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キャプテン・ゴメス:2024 J1 第19節 アルビレックス新潟×川崎フロンターレ

ノーモアヴェルディ!ノーモア川崎!

両者のストロングを全部出し切った試合は劇的な結末を上書きする劇的な結末で終わった。試合終了直後はアレコレ感情の整理がつかなくてプンスカしたりもしたけど、何が足りなかったのかは選手やスタッフが一番良くわかっているみたいなのでプンスカしないことにする。この経験が次の勝ち点に繋がることだろう。

試合内容はメチャクチャ面白くてアディショナルタイム含む100分オーバーを書き出しても良いのだが、この試合で長い調整期間から復帰してスタメンに名を連ねて試合終了直前までピッチに立っていた俺たちのキャプテンゴメスを記録しておきたい。今まで一回も書いていなかったのできちんと書いておきたい。

まずはボールタッチとパスをプロットで確認しておきたい。

ゴメスのボールタッチ分布。自陣相手陣内に関わらず大外でのタッチが多い。
ゴメスのパス分布。相手陣内ではゴール方向へのパスが多い。

フリーの状態で受けるためのポジショニング

ゴメスは基本的に大外においてフリーで受けるのが非常にうまい。ビルドアップで小島に逃したあとやデンのパス供給先として機能するゴメス。左利きなので守備からボールを離した状態で扱えるというメリットは大きい。ボールを大外フリーで受けることができればゴール方向斜め前に向かってチャンスクリエイトに繋がるパスを出したり、無理なら戻してやり直しのパスを出したりすることができる。チャンスクリエイトにおいては奥村やハセモなど推進力のあるアタッカーと相性が良いし、ビルドアップ時にはデンや小島から信頼されているパスが供給され、マイケルからはサイドチェンジのフィードが飛んでくる。

こういったところがゴメスの特徴になるが、この試合の後半は左サイドにしかボールがなかったんじゃないかというくらいゴメスにボールが集まっていた。全てはゴメスから始まるというようなボールタッチの多さだったのだが、これは圧巻のプロットである。

それでは具体的なシーンを見ていこう。

大外から縦に蹴り出すロブ

前半8:00のシーン。左サイド大外でボールを持つと右サイドを駆け上がる小見目掛けて大きくサイドチェンジともロングフィードとも捉えることができるキックを元気いっぱいに飛ばすが川崎の守備にクリアされてしまう。タラレバではあるがクリアされていなかった世界を想像すると興奮するプレイ。このプレイで自陣深くから一発でコーナーキックをゲットする。前半9:51にも谷口の裏抜けに合わせてフィードを蹴るが谷口が倒されてしまう。39:20にも優しく谷口にロブで供給するゴメス。ロブで裏に蹴れるのは秋山だけじゃないぜ!をアピールするゴメス。

レシーバーや運び屋としてのゴメス

前半15:55のシーン。最終ライン右側に落ちた秋山とマイケルがボールを持つとハーフウェイラインを超えた高さの大外でスタンバイするゴメス。右手を上げて合図をすると秋山はマイケルにボールを預けてマイケルがゴメス目掛けて低弾道のフィードを蹴り込むが高さが僅かにあわずにタッチを割ってしまう。うまく収まっていれば谷口と奥村を絡めたコンビネーションで崩せていた可能性は高い。後半46:20や69:00にはマイケルのサイドチェンジを大外高い位置できっちり受けることに成功するし、75:45にはプレス外しの小島のロブを大外でレシーブしたりもする。

前半18:30のシーン。失点後キックオフの流れにおいてデンからボールを受け取ると距離的にプレスに行くかどうか迷っている川崎の守備を置き去りにする形で30mほどをドリブルでゴール前まで運ぶゴメス。川崎の最終ラインは谷口の裏抜けにも注意を払わなくてはいけないので飛び込むこともできない。プレスからブロック守備に切り替えた直後の川崎の隙を突いたナイスプレイ。

