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アート・絵画・美術に関する私感

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ここではアート、もしくは絵画、より広げて美術の分野に入るかなと判断したものを扱う、考えを整理するために書くノート。
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子どもっぽい

 ポーランド語の授業で、年齢を聞くイディオムを学んでいた時のこと。練習に、いつも明るいポーランド人教師のマグダレーナ先生が、学生一人一人に歳を聞いていった。私の番になり「マム、トゥシェジェシィチ、ラト!」と正直に自分の年齢を言うと、先生は聞き間違えたのかと思ったらしく、もう一度聴き直し、私がまた同じように答えると、さらに黒板に数字を書いて私に確かめた。私が頷くと「信じられない!」と驚愕の表情を見せた。私は昨年の9月に30歳になったけど、先生は22歳か23歳くらいだと思っていた

アレクサンダー・カルダーの霊感

 今回はアレクサンダー・カルダーが、霊感と呼ばれるような特殊な体験を得て彼の代表作である「モビール」を作るに至るまでのお話。ちなみに霊感とは。 霊感(れいかん、英: inspiration)は、神・仏が示す霊妙な感応のこと。また、神や仏が乗り移ったようになる人間の超自然的な感覚。あるいは霊的なものを感じとる心の働き。 理屈(理知的な思考過程など)を経ないままに、何かが直感的に認知されるような心的状態。 また、こうした本来の意味から転じて、芸術家・哲学者・科学者などが説明しが

ゴッホの死の真相とフィクション

 今日はゴッホの死の真相について、想像の物語を書いてみることで迫ってみた。  私は昔からゴッホ(本名フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホ[1853-1890])の絵が好き。個人的には自然を描いたデッサンがいい。根気よく対象を追いかけているし、描く事に対する情熱、また自然や生命に対しての敬愛の念も感じる。  ゴッホ は死ぬまでの約10年の間に油絵約860点、水彩画約150点、素描約1030点を世に残していて、有名な油絵の作品は最後の2年間に集中している。燃えるように絵を描

ユーリ・ノルシュテインについて

 私は今まで、映画やアニメを見て涙するような事はほとんどなかった。だが最近は歳のせいか涙腺がゆるくなって、子ども向けアニメを見ている時でさえ、思わず涙してしまうようになった。先日もNetflixで数年ぶりにジブリの「魔女の宅急便」を見て、泣いてしまった。トンボを助けにいくために、キキが必死に魔法の力を取り戻そうとしているシーンで、ポロリ。ポケモンのCGアニメ「ミュウツーの逆襲」を見ても、サトシがミュウとミュウツーの争いに巻き込まれて石化してしまい、それをピカチュウが何度も電気

マーク・ロスコについて

 展示されているアート作品を見た時に、なぜか深い感動を覚えたり、なんかよくわからないけどすごいな、オーラ出てるな、と感じる事がある。そう思わせる作品の背後には、往々にして、それを制作した作家の壮絶な人生だったり、深い理念が隠されている。きっとそういったものは、自然と作品から滲み出てしまうものなんだろう。   私が美術の予備校で学んでいたときに、多浪していた女の子達のある会話を耳に挟んだ。「(予備校に)何年もいるとさ、(芸大に)受かる人ってなんかわかるんだよね。入試直前になる

絵を描く人の戻れる場所

 美大に入っても、卒業してしまうとほとんどの人が絵や制作をやめてしまう。会社に就職し、結婚をして、絵を描く暇など無くなってしまう。  制作を続けられている人は、周りを顧みず、強い信念とプライドを持ち続けられた人。もしくは、天才的な鈍感さとか図々しさの持ち主で、周りのことなど気にせずに、制作をする楽しさ、面白さを見出し続けられた人。草間弥生の場合は、自分の精神病の治療のために絵を描いた。つまり、絵でも何でも自分の制作を続けてられているのは、ちょっと変わった人たちの事が多い。そ

マルセル・デュシャンを思う

 自分の気持ちや考えを文章や作品に表現し、それを人前に出すことは、時にとても勇気のいる事だ。それが私たちの社会で言われている常識と相反するものだったり、全く前例のないものであればなおさら。  私も、そういう事をする前後はよく弱気になる。そうなった時には、私は私の後ろ(過去)に控えている、私よりも臆病で、うまく言葉を選ぶ事ができない弱い存在、そのことによって口だけは達者な人たちに抑え込まれ傷つけられてきた、小さき負傷者たちのことを思う。すると、不思議と勇気が溢れてくるのだ。「

ゲルハルト・リヒター#2

ゲルハルト・リヒター♯1の続き。  アルベルティヌム美術館では現在、彼のドローイング展を開催しており、順路としては彼のドローイング郡を見た後に、1floorを使った彼の本展示を見ることになる。そこでは、壁面に彼の代表作であるフォト・ペインティング、グレイ・ペインティングなどが展示されており、中央に巨大なガラスをいく層にも直立させた立体作品が置かれている。一見無機質で鑑賞の邪魔とも捉えられる巨大なこのガラスの立体物が、私には彼の芸術家としてのこだわりを示したものであり、彼は鑑

ゲルハルト・リヒター#1

 先日、ドイツのドレスデンのアルベルティウム美術館で初めてゲルハルト・リヒターの作品の実物を見る。  彼の名前だけは知っているという人は日本人でも多いと思う。ドイツ国内では「ドイツ最高峰の画家」とまで言われているそうだ。私の彼の実際の作品を見る前の印象は、彼はアート界で時代の流れを掴むことに成功した人であり、お金や権力を公使して新時代のアートを作り出し成功した人、だった。有名なのは、写真をそのまま精巧に写し取った、「フォト・ペイント」。モザイクのように、いくつもの色を並べた