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華麗なるギャツビー

連休に旅行に行った車の中で、「華麗なるギャツビー」のDVD観てたんだけど、よくできてるなーと改めて感心した。言わずと知れた原作はF・スコット・フィッツジェラルドでアメリカ人に非常に人気のある文学作品であり、映画化も何度もされている。

私は1974年版の映画を見ており、翻訳は村上春樹版と大昔に別の人の訳も読んだ記憶がある。春樹版読んだのは結構最近だし、大昔読んだのはあまり覚えていないし、私の中のギャツビーのイメージはロバート・レッドフォードとミア・ファーローが演じた映画のそれだったのね。で、なんていうか、完全なメロドラマっていうか、「好きで好きで仕方なかった人に敵う人になるため、頑張ってお金持ちになって、また再アタックする純愛物語」として捉えていた。アメリカ人に人気があるのも、アメリカ人て単純だしメロドラマ好きだよねーみたいな。

バズ・ラーマンのギャツビーは、迫力がある映像で、テンポよく進んでいく。古典をいじるのは失敗が多いよねーって見る前は思ってたけど、新しい技術を使いつつ、中身は原作に忠実に、原作の描いていることをきちんと撮ってる。時代考証的なことはさっぱり無視してて、パーティーシーンなんか完全に現代なんだけど、そんなことはどうでもいい。見せ場は面白く見せますよっていうのは全然問題ない。

まず、デカプリオが良い。最初はブラピがやった方がいいんじゃないの?って思ってた。ロバート・レッドフォードにそっくりだし。でも本来、レッドフォードみたいな上品な雰囲気のいい男がやる役じゃないのね。彼だからメロドラマになっちゃってたのかも。本当は貧しい家で育った、上昇志向の強いハングリーな男で、良い服もなにも今金があるから身に着けてるだけで、産まれた時から上質な物を当たり前に使ってきた人では全然ない。言ってみれば成金で、ピンクのスーツみたいなセンスにもよく表れてるし、デカプリオも成りあがった感がとても良く出てた。

相手役のキャリーマリガンは実はちょっと不満なんだけど、まあでもあんなもんかもしれない。ミアファーローがやったね、華やかな美人のイメージが強かったし、良家のお嬢様だから、もうちょっと花が欲しいっていうか庶民的すぎるんだけど、まあでもキュートではあります。

この物語、実際はギャツビーがデイジーのことを好きで好きで…ってラブロマンスでは全然ないのね。表面上はそうだけど、ギャツビーが好きだったのは、彼女の人柄とか彼女自身ていうより、良い家の出身である彼女。出自が良家という、もう努力じゃどうにもならないものを持ってる彼女。そんな彼女が好きでたまらないし、そんな女をモノにしたくて仕方ない。「彼女の声は金に満ちてる。」ってセリフに表れてるけど、彼女はお金に恵まれた人生を送ってて、そしてそういうものを決して手放さない人なのもギャツビーはよく分かってる。

デイジーの旦那役やったブルース・ダーンがまたなかな良い。良いとこの坊ちゃんで苦労したことがなく、産まれた時から上質な物に囲まれて育った人。良いものを知ってるし、世の中にはクラスがあって、自分は上流階級の人間だと言うことを十分に理解してその恩恵を享受してる。良いとこの坊ちゃんだけど上品なキレイな感じじゃなくて、ちょっと粗野で嫌らしい感じがあって、そこがリアリティがあるっていうか、本当はそういうもんでしょ?苦労したことないからぽわ~んとしてますなんて金持ち見たことない。もちろん皆がそうじゃないだろうけど、お金持ちの子どもって、子どもの頃から優越感をずっと持って生きてる、と思う。でも、手を出す女はメイドとか自動車整備工の妻とかで、上流階級の人じゃ決してないのね。多分、自分が優位に立ちたいとかじゃなくて、彼女たちと過ごす時間は本当に安らげてるし、きっと惚れてもいるだろうし、その辺が彼のピュアなところっていうか人間らしいところで、ブルース・ダーンが演じることでより魅力的なキャラクターになってます。ま、結局はデイジーと同じ種類の人間なんだけど。

ブルース・ダーンに魅力を感じる時点で、わたし、歳とっちゃったよね…笑。

さて、デイジーや彼女の旦那が持ってる優越感、これこそがギャツビーのコンプレックスであり琴線に触れる部分。貧しさから抜けだしたい一心で家を飛び出しがむしゃらに生きて成功したけど、生まれはどうにもならないのねぇ。そういうハングリーな男の人生を通して、人が常に他人と比べあうことや欲深いこと、打算的なこと、そういう人間臭いものをよく描いてる作品で、バズ・ラーマンのギャツビーはその辺をしっかり撮ってます。

じゃあなんでアメリカ人はこの話が好きなんだろう?ってちょっとまた検索しちゃったら、知恵袋に「なんでギャツビーはアメリカ人に人気なんですか」っていう質問がいっぱいあって、回答もいっぱいついてた。みんな同じように思うんだな。まあでもこうやって色々考えたり思いを馳せたり解釈を付けたりして楽しめる作品なんだと思います。わはは。

私はバズ・ラーマン版を何回も観てるんだけど、ってことは好きなんだと思うけど、なんでだろ?と自己分析したところ、衣装かなぁ。もうね、ほんと溜息でる。プラダやミュウミュウが衣装協力して、ジュエリーはティファニーなんだよね。まあブランドだけど、日本人女子ならいくつかは持ってる馴染のあるブランドで、でもボーナス入ったしえいやって買ったものとはまた全然違う世界が広がってる。そりゃーもうゴージャスでそれこそ華麗。プラダって、私が若い頃はめっちゃナイロンバックが流行ってて、私的にはちょっとチープなイメージがぬぐえない。猫も杓子もナイロンバック持ってる時代もあって。でもまあ、どうやってみても化繊な訳で、ズタ袋ですよ。ズタ袋に「プラダ」ってプレート付けて高く売ってるぼったくりブランドだと。でも「プラダ」って付いてるとみんな買う。それこそ、ブランド力なわけで。日本人は特にブランド好きだし、ブランド買うような身分じゃない若い子たちも持ってて、それって上昇志向なのかな?いい物高い物欲しいし持ってたい。まるでギャツビー。

ティファニーも、右も左もオープンハートな時代があって、そうやってみんな持ってるとすごく庶民的に写っちゃうんだけど、本来プラダは皮革製品のメーカーでイタリア王室御用達だったみたいだし、ティファニーだってヘプバーンが朝食食べたところだからね!(食べてない)。まあそんなブランドの真の実力を見せてもらってる感じですよ。自分自身は、服とかジュエリーとか身に着けるのはあんまり興味ない方なんだけど、映画のファッションを観るのは大好きで、とにかく美しくて見てて楽しい。

・・・あとやっぱ音楽かなー。とても効果的に音楽使ってて、この映画で知った「The XX」が良いのねー。他の曲も聞いてみたらみんないいの。男性と女性が交互に歌う、バービーボーイズ的な?ああ、そういえばバービーボーイズ好きだったよ。コンタって今どうしてるのかな?

せっかくのギャツビーが、バービーボーイズで終わるのもひどいよね。