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記録せずにはいられない:2022 J2 第8節 ロアッソ熊本×アルビレックス新潟

素晴らしき試合、試合経過を記録せずにはいられない。

アウェイ新潟のボールでキックオフ。島田→ハセタク→松田と右サイド二等辺三角形でダイレクトパスで繋ぐもボールはタッチラインの外。テキトー表情で誤魔化す松田。

右サイドで熊本ワチャワチャ新潟ワチャワチャと15m四方で繰り広げられるトランジション。サイドでワチャワチャしがちな両チームが対戦するとこうなるよな的なワチャワチャぶり。

2分、熊本のクロスを弾き返すセンターバック田上の蹴り上げたボールを熊本に拾われるが至恩がうまく取り返して前進するも熊本のファウル判定でゲームが止まる。アドバンテージ欲しかった。

直後、ゴメス起点でレイオフを絡めたショートパスを連続で繰り出して前進する新潟。最後は松田がドリブルでモリってペナルティエリアに侵入するも熊本のブロックに阻まれる。

3分、ゲットしたコーナーキックにキッカーとして立つのは島田と伊藤の2人。コーナーキックで2人が立つという光景はなかなか見れないイリュージョン。

島田が手を上げて蹴る気マンマンな雰囲気を出したが残念そこは伊藤でした!と島田が助走フェイクして伊藤が中央に蹴り込んでヤンの叩きつけるヘッドは叩きつける位置が手前すぎて不発弾。なぜかピッチに転がっているハセタク。

サイドでワチャワチャを俺たちのスタイル!というプレイを続けるが唐突にサイドチェンジを発動させた4分、「まだまだ慌てる時間じゃない」と言い聞かせて442ブロックで中央を固めるがライン上げすぎてボールがハセタクの頭上を飛び越えてダイアゴナルな熊本のシュートが新潟ネットに突き刺さる。アーッ!

試合始まったばかりだけど本気出そうぜ!とショートパスで縦に揺さぶって前進を試みる新潟だが熊本の左サイドでボールを回収されてワチャワチャされる。熊本のサッカーは左サイドワチャワチャからのサイドチェンジが基本のようなので以降対戦するチームは参考にしてほしい。それでも新潟は松田を信じてワチャワチャに付き合う。

ちなみにサイドのワチャワチャ&サイドチェンジはオーバーロード&アイソレーションというサッカー用語があるので覚えておきましょう。

直訳すると「過負荷」であり、攻撃の際にボール周辺(特にサイドの2レーン)に人数を集めて局所的数的優位を作り出す戦術のこと。

https://www.footballista.jp/special/73145

右サイド松田のワチャワチャが光る新潟は幾度となくなんとなく松田がボールを持って深い位置まで運んでチャンスメイクっぽい形になるが、っぽいで終わるもどかしさ。それでも松田を諦めない。

なんというかフォーメーションは双方異なるがやっていることはトライアングル&ショートパス&レイオフ&引き込んだら裏ポンロブという同じスタイル。攻守が入れ替わってもやってることが変わらないので味変が欲しくなった9分に熊本アーリークロスでピンチになるも僅かに枠の外。そんな味変は求めていない。

絶対に高い位置で奪ってやるという熊本の前3枚プレス配置を剥がして前進する新潟。最終的には絶対に諦めない松田へロブを供給しようとするが弾道はピッチの外へ。不満を顔に出さない松田が偉い。

熊本のフォーメーションレス343の基本は前3人がプレス要員で後ろ3人がブロック要員、中盤の4人でフリーダムというかなんらかの規則性を持って動いてオーバーロード&アイソレーション&サイドチェンジという戦術。

もうちょっと細かく言うと、後ろ3枚+ボランチ1枚 or 2枚で数的優位を作って中央に集めてからサイドに叩いてオーバーロード発生。再後方中央から中盤中央を経由してのサイドアイソレーションというのが熊本の戦術。サイドでオーバーロードを発生させる前捌きとしての再後方中央起点。

守備ではサイドにボールが入ったら猛犬ダッシュで全力で奪いにくる熊本。ちょっとじっくり定期的に観てみたい。

J2で新潟以上にボールを回せるチームはないだろうから、熊本は夏を乗り切ってターンオーバーもうまくいけば最終的な順位は上位にいるんじゃないだろうか。とりあえず新潟は熊本のプレスをかわし切るとまでは言わないけどチャレンジが通っているので問題なさそう。

新潟ゴールキックはエデルソン小島の低弾道キックが冴えるが熊本に回収されてしまい以下ループという感じでリズムを掴みきれない前半。熊本にカウンターを受けても全力で戻って対応する俺たちの新潟が偉い。

そんな展開を全無視する形で前半21分に谷口ビックリシュートが炸裂。熊本からしたらあまりの空気の読めなさに超脱力感。

ゲームがどんな形に動いてもお互いやることを変えない新潟と熊本。バチバチな戦術バトルが気持ちいいが同じ戦術ならばクオリティの高い方が勝つというのがサッカーだというのは俺の持論。

いやこれマジでシーズン通してターンオーバーうまく行けば熊本は良い結果が出ると思う。

エデルソン小島のキックは菅田が全部止めるという新潟の誤算なんだが小島はここ数試合で心臓に毛が生えたかのように堂々とした振る舞いが出来ていて頼もしい。昨シーズンまで課題計上されていたクロスへの処理も確実に解決している。阿部も頑張れ。

