽しみになる。三戸はちゃんと決めろ。

誇りを捨てずにスタイルを貫き通した満足感のある敗戦。

「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。