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劇的敗戦振り返り:2022 J2 第28節 アルビレックス新潟×ファジアーノ岡山

怪我人多数の影響がモロに出て敗戦となった新潟。それでも前半は戦術的にも熱量的にも非常に高く、見応えの試合だった。曖昧なジャッジに不満は残るものの、現状の岡山の戦力と勢いを考えれば結果は適切だったのではないだろうか。悔しい!

そんな岡山戦を振り返ってみる。

完全に岡山ペースの序盤15分

序盤15分は岡山のペースとなり新潟は一方的に押し込まれることになる。キックオフ直後からエアバトラー・デュークにロングボールを供給してデュークもきちんと頭で当てるという、いつも通りの岡山感を醸し出す。

一方の新潟はブルドアップ時にボランチの高(ヤン)や島田が左右にサリーダ(センターバックの位置まで落ちる動き)して岡山の442プレスを躱す姿勢を見せる。

島田がセンターバック脇に落ちる形のサリーダ。相手のサイドハーフがプレスに来ても数的優位で躱してゴメスや伊藤がフリーでボールを受けることができりるようになる。

これに対して岡山はミドルブロック維持でサイドハーフがボールを追いかけてこないのでマイケルがボールを持ってモリモリとコンドゥクシオン(センターバックがボールを持って相手ラインを突破する動き)で岡山の1列目突破を試みるが結果に繋がらない。

岡山のミドルブロックはボールがピッチ3分の1を超えるまでは維持だが、1列目が規制を掛けてボールをサイドに誘導してタッチライン際までボールを誘ったら一気に複数人プレスで狩るというものになる。一般的なゾーンディフェンスとなる。そして岡山の意図した通りに狩られてしまう俺達の新潟。

岡山はボールを奪うとボールを縦に速く運んでサイドからデューク目掛けてクロスでドン!という戦力を最大限に活用した攻撃を仕掛けてくる。

岡山はモダンサッカーなキーパー参加型ビルドアップもできるし縦に速くボールも送れるしゴール前では圧倒的火力を出せたりと普通に強い。昇格争いに絡んでくるチームは違う。

そんな流れの中で前半13分、岡山はデューク経由の田中雄大行きでゲットゴールとなる。これは田中のシュートが上手かった。

先制された後の新潟

先制された新潟はサリーダ式ビルドアップをやめて島田を前目に配置する前傾姿勢に切り替える。

これが上手く嵌って岡山の守備ブロックを押し込みつつ、無理なら下げるしクリアで蹴られてもマイケル田上がハーフウェイライン上で全部回収するという好循環を作り出す。もしかしたら岡山が引いて442に切り替えただけかもしれないが。

ここから先はいつもの新潟となり、鈴木孝司の偽9番と伊藤の中央ポジショニングで守備を中央に寄せてから大外の松田でゴリゴリ攻め込む形でリズムに乗せる。

前半19分、パナ角を突破しようとする鈴木孝司のシャツをメチャクチャ引っ張ってバイスにイエローカードでメチャクチャに抗議するバイスとそれをなだめる柳。バイスより柳の方が一回りデカくて、柳の次の移籍先は秋田とかいわきじゃないかと予想している。

こうやって振り返ると、この一連の流れがこの試合のジャッジの曖昧さを生み出したきっかけだったんじゃないかと思うし、曖昧さが全て新潟にネガティブな影響を与えてしまったというのは記録しておく。この時にイエローカードだったということも、その後のジャッジが曖昧でなければ試合に大きな影響を与えていたはず。

で、そんな雰囲気を吹き飛ばす島田の超絶左足フリーキックが炸裂して吠えてあっという間に同点に追いつく。フリーキッカー島田、芸術の左脚!

そして逆転へ

同点に追いつかれても岡山はやり方を特に変えずに、基本442ミドルブロックからサイドに追い込んでボールハントを狙う。

サイドに追い込んでから複数人でハントする岡山の守備。

この守備に対して新潟は大外にボールを出さずにハーフスペース上で縦にボールを動かすことで前進する。

前半22:45の田上から伊藤への縦パスは守備を2列一気に飛ばす素晴らしいプレイだった。その後は高木→大外フリーゴメス→ドリブルで前進してから鈴木孝司へマイナスクロスの流れも美しかった。直後の前半24:10には逆サイドでヤンから鈴木孝司に似たような形のパスを通す。サイドに追い込めない岡山はぐぬぬ… な時間を過ごすことになる。完全に新潟のペース。