ブロック守備を広げるゴメス

先制してブロック守備に切り替えた川崎に対し、大外や高い位置にポジショニングすることでブロックを外に寄せたり広げたりして秋山や奥村がハーフスペースでボールを受けられる空間を生み出すゴメス。ゴメスの動きで守備が若干広がり、その若干広がったスペースを秋山や奥村が使うということになる。奥村に若干のスペースを与えればレシーブしてターンできてしまうのでゴメスと奥村の相性はなかなかに良いのではないだろうか。地味で目立たないが後々効いてくるゴメスのオフ・ザ・ボールとなる。28:00には大外ではなくハーフスペースに入ることで守備を中央に寄せてマイケルから谷口へのサイドチェンジを通しやすくする動きもしたりするし、一番高い位置にゴメスが入ってハーフスペースに谷口という配置にもなったりする。インテリジェンス!

アタッカーとしてのゴメス

前半27:00のシーンにおいてデンからボールを預かると目の前に対峙するの家長。抜くぞ!抜くぞ!本当に抜くぞ!と脅しを掛けるも微動だにしない家長。そんな家長に対して抜くぞ!と見せかけて縦に進んで急停止からのダイナミックな内側切り込みを見せる。守備から遠い足でボールを扱える左利きのメリットを生かした攻撃的なプレイ。前半37:00にはハーフスペースの奥村にボールが入ったと同時にフリックが飛んできるのを見越して裏抜けに走るゴメスという姿も確認できた。後半62:20にはゴール前で圧力を掛ける新潟の一員としてペナルティエリアの中へ積極的に入ってきてゴールを狙う。アタッカーとしてのゴメスも素晴らしい。前半37:45にはゴール前中央から豪華にシュートをぶっ放した(上空を飛んでいった)。

セカンドボールを拾われても即時奪還で俺たちのターンを継続させるゴメスが漢なのだが、谷口のボディフェイントとタイミングを完璧に合わせる形で裏抜けしてボールを受けるゴメスのアタッカー感が凄い。このあと左足でちょいクロスを上げるもジェジエウに当たってしまう。流れの中で突撃の姿勢を見せるゴメスが漢。審判はハンド取ってくれても良かったんだぜ?

守備職人としてのゴメス

前半28:30のシーン。自陣から運んでハーフスペース高い位置に上がってきているの瀬川に入りそうなボールを後ろから完璧に忍者インターセプトするゴメス。結果的にマイボールにすることはできなかったがコンタクト無しでボールを奪うゴメスが素晴らしいし、セカンドボールを奥村が拾えていればターンからの超カウンター発動という場面だった。直後の29:20の場面ではペナルティエリア内で瀬川にドリブル突破をチャレンジされてしまうが体を捩じ込んでドリブルさせないゴメス。後半82:20にはペナルティエリア内までボールを持ち込まれてしまうものの後ろから全速力で追いかけて全力で守備に対応するゴメス。前半34:30には持ち場を離れてピッチ中央までハントしにいくのだが、ここで奪えばビッグチャンスというポイントを感じ取って行動に移せるゴメスの嗅覚が凄いし、流れで中央に移動したら流れのまま中央に漂って決定機を探し続けるゴメスは抜け目ない。

前半39:50にはカウンターを浴びそうになって戻るゴメスなのだが、秋山も島田も戻れていない状況ということで中央のスペースを最優先で埋めて対応するゴメス。どのタイミングでどのスペースを使われたらまずいのか良く解っていて秋山が戻り切るまで中央のスペースを埋め続けて川崎に攻撃させる隙を与えない。その後も流れでゴール中央を埋め続けつつも体を張った対人守備でペナルティエリア内に川崎アタッカーを入れさせない。

なお、ゴメスの対人守備の特徴としては、まず縦を防ぐように体で面を作ってから相手のカットインを誘って刈り取るという特徴がある。この面を作る時のポーズが一目でゴメスとわかる姿勢だったりするし、面を作りながら細かくステップするのがゴメススタイルなので注目して頂きたい。

