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クロス(戦術ブースター髙澤):2021 J2 第26節 アルビレックス新潟×SC相模原

勝てない日々をやっと抜け出した真夏の夜、新加入フォワード髙澤のスペックを存分に活用した2ゴールで新潟に新しいスタイルをもたらしての勝利。そんな2ゴールを振り返ってみる。

クロスの的は谷口、髙澤は囮

基本的にはこれ。

今後これを他のクラブが意識してくれれば本命髙澤というクロスが活きるようになって試合開始前から情報戦で揺さぶりをかけることも可能になる。

自陣に押し込まれた相模原は5-4-1ブロックで守備を固めるも、藤原と高木と星の右サイドにおけるポジショニングに引っ張られて最終ライン5バックを乱されてフリーでクロスが上がれば守備の誰もが髙澤を警戒してピッチの誰もが髙澤に視線釘付け。

髙澤に視線が注がれている状況、守備は後ろを目視する術がないので髙澤を飛び越えるボールが飛んでいけばファーからズドン!となる。

今回はズドン!とならずにこぼれ球を福田が移籍後初ゴールの勝ちユニという結果だったが、この試合の先発メンバーを眺めた誰もが予想した未来をトレースしたかのようなゴール。

さて、右サイドで藤原と高木と星による崩しがあったわけだが、ここをもうちょっと細かく分解してみる。

藤原と高木がハーフスペース付近にいることで守備は中央に寄り気味になるが、大外高い位置には星がスタンバイしておりそこ目掛けて藤原がボールを出す。

大外高い位置ににボールが入ったら最も警戒すべきはゴールライン際まで縦に運んでクロスという行動になるので守備は大外のボールホルダーにアタックせざるを得ない。

大外のボールホルダーに守備がアタックに行くと、そこに生まれるのはゴール前センターバックとサイドバックの間のスペース。そこに人とボールが入ると新潟のビッグチャンスになるので当然狙うし、そこを狙うのはトップ下の高木。

今回のゴールにおいて、この高木のポジショニングが絶妙で特筆すべき褒めポイントだったりする。

高木、最終ラインオフサイドギリギリに入るのではなく、最終ラインにポジショニングを一回取ってから戻る形でボールを5-4のライン間で要求する。高木にフリーでボールを持たせたら電光石火の高木ターンで前を向かれてゴールの予感となってしまうので、最終ラインは高木についていくしかない状況。

この高木の動きにより生み出される5バックのギャップ。このギャップが生まれればオフサイドに引っかかることはないので、星と高木の素早いワンツーで星が5バックの裏で悠々ボールを受けて「髙澤?残念本命は谷口でした!」というフィニッシュが可能になる。

勝手な予想でしかないけれども、プロのサイドアタッカーにフリーでクロスを上げさせたらゴール前の攻撃と守備の状況を瞬時に判断して、表の髙澤か裏の谷口か、ロブかグラウンダーかみたいな最適解を瞬時に弾き出すような気がする。

これは単純に表の髙澤、裏の谷口というプレイではなく、その前捌きの5バック攻略も含めて作戦を完璧に遂行した完成度の高いゴールだったりする。

続いて2点目。

こちらも基本的には5バックの一角を吊り出してクロス(この時は藤原のアーリークロス)を入れて、表の髙澤と裏の谷口という形。

結果的には相手守備に当たって軌道が変わり谷口に転がり込んでいるが、藤原の蹴り込みを見ると、まずは髙澤狙いで髙澤がボールに触れなくても裏の谷口という形。素晴らしい!

なお、このシーンのもう一つの可能性。

藤原がボックス手前でボールを受けた時に最終ラインの一角が飛び出してきているが、藤原の技術があれば前に出てくる守備をドリブルでかわしてボックス内に侵入することもできるだろうし、星をボックス内に走り込ませてチャンスメイクなんかもできる。

このように、「髙澤がいるからクロス」という意識を相手に押し付けることで新潟の得意とする地上戦を優位に展開ということもできるようになったりする。

髙澤優也、新潟の戦術をブーストする男のこれからに期待。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。