外への追い込みを外す形でハーフスペースや中央のレーンにバシバシと縦パスを通すだけではなく、守備ライン2本を飛ばせる新潟のサッカーが攻撃的で魅力的すぎる。

最終ラインからの縦パス1本で守備ライン2本を突破する新潟。右サイドではマイケルと高木で同じことをする。

で、流れの中でバイスと接触した鈴木孝司が痛がるが、そこで再びバイス vs 上村主審がファイッ!となる。戦いを捌くのは誰よりも体のデカい柳育崇。その後落ち着いて、上村主審から離れたバイスは鈴木孝司に離れた距離から煽りを入れるも笑顔で対応される。

振り返ってみればバイスはこういう雰囲気作りも含めて超絶優秀な傭兵感が凄い。生きるか死ぬか、戦場が俺のポジションだみたいな。

そして前半32分、伊藤がペナルティエリア外で高木からフリーでボールを受けて左足を振ると弾丸ライナーが岡山ゴール右隅に突き刺さる。マジゴラッソだったが伊藤は決めて当たり前みたいな顔をしているクールガイ。沸き立つビッグスワン。ボルテージは最高潮!

岡山に先制されたものの終わってみれば新潟がスタッツで圧倒していた前半。この展開が試合終了まで続くと信じていた全新潟サポーター。

後半開始直後にあっさり失点

後半開始直後、岡山がチアゴ・アウベスを投入して3-5-2にシステム変更して新潟の選手に「?」が浮かんでいるフワフワした時間帯、岡山の最強兵器デュークのヘッドでサクッと追いつかれる。全新潟が泣いた。

この失点の理由を巻き戻して確認してみれば島田の縦パス失敗から押し込まれてということになるが、前半あれだけ良く通っていた縦パスが通らず、その流れから失点するというのは試合の流れが変わるには十分な要素だっただろう。

振り返ってみれば、フリーでクロスを上げさせてしまった藤原の対人守備やすぐに戻ってこなかった松田なんかは明らかに良くなかったし、デュークのマッチアップに田上をぶつけることができなかったというかさせなかったデュークや、そうなるようにペナルティエリア内でフリーランしたチアゴ・アウベスや田中雄大のインテリジェンスがある。

なんというか、新潟のマイナス点と岡山のプラス点の差分で生まれたゴールではないでしょうか。

岡山の532ブロックと曖昧なジャッジ

その後、全新潟の涙のように大豪雨となってボールの扱い方が変わってしまうピッチ上の選手達。この雨が結果に影響しかのかどうかは良くわからないが、影響が全くなしということはなかったはず。

後半から3-5-2(3142みたいな感じ)に変えてきた岡山の守備は5レーン封じモダンサッカー・ビルドアップ対策の最適解である532ブロックで対応してくる。この守備により前半のような縦パスが通せなくなるかと思ったが、そんなの関係ねぇ!とばかりにハーフスペースに縦パスを打ちまくる俺達の新潟。

532ブロックで守備ライン飛ばしをさせない岡山の守備。前半の新潟を攻略する対策としては最適解だった。

でもやっぱり、さすがに1本のパスで守備ライン2本を飛ばすことはできないので田上から裏抜け狙いの鈴木孝司へロングフィードというシーンが増えてくる。

振り返ってみればこれは試合終盤のパワープレイという好まれない選択への序章だったのかもしれない。岡山がこの展開を狙っていたのかどうかはわからないが、結果として岡山の戦術変更が大当たりした結果となってしまった。

その後は「ファウルだろ?ファウルじゃない!」「イエローだろ?イエローじゃない!」「そのファウルは取るんかい!」みたいな曖昧なジャッジに観ている方もヤキモキしてしまうが、後半61:40のペナルティエリア直前で鈴木孝司がバイスに倒されたシーンがイエロー提示ならバイス2枚目で退場という状況だった。D4Cのスタンド能力で並行世界から退場したバイスと退場しなかったバイスを入れ替えてしまいたい気分。

逆転されて試合終了

最後は並行世界のバイスと入れ替わることのなかったバイスが勢いのままオフサイド疑惑と共にボールを捻じ込んで試合終了。全新潟が大号泣した。全岡山は飛び跳ねた。

せめて引き分けにしたかった試合だったが、サイドハーフに故障者続出という状況で今までの勝ち筋だった交代でさらに攻撃力マシマシになる新潟という交代ブーストが使えなくなってしまったのは痛い。

結果としてパワープレイを仕掛けるしかないが、新潟スタイルと対極にあるプレイで結果が出るとは思えないし、それをやらざるを得ないという悪循環。

交代で入ってきた小見がどうしてあんなに弱気になってしまったのかというのもあるし、ピッチ内外いろんな人がいろんなプレッシャーに耐えながら昇格という目標に向かって進んでいるはずなので、残り試合を大切にしながら一戦一戦勝ち点を積んで頂きたいという所存です。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。