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BABYMETALの新譜(2016年4月4日のブログ記事より)

(2016年4月4日のブログ記事より、加筆修正して転載)

ついにBABYMETALのセカンドアルバム『METAL RESISTANCE』が出ました。




ファンの方の投稿を見ると、皆さん7枚はCDを買っている様子ですが、私はすみません、3枚です。申し訳ない。お恥ずかしい。

ツイッターやFacebookを見ていると、ウェンブリーに行った方、ライブビューイングに行った方、それぞれ物凄い大興奮のご様子で、その盛り上がりを見ていて非常に羨ましいです。私はBABYMETALに貢献できてないじゃないか!、もっと応援できるのにできていないじゃないか!と、悶々と見ていました。
今回のセカンドアルバム発売に際して私がとった行動は、3/29に渋谷タワレコにCDをフラゲしに行って、8Fの特設会場でジュースを飲んだぐらいです。本当にすみません。
9月の仕事が色々入り始めているので、東京ドームは微妙なのですが、とりあえず申し込んでおこうかなと思っています。そんな感じです。

CDが手に入って、最初に聴いた時は、中学生のように聴いていました。
これ、スターウォーズEP7が公開の時に、大好きな映画評論家の高橋ヨシキさんが「(評論家なのに)小学6年生の気分で観て、2回目は中学生の気分で観て、3回目はまた小学生に戻って…」などとおっしゃっていましたが、待ちこがれていたものが手に入った時、プロでも子どもに戻るようです。
私もNHORHM次回作のために、分析的に聴いてやろうと思っていたのですが、不可能でした。全くもって不可能でした。気持ちだけで聴いていて、頭なんて動かない。そして、直前に雑誌ヘドバンvol.10の特集を読んでいたのですが、聴きながら読むとなんか泣けてきて、CDとヘドバンの相乗効果でさらに落ち着いて聴くことができず。

36歳にもなって、この現象は何だ?
しかも音楽を生業にしている人間だぞ?
しかももうアイドルに興奮するような年齢じゃないぞ?
なんで少女たちに感動させられるんだ?
疑問は尽きませんが、この興奮と感動を、日々の生活に擦り切れた自営業ジャズミュージシャンの自分がまた手に入れることができたのは、幸福なことだと思えます。
ええ、思えます。

昨年メタルのカヴァーアルバムを出して、以前から応援して下さっているジャズファンの皆さんの中で、どれくらいの人数が「西山さんがヘビメタやってる」と、ドン引いているのでしょうか。ある程度いるのは実感しています。
2006年デビューからしばらくは、ヨーロピアンジャズがどうこう言われていましたからね、しかしそのヨーロピアンの内実は、エンリコよりも前に実はイングヴェイ起源だったということです。いぇい。

今回の件で、ジャズ側から声をかけて頂く中で「ヘビメタ」あるいは「ヘビメタ(笑)」、ジャズ側の媒体インタビューでも「ヘビメタ」と言われるので、何度「“ヘビメタ”は一部の方には蔑称に感じるので(言われるのはまだいいですが、音楽媒体で文字になると結構ガッカリする)、ヘヴィメタルって書いて下さいね♡」と言ったことでしょう。自分の感動した音楽、誰だって他人に馬鹿にされたくないじゃないですし、他の誰かの大事な趣味や感動を、よくわかりもしないのに馬鹿にするって、下品ですものね。ヘビメタって書くことで、もしかしたら相手の大事な音楽をリスペクトできてないのかも、と気付いてご理解頂けるので、ちゃんと伝えています。

