見出し画像

インサイドキックの表と裏:2022 J2 第41節 東京ヴェルディ×アルビレックス新潟

勝てば優勝だったが硬すぎるヴェルディの守備の前に新潟マシンガンで打ち破れない俺たちの新潟。

2022シーズンの新潟対策、2021シーズンの「前線からのハイプレスでビルドアップ破壊」から「屈強ブロックでマシンガンを防ぎ切る」という対極戦術になったのは非常に面白い。J2戦術史として記録しておきたいくらいだ。

いや本当に城福監督のヴェルディは攻守共に一気に洗練されたサッカーをやっているし、この試合はコンパクトな442ブロックが屈強すぎた。ンドカと馬場はマジ凄い。バスケスバイロンの推進力も凄かった。5連勝でクリーンシートも連発という事実に裏付けされた素晴らしいサッカーだった。ヴェルディの433縛りはもうないんだろうな。

などとションボリしていた翌日に横浜FCが負けたため新潟のサイレント優勝が決まってビッグスワンの10.23はエピローグとエンドロールを堪能する日となる。優勝したぞ俺たちの新潟!

試合としては新潟のマシンガンアタックとヴェルディの鉄壁という非常に良いエンターテイメントだったのだが結果が結果だけに気分が乗らないのでインサイドキックについて解説してみる。

今回解説するのはいわゆる「インサイドの表と裏」というやつになるが、これを意識しながら観戦するとグティ涼太郎や秋山などパサータイプの縦パスがより楽しめるようになる。キーパー小島を含むビルドアップ隊もこの所作でパスを通していたりする。

この試合、新潟とヴェルディ両チームで多くのスルーパスが通ったし、そのパスを通す技術としてインサイドの表と裏が当たり前に使われている。

解説用の動画として必ずしも使いやすいプレイではないが水戸戦の伊藤涼太郎による圧巻のスルーパス。こういったスーパーな縦パスが通る時には多くの場合インサイドの表と裏が使われているとザックリ把握しておけば良い。

インサイドキックの表と裏

言葉だけ見ても何の事だかわからない。

俺も正直これだけじゃわからないし、インサイドの表がインサイドキックの正しい基本であり、一般的だと思われているパターキックのようなものが表からの派生なので裏ということになる。日本のサッカー指導現場をなんとかしたいと言いたくなる。

インサイドの表と裏については事象を表す言葉としてもっと適切なものがあるんじゃないかと思うがヨーロッパではどんなふうに呼んでいるんだろうか。シャビとかブスケツのキック解説を現地の言葉で探せば出てくるような気がするけど誰か探してみてください。

まずはインサイドの表と裏がどういうプレイなのかを把握しよう。

本当はプレイヤーの基礎基本スキルで少年サッカーから指導する話になるのだが、サッカー観戦という視点では何も考えずにそういうものだと覚えてほしい。フットボールネーションで関節と連動したホゲホゲみたいな感じで紹介してくれないだろうか。股関節とか鞭の話とか近いけどそのものズバリなインサイドキックの話が読んでみたい。

インサイドの表、これはキックする際の軸足(右足で蹴るなら左足)側に蹴るキックになる。右足で蹴るなら左側くらいに覚えておけば良い。本来はこの蹴り方がインサイドキックの基本のはず。欧州南米の指導現場知らないけど。

これに対してインサイドの裏は蹴り足の方向に蹴るキックとなる。オープン方向と言ってわかるかどうかわからないが開いた体の方向に蹴るやつで、よく見るパター方式のインサイドキックの所作になると思う。パター方式と言うと誤解を招いてしまうが踵を押し出す形のキックになる。

ということを意識しながら試合を観戦してみて、表とか裏とかを認識するところから始めてみる。表と裏がなんぞやというのをリアルタイム観戦しながら判断できるようになってからが本題である。

裏→表変換

インターネットやSNSなんかでマニアっぽく「インサイド表!」などと発しているのは正確に言うと「インサイド裏→表変換!」となる。言い回しがめんどくさすぎるのでインサイド表で片づけているんじゃないかと思う。

では具体的にどのようなプレイがインサイド裏→表変換になるのか見てみよう。Youtubeで「ブスケツ パス」とか検索掛ければいっぱい出てくるし説明が一番楽なのだが公式コンテンツを見つけられなかったのでここには貼れない。扱うのは当然俺たちのヒーロー伊藤涼太郎だ。