チャンスクリエイターとしてのゴメス

前半31:15のシーン。セカンドボール回収の流れから相手陣内でボールを受けるゴメス。ドリブルの雰囲気を見せると猪突猛進で突っ込んでくる瀬川の動きを完全に読み切ってからの谷口へ鋭いスルーパス供給は鋭すぎて谷口の反応が遅れてしまう。タラレバ谷口ではあるがタイミングが合っていれば一気にペナ内突撃か素早くクロスというフィニッシュの形まで持っていけたはず。後半85:40には高い位置でボールを受けてドリブルで前進してからペナルティエリア手前でハセモにボールを渡してハセモが豪快にシュート(入ったかと思った)を撃つというシーンもあった。チャンスメイキングもできるゴメスが素敵。後半55:50のシーンでは自陣ハーフスペースにおいて奥村が落としたボールを受けるとダイレクトで縦に叩いてハーフウェイラインを超えた孝司への長距離レイオフを成立させる。これは非常に鮮やかなレイオフだった。コンビネーションプレイも難なくこなすゴメスが偉大。

後半60:30のシーンでは流れの中でペナルティエリア角に走り込むゴメス。突撃は奥村に任せて後方でセカンドボール回収要員としてスタンバイすれば予想通りにボールが転がってくるのでペナルティスポットのあたりにいる孝司へ斜め楔を打つ。この楔は川崎の守備に弾かれてしまうが溢れたボールを藤原が藤原ロール左足バージョンで豪快に蹴り込んで同点に追いつく。ゴールに間接的に関与したゴメスがマジ偉い。ガッツポーズするゴメスがカッコイイ!

後半67:35のシーン。相手陣内で秋山と奥村とゴメスの3人でトライアングルを形成したコンビネーションで守備を動かす。ポンポンポポポンと3周くらいボールを回したあとに後ろから上がってくるデンにボールを預ける。この時点で川崎の守備は3人に引き寄せられているのでデンは超絶フリーの状態でゴール前近くでボールを受けることが可能となった。このコンビネーションは今後何度でも目撃したい。

逆転後はクロージングとして史哉と交代してキックオフと同時にホームアドバンテージとしての試合終了ホイッスルで終わりだなとか思ってたのにアディショナルタイム長すぎるんだよ!オフサイドとオフサイド再開のホイッスル紛らわしいんだよ!あーーーー!!!!!

とにもかくにも、復活したキャプテンゴメスの左サイドは活性化しまくりなので今後が楽しみな俺たちの新潟なのです。

試合雑感

うまくいっている時は変えないのパターンかと思っていたらゴメスキャプテンがスタメンに名を連ねている。躍動に期待したい。

鹿島戦で躍動したダニーロはベンチ外となっているが個人的にダニーロはもっと見たい。自分の想像出来ることを超えてくるダニーロのプレイは魅力的なのだ。

新潟はクラシカルスタイルの昔ながらに強い鹿島相手にあれだけ堂々としたサッカーができたのだから川崎相手にも堂々とできるだろう。チケットの売れ行きも天気も良いみたいなので最高のプラネタスワンになってほしい。

などと試合前は思っていたのだが終わってみれば大変な試合になってしまった。選手もスタッフもベクトルを自分たちに向けているのでサポーターが外でギャーギャー叫ぶ必要はない。デモデモダッテの感情は消えないけどな。ノーモアヴェルディ、ノーモア川崎を記憶に刻んでおきたい。

この試合の川崎の特徴は守備にあったと評価する。新潟のビルドアップに対して前から3人が猛プレスで追い込むというのが基本的な構図となる。小林悠とマルシーニョのプレスは今シーズン見た中で間違いなく一番圧力が強かったし、特にマルシーニョのプレスは動きも派手でそれだけでエンターテイメントになっていた。ブロック守備も使い分ける川崎なのだがスタイルとしては圧倒的なプレスである。それでも新潟は自分たちのスタイルとロジックでかわして運ぶのだから本当に素晴らしいサッカーをしている。小島以外のキーパーにも多く実戦経験を積んでもらいたい。