話は逸れました。

BABYMETALの音楽は、誤解を恐れずに言うと、「製品」であります。
アーティストと呼ばれる人は、自分でどうしても表現したいことがあって、そのどうしようもない衝動の発露として「作品」が生まれ、作詞にしろ作曲にしろ、何か自発的なクリエイト行動があるわけで、その部分に受け手は心を揺さぶられるんですね。
しかし、BABYMETALやアイドルと呼ばれるものは、「製品(あるいは商品)」として生み出されるわけで、彼女たちの意志とは関係のない、他者の商売として生み出されているものです。
しかし、その「製品」とわかっている音楽に、これだけ心を揺さぶられる。凄いことじゃないですか。
特にジャズだと、「商業主義だ」「売れるためにそんなことして」のような、商業的=悪のような純血主義的な価値観があります。そういう価値観が強い中にいる私が、製品とわかっていてもそれに感動させられるのは、ひとえに「BABYMETALという物作りチーム」に感激しているからだと思います。
勿論SU-METALは神々しいです。歌のレベルアップ半端ないです。YUIMETALもMOAMETALも愛おしくて仕方ないですし(ゆいちゃん痩せすぎに見えてちょっと心配)、三人の成長を見守る(ここ大事)のが楽しいのですが、このプロジェクトを進める制作チームが、メタルに対して本気やなと。そこなんですよ。
アルバムに散りばめられた、メタルとしてのギミック、オマージュ、それらを少女たちの歌とダンスに繋げるぎりぎりの挑戦とユーモア。そして、ライブでのバンドとでしか生み出せない一体感のあるパフォーマンスは、アイドルとして前で歌って踊っているだけでは絶対に出ない、強烈な音楽エネルギーが生まれます。それがわかっている人たち、それにエクスタシーを感じている人たちのプロ集団なので、「製品」を超えちゃった感があります。
ワンマンライブもフェスも観ましたが、まだ体験本数が少ないのですけども、どちらかというと、個人的にはフェスの方が上がりますね。味方だけじゃない環境の方が、BABYMETALチームの威力がわかります。

さて、新譜ですが、私は個人的にベビメタちゃんにこうしてくれたらいいなあという希望が少しありました。
それは、「赤と黒の可愛らしいフリフリの服以外の姿も見たい!」です。
イメージが大事なのはわかるんですけど、ヴィジュアルは基本的にマイナーチェンジしかしないので、ちょっと物足りなく感じてたんですよね。

だから、最初に限定盤のジャケットがきた時、すっごく上がりました。
真っ黒。真っ黒。
今までにないヴィジュアルで、ほんと神秘的で素敵。
そして、KARATEのPVで白装束がきました。これも質感がとても良くて。
このタイミングで真っ黒と真っ白が見れて、それだけで、CDを手に入れる前から結構満足していました。

内容に関しては、アレンジ的にファーストアルバムを踏まえての新しいことへの挑戦を上乗せしてある感じで、意外と全然違う路線というのは一つもないと思います。まあ軽くファーストの密度を8割増しにしたという印象。
BABYMETALに関しては、最初に感じた違和感は弊害にならない、というか、それが癖になってくるような音楽なので、自分のセーフなラインをどこまで持っていけるか、自分の耳と価値観が広がるきっかけになる気もします。

「メタ太郎」など思いっきり違和感満載な曲もありますし、最後の「Tales of the Destinies」とか目玉曲もあるんですが(ピアノが入るとアレなところまでドリムシ感踏襲してて笑いました)、個人的に打撃を受けたのが、「シンコペーション」です。これは私の個人的な美的感覚では、1回目に聴いた時はギリギリ…アウトでした。むずむずして、恥ずかしい。ベースのビロビロ感とか、ドラムが若干緩めに聴こえてくる感じとか、そこにきて「あっあ~」ですよ。普通なら、4拍目にまとめて「ああ~」で入れるところを3、4拍目の裏で「あ~あ~」じゃなくて、「あっあ~(後ろにアクセント)」です。そして、サビにきてのマジックワード、「めぐりめぐる季節」。
この過剰感。
過剰です。
このむずむずする感じは何だと自問すると、私の中の黒歴史を見ているような感じなんですね。これは中高生の時流行っていたのJ-Rockのガラパゴス感というか、あれですよ。
最初、うわあ…と思って、恥ずかしい、でもなんか聴きたい、また聴く、聴く、聴く…いいじゃん?、という、いつものBABYMETALトラップに追い込まれるわけです。
ちなみに、EU盤には別の曲「From Dusk Till Dawn」が入ってますが、こっちはかなり真面目で壮大で、相当カッコいいです。

一曲ずつ書いていけばきりがないので書きませんが、間違いなく今年一番のヘヴィロテになるであろう一作。
今年は、メガデスの新譜もアンスラックスの新譜も非常に良かったんですが、BABYMETALは別物ですね。聴いてる場所がちょっと違う。

早速、次はどのカヴァーをするの?とか聴かれるんですけど、
ま だ ま だ 落 ち 着 い て 聴 け て い ま せ ん。

とりあえず、新木場当たったので行ってきます。



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