松田から伊藤にマイナスのボールが渡って結果的には守備が反応できない伊藤のダイレクトなラストパスとなるが、なぜ守備が反応できなかったのかというところに思いを馳せる。

伊藤が実際に通したパスコースと守備側が予測したパスコース。

絵だけ見れば守備なにやっとんねん!と言いたくなるが、ここにインサイド裏→表変換の技術が使われているので動画のスライダーを利用して何度も巻き戻して確認してほしい。

伊藤がインサイドキックを蹴り込むモーションは「左足を踏み込み」「体をゴール正面方向に向けて」「足を振る」となっている。

このモーションを見せつけられた守備は自分の目の前正面側(インサイドの裏)に蹴り込まれると予想するので体も視線もそちらに向いてしまう。

この状態から内側へ回すように蹴ると、モーションはインサイドの裏だがボールはインサイドの表に飛んでいくというキックになる。体の向きと逆の方向に飛んでいくインサイドキックという言い方が適切だろうか。

これがインサイドの裏→表変換となる。蹴る前のモーションと蹴る直前の関節の動きひとつでパスコースを変えることができるプロの技である。

当然、インサイド裏→表変換があるのだから表→裏変換も存在する。表→裏変換の場合にはインパクトの瞬間に足首を外側に捻って蹴り出すことになる。

インサイド変換はラストパスにおいて蜂の一刺しキラーパスとなるが、地味ながら最も目にすることが多いのはセンターバックやボランチが縦パスを刺すシーンである。インサイド変換で守備のポジションと意識を動かしてから縦パスを通すというシーンは新潟のビルドアップで当たり前のように行われているので意識的に見てほしい。

特にボランチ、特にヤンはコントロール・オリエンタード(ボールを受ける際に次のアクションに繋がるよう、体の方向とボールの置き場所を最善の状況にする動作)とインサイド変換のコンボでパスを通していたりするし、現時点でそのコンボを世界最高練度で実演するのがバルサのブスケツとなる。イニエスタやシャビも凄いが教科書に頻出するのはブスケツである。日本代表だと田中碧がぶっちぎりで上手い。サンペールが新潟に来ないだろうか。

以上、インサイドキックの表と裏の話でした。

2022年10月23日、最高の日となるよう勝利で締めくくることができるでしょうか。締めくくりたい!

オープンチャットでのリアルタイム解説

試合開始前

もう誰が出ても優勝できるでしょう。今日は現地で感情的に観戦します!

前半終了時

拮抗した前半でした。

ヴェルディの442ブロックが縦横、特に縦にコンパクトなのが特徴ですね。新潟は大外にコミトを張らせてヴェルディのブロックを広げて中央から攻めたいのでしょうがヴェルディが外に釣られてくれません。サイドチェンジで三戸に入ると期待値は上がりますね。

ヴェルディの攻撃が割と徹底していて狙っているのは新潟にボールを持たせて運ばせてから自陣で奪って一発裏抜けです。バスケスバイロン速すぎです。

それに加えて大外でボールを持って新潟のサイドバックをを広げさせてからのポケットチャネルランです。サイドバックとセンターバックの曖昧なスペースに人とボールを飛び込ませます。右サイドでは右サイドバックの奈良輪が飛び込んできたりと良いですね。

後半もこの緊張感で続いてほしいです。

優勝への残り45分となるでしょうか。

試合終了後

いやーゴール入らなかったですね。

後半ヴェルディはプレスに切り替えてきて慌てた感じはあったでしょうか。いつも通りやれば問題無かったはずですがセカンドボールを回収できない時間が続いた中での失点でした。

終盤は圧倒的にゴール前に貼り付けますがプレーオフの可能性を消さないヴェルディが気合いの壁です。

秋山のトップ下という形も見れましたが結果は伴わずです。中央にスライドしてくる伊藤にまでボールは入るのですが複数人に囲まれて潰されます。

松田へのサイドチェンジからのクロスは可能性を感じましたがゴールが割れません。松田もだんだん良くなってきましたね。コーナーゲットできるだけで十分交代で入ってくるプレイヤーとしての役割を果たしています。

今日の試合はスワンで優勝を決める勝ち点調整と捉えておきます。

やっぱり声出しのあるスタジアムは良いですね。アルベル監督も来ていましたね。

それでは来週、どんなクライマックスとどんなエンドロールになるでしょうか。

「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。