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鈴木孝司の偽9番:2023 J1 第12節 アルビレックス新潟×柏レイソル

鈴木孝司の帰還でどれだけボールを前に進めることができるようになるのかと思っていたら予想以上にスムーズに運べてしまって孝司が最後までピッチに立っていたという活躍ぶり。

そんな孝司のプレイを記録しておこうと思う。

鈴木孝司のフォーメーション上の配置はワントップだが、いわゆるゼロトップとか偽9番と呼ばれる動きが孝司の役割となるし、この動きは新潟のサッカーに欠かせないもでもある。

谷口は元々のスタイルが偽9番だしシマブクは従来のサイドアタッカーから今シーズン華麗に偽9番ロールをこなせるようになっていたりするので谷口とシマブクには孝司が必要ないと言われるくらいのパフォーマンスを出してほしい。

まずは孝司のボールタッチ分布を確認してみよう。

落ちて受けて捌くが基本だがフィニッシャーとしても存在感を示す鈴木孝司。

前半8:40のシーン、相手2列目守備の位置まで落ちてボールを受ける孝司。

相手最終ラインに捕まらない場所にポジショニングする三戸は藤原からボールを受けると近くにいる孝司にダイレクトで叩いてラン。この三戸にワンツーで返す孝司。

この一連のプレイ、パスがズレたものの星がクリアミスを拾って三戸がテクニカルなステップから決まってもおかしくないシュートを放つ。なんで決まらないの!

サイドハーフの三戸や小見よりも低い位置でボールに関与して決定機を作る。

前半18:00のシーン、阿部のコントロールロブを大外タッチライン側で受けた藤原は強引にドリブルで縦突破しようとするも守備に引っ掛かってルーズボールとなってしまう。しかしながら、落ちていた孝司がテクニカルなボールキープで体を張って新潟のターンを継続させる。

孝司が落ちていることにより、いわゆる「良い距離感」を保つことができていた。ルーズボールを拾って新潟のターンを継続させたナイスプレイ。

藤原が潰されてもルーズボールを最速で拾える位置を確保する。

続く前半21:50のシーンはザ・偽9番とそれに連動した攻撃陣という形の代表例。

千葉から大外のゴメスにボールが入ると同時に落ちて受けにくる孝司。ゴメスはダイレクトで孝司に叩いて自身はランして大外高い位置からの崩しを狙う。

結果としては孝司がファウルで即時潰されてしまったが、落ちた孝司と入れ替わるように涼太郎、小見、三戸の3人が最終ライン裏抜けを狙う。大外を走るゴメスと合わせれば柏のハイライン裏を一気に畳み掛けることができたのではないだろうか。孝司がファウルで潰されなかったその後を見てみたかった。

ファウルで潰されてしまったが孝司の前方ゴール前にアタッカー3人+ゴメスという状況を作り出した。ゴール前で5対4の状況は決定機となる。

前半25:45のシーン、落ちることでビルドアップの出口となる孝司。

千葉からパスを受ける涼太郎に合わせて落ちてくる孝司。涼太郎にターンさせるとマズいということで猛烈にプレスにくる柏ボランチ。そのボランチが空けたスペースに留まって涼太郎からフリックでボールを受ける孝司。

この状況では孝司がハーフウェイライン上でボールを持っていて、前方には小見、ゴメス、涼太郎、三戸の4人が柏最終ラインを突破するためにポジショニングしている。落ちる孝司と最前線に上がるアタッカー4人という攻撃的で躍動感溢れる美しい動き。

涼太郎へのアタックでボランチが空けたスペースを使いボールを受ける。

前半29:25のシーン、小見がレオシルバタックルでボールを奪ってカウンターを発動させる。涼太郎がボールを拾った瞬間に孝司が最終ラインから離れる動きで落ちてボールを受ける。

結果として相手センターバックを釣り出すことはできなかったが、ここでセンターバックが食いついてくれば最終ラインにギャップが生まれてチャンスメイクすることができる。

このシーンでは最終的に外から上がってくる藤原に預けて孝司が猛ダッシュで中央に走り込んで小見がキーパーの前にフリックして孝司が裏抜けでゴールというイメージだったのだが小見がイメージを共有できずにチャンスロスト。小見に対してメチャクチャキレまくる孝司。

落ちて受ける孝司にセンターバックが喰いついてくれればギャップを突くことができる。

前半41:10のシーン、千葉からの超絶縦パスを落ちることで守備を外して受ける孝司。レイオフで涼太郎に落として涼太郎はライン裏に走り込む小見にダイレクトで縦に通す。新潟式超速縦攻撃である。

千葉の縦パスと孝司の偽9番を起点としたダイレクトプレーの連続でシュートまで辿り着くという迫力ある場面だった。

新潟式超速縦攻撃。孝司が落ちて受けてボランチとセンターバックを釣り出してパスコースと飛び込むスペースを作り出す。

後半58:40のシーン、ゴメスからセンターサークル付近に落ちてくる孝司に斜めのパスが入る。その孝司の両脇を衛星のようにポジショニングするコミト。孝司がワンタッチ(実際には相手に当たったルーズボールだけど)で守備を外して小見にボールを渡して三戸と一緒に一気にゴール前正面まで運ぶ。

