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ポーランドから、帰ってきた。

 先月の7月18日に、約10ヶ月のポーランド留学から帰ってきた。

帰国に至るまで、コロナの影響で苦戦したので、その辺りのことを少し書いておく。

 まず、日本行きの飛行機が3度、キャンセルになった。ポーランドの日々のコロナ感染者数が一向に減らず、国境封鎖が何度も延長された為だ。購入するたびに口座からクレジットカードでの引き落としはされるため、貯金残高がもう失敗できない状態にまで追い込まれた。航空会社からは払い戻しは半年先だと言われてしまう。一時はポーランドでコロナの収束を待つしかないのかと諦めかけたが、「日本で咲いているひまわりを見たい、海で海水浴したい」という思いがあったので、同じく留学していた友人に帰国方法を聞いたり、ネットで情報収集した末、オランダ経由で飛んでいる飛行機があることが判明。

 航空券の購入時、その飛行機が飛ぶかどうかということのほかにも、気がかりなことがあった。ビザが切れていて(元々、この留学は半年を予定していた。来てみるとポーランドの居心地がよかったため、もう1セメスター延長したのだ。)、滞在許可証もコロナの影響もあって手続きが遅れており、まだ申請中だった。このままオランダから出国しようとすると、オーバーステイ扱いで罰則を受けてしまう恐れがある。オランダの大使館に相談したところ、「コロナ禍であるため、事情を説明すれば多めにみてくれると思うが、こちらから断定はできない。」と言われてしまった。帰りたい一心であったので、最後の望みをかけて私は強行突破をはかった。案の定、オランダの出国審査で引っかかり、警備司令官に狭い部屋に案内される。30分ほど待たされた後に、10分ほど事情を聞かれた。私は仕方なく、飛行機がコロナの影響で3度もキャンセルになった事を航空会社からのキャンセルメールを見せながら悲痛な面持ちで語ったところ、同情してくれたようで、あっさり通してもらえた。実のところ、最初の飛行機に乗れていたとしても滞在日数でいえばオーバーステイ。ただそこを指摘されたとしても、悪いのはなかなか滞在許可証を送ってこないポーランドのシステムの在り方の方だろう。全部ポーランド語で揃えなきゃいけない書類集めに悪戦苦闘して、ポーランドの友人家族に何十枚という書類を1日がかりで書いてもらって、おまけに申請料1万円払ったのに。だけど私にはこんな事情を警備官に英語で話せるほどの英語力もなかったので、ただただ安堵して、日本行きの飛行機に乗り込んだのだった。

 家に着くと、犬1匹と猫3匹が歓迎してくれた。猫には忘れられているかと思ったけど、覚えてくれていたようですぐに甘えてきた。「猫は3年の恩を3日で忘れる」ってことわざは完全にデマだということが判明した。それから、新たな家族が増えていた。まだ親指ほどの大きさのゼニガメちゃん。父親が家の近くの道路で轢かれかけていたところを拾った。母が知り合いづてに引き取ってきたのは、若い雄猫。この猫は生まれつき体が不自由で、朝晩の食事と下の介護が必要。名前は父が命名して、ミンミン。私の家には、昔から身寄りのない動物たちが自然と集まってきてしまう。

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 庭に咲いていた大きなひまわりは、帰宅した時にはすでに時期を過ぎてくたびれていたけど、黄色い花弁はまだついていた。以前は耐えられなかった母の小言も、夫婦喧嘩も、今なら「まだ元気がある証だ」と思える。先週には2週間の自主隔離が終わり、昔からの友人が遊びに来てくれたので、一緒に近くの海へ行った。久々に見た海岸の眺め、海が描く波の曲線が、私の求めていたままの姿でそこにあって、心の中で叫ぶ。

「ただいま!海!」

 まるで、今までのポーランド留学中の悪戦苦闘、自粛生活やいろんな心配事が、一瞬で吹き飛んでしまったかのようだった。

 帰ったら会う約束をしていたのに、まだ会えていない友達が何人もいる。会えなくても大丈夫だよ。それぞれの今を大切にして、生きていてくれればそれでいいよ。人なんて、ほんのちょっとした一言で傷つき傷つけたり、すれ違ったりしてしまうものなんだし。何か美味しいもの食べたり、猫を撫でたり。夕焼けを見たり。そうやって、一緒に生きて行こう。

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