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フジワラ・ロール:2021 J2 第19節 ブラウブリッツ秋田×アルビレックス新潟

※アニメーションを綺麗に作り直して差し替えました。(2021/11/20)

相性が悪いと誰もが前評判を立てた秋田戦。終わってみれば危なげなく勝利した俺たちの新潟。

この試合で特筆すべきは新潟の右サイドバックを主戦場とする藤原奏哉25歳の背番号25である。身長169cmの小柄なフットボーラーのプレーは今までも輝きを放っていたが、秋田戦の特に前半には最新型サイドバックという役割をJ2という舞台で見せてくれた。

最新型サイドバックとは

戦術のトレンドが目まぐるしく変わる2021年6月時点において、最新型のサイドバックと呼ばれるのはマンチェスター・シティのジョアン・カンセロになるだろう。マルチロール(複数の役割)を最も体現しているプレイヤーと言っていい。カンセロ・ロールという言葉で表現されるほどである。カンセロについてはinamoさんの記事が充実している。この先を読む前にまずはご一読頂きたい。

現代サッカーにおいてサイドバックは縦移動による攻守を両立するだけではなく、横まで含めたピッチ全体にポジショニングすることが求められるポジションとなりつつある。特に、新潟のスタイルであるポゼッションサッカーではその特徴がより強くなる。

新潟のサイドバックは今までも早川史哉や田上が偽SB(ピッチ大外ではなく内側にポジショニングして攻撃時の優位性を確保する動き)や前線でのポジショニング(なんでDFが流れの中で最前線にいるのさ?)などで他チームのサイドバックとは異なるプレーをしていた。

そして今回の藤原である。

藤原のそれはクオリティが非常に高く、漫画アオアシの世界から飛び出してきたようなプレイを見せてくれた。コレはマジでコンプリートな選手になれるやつ。

ということで、具体的に藤原のプレイを追っていこう。

スタートポジションは4-2-3-1の右サイドバックで、守備時は基本的にいつでもどんな時でもスタートポジションに全力で戻る。ということで今回は攻撃に関してのみ説明していく。

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まずは前半2:30。最後方からビルドアップする際に大外に張り出してボールを受けると迷いなく秋田の守備2人にドリブルで中央突撃する藤原。この動きで秋田2人の前線守備を引きつけてから後方にスタンバイしている史哉にボールを逃して、ボールへ秋田の前線守備が噛み付いたら小島まで戻してロングフィード一閃。その隙にハーフスペースを駆け上がるオフ・ザ・ボールで秋田の守備を引きつけて味方のパスコースを確保する。秋田の4-4-2ブロックに対してハーフスペースのポジショニングをすると秋田は藤原をマークしにくいことこの上ない。

続いては前半4:00。新潟が左サイドでビルドアップを試みている際に藤原が取るポジションは前線中央トップ下のあたり。新潟が左サイドでボールを持つことにより秋田の守備も左に寄せられ、結果生まれた右サイド中央寄り、一番ゴール正面に対峙できるベストポジションに陣取る。結果として千葉から絶妙なロブパスが通り決定機を演出する。実際には藤原以外の前線が左に連動して流れることで生まれたスペースになるが、右サイドバックがトップ下のポジションでフリーになれるという状況は予見できない。

前半5:40から。引いてブロックする秋田の状況において攻撃時基本ポジションのハーフスペースから最前線中央にポジショニングする藤原。サイドのボール保持はリトル至恩こと三戸に任せて鈴木、高木、星、藤原4人で秋田の4バックを殴りにかかる。最後は三戸から高にボールをサイドで受け渡して驚異の前線6人アタック。オマエラ攻撃好きすぎだろ!

前半7:10のシーン。なんやかんやで秋田ゴール前ファーサイドにハイボールが飛んできて、新潟が誇るリアルストライカー鈴木孝司がヘッドで中央に折り返すと「どうしてそこに藤原奏哉」。ボールは秋田ディフェンスにクリアされたが、鈴木の折り返したボールの軌道次第では藤原に決定機が転がり込んできてもおかしくない状況だった。

前半7:55のビルドアップ。センターバックの史哉が最終ライン中央でボールを持って前方にパスを出すとピッチの中央でボールを受けるのは藤原。最初は左サイドでボールを保持した時だけ藤原が中央というポジショニングかと思ったんだけど、ボールが中央にあっても藤原が中央にポジショニングしている。もう正直よくわからない。なお、この時にボランチの高と島田は左サイド中央よりハーフスペースのあたりで縦関係を作っている。ボランチ2人が藤原のポジショニングに押し出されている形。藤原は中央でボールを受けたらサイドに捌いて即前方にダッシュすることで敵陣に押し込む形を作る。これぞフジワラ・ロール。

一通り眺めてみて、藤原が中央に移動することでボランチ含め全体を左に寄せて右サイドを大きく空けると同時に右サイドハーフを大外に張らせておいて一気にサイドチェンジというのが基本だろうか。至恩が左サイドにいればさらに左に寄せることができる。敵陣アタッキングサードまで押し込んだら藤原は基本的に最前線中央にポジショニング。能動的に中央にスライドしない場合には右サイドハーフスペース高い位置にポジショニングしてブロック2人をピン留め or 藤原にホイホイというのが仕組みだと思う。

などなど、試合開始10分と経たずにサイドバック、偽サイドバック、ボランチ、トップ下、フィニッシャーと、これだけのマルチロールぶりを発揮して新潟サポをザワつかせてくれた背番号25の藤原奏哉。前半16:40の史哉からのロングフィードを中央裏抜け一発で収めるとかどんなワントップだよ。そのうちインザーギ目掛けてピルロがボールぶつけりゃゴール入るだろみたいなゴールを量産し始めたりしたら笑うしかない。

そんなこんなで楽しいフジワラ・ロールですが、これは基本的に442ブロック対策の戦術だと予想していて、サイドチェンジというセオリーを超進化させた「新潟式442ブロック崩し」なんじゃないかと思っている。442以外の相手に対してフジワラ・ロールがどうなるのか早く観てみたいという気持ちが抑えられないですね。

ということで、442ブロック対策以外でもフジワラ・ロールが威力を発揮するのかどうかはわからないけど、新潟に対してはどれだけ屈強な442ブロックで挑んでも破壊されるんじゃないかな?とか新潟を止めるには前線3枚守備しか方法ないんじゃね?などと思わずにいられないわけです。

新潟の試合を見る他サポのみなさん、これからは至恩だけじゃなくフジワラ・ロールも要チェックな新潟ですよ。






「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。