川崎の攻撃も繋ぐスタイルなので新潟の守備はどうだったのかといえば、猛プレスというよりは442を基本としてサイドハーフまで含めたコース切りとなる。この守備がきちんと意識統一してできている時の新潟はきちんと強い。この守備をワンタッチプレイで外して前進するのが川崎のスタイルかな?とか思った。ワンタッチの頻度は新潟よりも多かったはず。

この試合ではデンの運びとサイドチェンジが効いていた。川崎プレスの結果として左サイドのハーフスペース前が空けば積極的に運ぶしデンひとりでハーフウェイラインを超えてしまうシーンもあった。サイドチェンジで飛ばして左サイドにボールを置いてからのゴメス奥村谷口のコンパクトトライアングルが本当に美しいトライアングルだった。これが回るようになるのはゴメスがいるからではないだろうか。ゴメスの大外でのポジショニングが本当に上手いし、それと抜群の相性となっているのが奥村。その関係から谷口が縦に抜けるというシーンはこれからも多く見ることができるだろう。史哉はハーフスペースを使う頻度が多くて上手く、ゴメスは大外を使う頻度が多くて上手いみたいな見方ができるかもしれない。

川崎のプレイヤーに注目すると遠野が素晴らしいプレイをしていた。ポジションとしてはインサイドハーフになるんだろうか。トップ下かもしれない。とにかく高い位置が基本となっていた。高い位置がスタートポジションなのだがビルドアップ時に落ちてきて新潟の442の2の後ろでサクッと受ける遠野が厄介極まりない。繋ぐこともできてゴール前での火力も出せて守備でも走り回る遠野がとにかく凄かった。

加えて川崎左サイドの佐々木とマルシーニョのコンビが独特すぎて驚いた。20〜30年前にトレンドが戻ったのかと思うくらいのオーバーラップとワンツー抜け出しは少年サッカーの教材にしたくなるほどシンプルで効果的だった。先制点も見事なコンビネーションからだったし、これを左サイドでしかやらないというところが観ていて面白かった。守備でも超スピードで追い込みを掛けるマルシーニョは後半途中で下がってしまったのだが助かった思うと同時にもっと見たかったという感情もあった。インパクト特大。

新潟のゴール前に目を向けると火力は確実に上がっているのだが奥村の存在がとにかく大きい。狭いスペースに自信を持って突撃出来るスキルとメンタルは今シーズンのハイライトに設定するしかない。ハセモの存在も欠かせなくて、アウトサイドでのフライスルーはファンタジックすぎた。

なのだがゴール前のバリエーションや練度はやっぱり川崎の方が高くてセカンドボールの回収率は圧倒的に川崎だったと思う。全てのボールが遠野に吸い込まれる仕組みを知りたい。

新潟のゴールシーンは今シーズン3回目となる藤原ロールから生まれた。藤原は今シーズン全部このパターンからゴールを奪っているし、今回は左足でのミドルということで更に難易度の高いプレイを完遂してくれた。アイシテルソウヤ。

そして試合終了直前の新潟に関わる全ての人の感情を乗せたマイケルのシュートと孝司の絶品ヒール。物語の完結としては完璧すぎるラストシーンだった。ビッグスワンは大きく揺れたことだろう。マイケルのことを最後までトーマスデンと連呼していた松原解説員は許さない。

そして山田新、川崎の下部組織出身でサポーター人気も高いことだろう。60mくらいを力強く駆け抜けたドリブルをスタートさせた時点で「これ決められたら伝説になるやつだから絶対に止めてくれ!」と念じていたら無事に止まったのだが最終的には伝説を作られてしまった。宮城天の復帰もあったりと川崎はこういう物語を作れるメソッドを持っているのだろう。新潟もかなり上手くやっているのだが人口という要素は首都圏クラブの方が圧倒的優位である。

お互いのストロングを全部出し切った素晴らしい試合だっただけにサポーター的に納得感のない結末が悔やまれる。選手やスタッフは自分達にベクトルを向けているようなのでサポーターとしても次の試合を楽しみに待つことにする。

アルビレックス新潟、本当に素晴らしいクラブだな。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。