新潟はコーナーキックで色々手の込んだことをしてきてセットプレイへの拘りを強く感じる。伊藤高木島田と蹴れるメンバーを取り揃えているので今後も色々手の込んだことをしてほしい。相手がゾーン守備だったらどんなことやってくるのかわからないけど、そこら辺はコーナーキック解説が必要以上に細かい梅山解説員に解説してもらいたい。

前半31分に熊本味変ショートコーナーからあわやなシュートを打たれてヒヤリとするが枠の外。いやマジで熊本抜け目ない。

相変わらず前3枚のプレスで外にボールを追い込んでから奪ってアイソレーションを発生させようとする熊本。その罠に掛かるまいとサイドに叩いて即エデルソン小島にボールを戻す新潟。

お互いの思惑を読み取って駆け引きが行われるという良い戦術バトル。至恩がボールを持つとスポットライトが当たって至恩のソロパートスタートという味変も堪らない。これは良い試合。

前半終盤に入ってくると足が止まりがちになる熊本。このスタイルだったら無理もないし新潟のハイペースなロンドに付き合っていたらこうなるみたいな。これを予想して熊本のオーバーロードに付き合っていたとしたらメチャクチャ偉い俺たちの新潟。千葉戦は一体なんだったんや。

前半39分に伊藤がゴール前でモリモリドリブルを披露して松田がフィニッシュを狙ってコーナーキックゲット。新潟の手の込んだ仕掛けから田上が頭で押し込もうとするが熊本の決死のブロックに阻まれて、こぼれ球を千葉がキャノンするも宇宙開発。その後もゴール前正面でフリーの伊藤が宇宙開発する。どうして!

ハーフタイムを挟んで新潟は伊藤に変えて高木投入。ボールが引き出せなくて落ち気味だった序盤が悪かったというところだろうか。

後半体力チャージして開始直後からハードプレスしてオーバーロード発動させる熊本とボールを作業的に捌く新潟。スタイルを貫く熊本のサッカーが熱い。49分の至恩のタックルはPKだったような気がするけど審判がPKじゃないって言っているからありがたく判定を受け入れる。アルベルト監督もこのプレイには何も言わないはず。

熊本のプレスをかわし続ける俺たちの新潟。試合序盤は慌てたけど試合をする中でアジャストする俺たちの新潟はズバズバとハーフスペースあたりに縦パスを通す。惚れる。

新潟が中央でボールを保持するのでサイドでオーバーロード発動ができない熊本。中央でボールを奪ってもどうしたら良いかわからずとりあえず蹴飛ばしとけみたいな対応が増えてくる。疲労もあっただろうか。

55分以降は残り時間30分以上を残して熊本の足が止まって後半ずっと新潟のペースで殴り続けて最終的に撃ったシュートは24本。いくらなんでも殴りすぎだ。うち9本は谷口のシュートで色々おかしいスタッツ。

途中で何度も訪れる決定機を決めきれずに点を仰ぐ俺たちの新潟。決定力という無形の何かを畏怖せずにいられない。

決定機まで持っていくまでの至恩のパフォーマンスが飛び抜けすぎててヤバい。マジで至宝。高木がボールを受けた後のパスの散らし方も秀逸だった。

68分には今日の戦術と言っても過言ではない松田を下げて三戸投入。ニャブリみたいなカットインドリブルとシュートが炸裂するだろうかなどと思ったらファーストタッチでカットインドリブルからの左足シュート。新潟の至宝その2。

70分を過ぎると熊本に何もさせずに試合を運ぶ俺たちの新潟。ただただゴールだけが奪えない。嫌な予感がし始める時間帯。74分にハセタクを下げて藤原投入。松橋監督の中では藤原よりもハセタクの序列が上なんだろうか。

藤原が入ってさらにボールが回るようになる新潟。ひたすら走らされる熊本。早いところ決めて試合を終わらせてくれと願う新潟サポーター。ノーモア千葉戦、ノーモア鈴木大輔。

84分、熊本のアーリークロスを田上が鮮やかな胸トラップで奪ってそのまま前進、三戸がボールを預かって攻撃するかと突撃した視線の先には背番号50の巨体が猛ダッシュ。

なんでサイドハーフの前にセンターバックが走ってるんだというよくわからない光景で当たり前のようにサイドに流れてボールを受けて優しいラストスルーパスをオシャレにカーブを掛けて供給する田上で三戸がフリーで受けるもシュートは枠の外。決めろよ!というか田上がありえないセンターバック!いやマジ田上オンリーワン。

試合も佳境に入ってきて至恩谷口を下げて孝司の兄貴と怪我明けのイッペイを投入。殴り切ってほしい俺たちの新潟。

残り時間でゲージゼロの体力を振り絞って守備に走り回る熊本と容赦無く殴り続ける新潟。それでもゴールは決まらない。そろそろ決定力というネガティブワードが頭に浮かんでくる新潟サポーター。ノーモア千葉戦、ノーモア鈴木大輔。

残り時間が限られている状況、それでも蹴飛ばさずスタイルを貫いて繋ぐ俺たちの新潟だが度々訪れる決定機が結果に繋がらない。91分にはニャブリ三戸が左足シュートアゲイン。

そろそろパワープレイだろと新潟コーナーキックのこぼれ球経由でセンターサークル手前まで飛び出してくるエデルソン小島。強く正確に蹴った低弾道のボールは熊本最終ラインの裏にフリーで抜け出していたセンターバック田上の足下へ。

後ろから飛び込んできた孝司の兄貴を目視して、「右足はインサイドで当てるだけ」と言ったかどうかはわからないがボールは鈴木孝司の頭の高さへピッタリ続くゴールの糸として宙を走る。

最高の試合でした!


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。