この時のコミトは最終ライン上で2対2という状況を作り出せていたので確実に決められるようになりたい。このプレイが決まっていればゴメスが自陣で蹴ってから相手が何もできないまま5秒でフィニッシュという素晴らしいゴールになっていたはず。孝司とコミトが上手く守備を外した素晴らしいプレイ。コミトの背後で涼太郎と孝司が詰めていたのもゴールへのこだわりを感じた。

低い位置に楔が入ることで飛び出すセンターバック。孝司がフリックすることでコミトによる2対2の状況を作ることに成功。最後までちゃんと決めよう。

後半59:50のシーン、千葉からのボールを落ちて受ける孝司と孝司を追い越す形で走るヤン、ヤンに合わせる形でフリックする孝司。

ヤンのスルーパスは通らなかったが、このパス通っていれば大決定機というプレイ。サイドハーフやボランチよりも低い位置でボールを捌いて攻撃の形を作る偽9番そのものの動きとなる。後半78:55ではボランチの位置まで落ちて同様にフリックしていたりする。

千葉からの縦パスを受けることでヤンへのマークが外れるのでフリックが可能となる。裏抜け決定機の創出。

このように、偽9番としてボールを運ぶ役割をこなしつつワントップとしてのゴール奪取も積極的に狙うのが鈴木孝司という新潟のフットボーラーである。

前半のオフサイドで流れたシーン、ゴール認定してくれたら良かったのに。後半50:50の藤原アーリークロスに完璧なタイミングで抜け出したがキーパーに阻まれたシーン、あれも鮮やかヘッドが決まっておかしくないプレイだった。

怪我せず末長く新潟で活躍してほしい鈴木孝司を愛さずにはいられないのです。

試合雑感

スタメンに孝司が復帰したということでゴール前までの運びがどのくらいスムーズになるのか、フィニッシュの質は上がるのかにまずは注目。孝司以上に決定力のあるストライカーがいないのが新潟の現状。

三戸は前節途中出場でどこか吹っ切れたというかやってやるぜ!やらなきゃ終わるぜ!みたいな雰囲気が出ていたので今日もその勢いで調子を取り戻して結果も出してほしい。小見は前節ギラギラしまくっていたものの組織守備が相変わらず難しそう。タイマン勝負ならなんか押し切れるんだけど組織守備をやらせると穴を空けて決壊させてしまう訳だが、守備の難を気にさせないくらいの攻撃力を見せてくれるだろうか。

VAR機材が届かないという珍事だが3試合連続でジャッジの話題に引っ張られたくはない。雨天とは違った文句なしの快勝といきたい。

で、前半終了時の感想としては攻撃的でワクワクする新潟がスワンに帰ってきた!の一言に尽きる。

孝司は流石の偽9番という働きでコミトとのコンビネーションも抜群。孝司が落ちるとサイドが上がるが基本的な仕組み。孝司が落ちてCBが釣れれば最終ラインのギャップに誰かが飛び込む。

前半はコミトによるサイドからの飛び込みやドリブルアタックが良く目立った。とにかく涼太郎の存在感が薄くなるほどの孝司コミトの3人。1点くらいは取っておきたい前半だった。

柏の守備は442ブロックで特徴はマテウスサヴィオによるヤンを背中でマンマーク。これが効いていてヤンにボールが入らないのでどうしてもサイド起点で攻めがちとなる俺たちの新潟。

そして柏の攻撃は縦パス一本で入る細谷へのボール。細谷がボールを収めると緊急アラートが鳴り響く。新潟の442ブロックがそんなに堅くないのでハーフスペースやど真ん中のレーンを縦一本で通されているのは要修正。

後半、孝司がどこまで持つかという問題があるものの、孝司の偽9番こと落ちる動きに連動したコミトとボランチと涼太郎の動きという戦術的な面白さがある。

今日のこのサッカーで絶対に勝ちたいし勝てればコミト大ブレイクのきっかけになるはず。

などと思ったが結果は引き分け。お互いのスタイルとストロングをぶつけ合ったナイスゲームではあった。終盤はこれ以上ない流れでしたが決めきれず。引き分けで許しておいてやるという感じ。勝てたけどなぁ。ちょっともったいない。

孝司が予想外に最後までベンチに下がらずピッチに残った訳だが谷口が調子を取り戻してくれないと孝司が壊れたら立ち行かなくなる。俺が補強できるのであれば偽9番の質が高いフォワードが欲しくなるけど谷口とシマブクの覚醒に期待している。新潟のサッカーは現有戦力で戦いたい。

J1の舞台、下位チームでも質というかアスリート能力がJ2とは明らかに違う。J1とJ2の違いとは何かと言われればアスリート能力になるだろう。そういった質的優位に対して新潟が数的優位や位置的優位で破壊するというサッカーを見ることができるのが新潟サポーターの特権だったりする。

今日の新潟は結果が出なかっただけでスタイルもストロングも非常に良い試合だった。次節そろそろ爆発してほしい。相手マリノスだけどな。

結果こそ出なかったけど内容は非常に満足な試合だった。

「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。