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ドローン物流の事業化に向け規制改革を進めると、河野太郎デジタル大臣のXポストを見て、2023年6月にスカイハブにつながる阿賀町の実証実験に参加されたことを思い出した。

(17) Xユーザーの河野太郎さん: 「ドローン物流の事業化に向けて、規制改革を進めます。 ドローン物流 阿賀に拠点高齢化地域へ配達 : 読売新聞オンライン https://t.co/jUU5GLL7w1」 / X (twitter.com)

SkyHubという言葉をご存知だろうか。SkyHubとはドローン配送と陸上輸送を組み合わせた物流インフラのことである。

日本ではエアロネクストとセイノーHDが全国に推進している新しい配送事業である。このドローン配送サービスは「ネクスト・デリバリー」と呼ばれ、美祢市 (山口県)、上士幌町 (北海道) 、小菅村 (山梨県) 、横須賀市 (神奈川県)、勝浦市 (千葉県) 、敦賀市 (福井県) とすでに多くの地域で社会実装されている。

11月19日に新たな拠点として、新潟県阿賀町に「スカイハブ阿賀」が開所された。ここでのサービスはSkyHub Delivery(買物代行)・SkyHub Eats(フードデリバリー)であり、年内を目途に医薬品の配送サービスも開始予定である。
同様のサービスは配送業社が実施している地域はあるが、すべて陸上配送だ。陸上配送ということは配送ドライバーが必要であり、配送品の大小に関わらず同じ手間がかかる。Sky Hubも陸上配送も行なっているが、これに合わせてドローン配送を行なっているのが特徴である。

ドローン配送には物流専用ドローンAirTruckが使われているが、エアロネクストが物流用途に特化してゼロから開発した可搬重量最大5kg、最大飛行距離20kmの特別仕様。この地域は大雪等の災害時には道路が寸断されることもある。こうなると陸上配送は不可能になる。こういう地域にこそ、空路配送が本領を発揮する。

最大飛行距離20kmということは片道10kmまでの範囲で利用できるため、一つの町であれば十分にカバーできる計算になる。最大過半重量5kgあれば、食料品なども配送できるので、日用品全般に利用できる機能を有する。

この地域は7割以上が高齢者だということを考えると、毎日の買い物も難しい人も多くいると予想されるので、ちょっとした買い出しを親族などにお願いする人もいるだろうが、人に頼むのに抵抗がある人もドローン配送であれば気兼ねなく利用できるのではないかとも思える為、地域に根付くサービスだといえる。

使用されているドローンも優れもので、AirTruckは機体構造設計技術4D GRAVITYにより安定飛行を実現し、荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に最適なユーザビリティ、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化し開発した「より速く より遠く より安定した」物流専用機である。
日本では各地の実装地域や実証実験で飛行しトップクラスの飛行実績をもち、海外ではモンゴルで標高1300m、外気温-15℃という環境下の飛行実績をもつ。

日本も山国のため、標高が高い地域でも正常に機能するAirTruckは打って付けである。因みに、4D GRAVITYとはエアロネクストが開発した機体構造設計技術で、飛行中の姿勢、状態、動作によらないモーターの回転数の均一化や機体の形状・構造に基づく揚力・抗力・機体重心のコントロールなどにより空力特性を最適化する技術である。

落語でも、蕎麦屋の岡持の中で蕎麦が溢れるというのがあるが、あれは岡持の中にある蕎麦に慣性が働くため、岡持の動きに蕎麦が追従できないことが原因である。電車の中の人にも同じことがいえるが、人が動く電車の中でも立てるのは、バランスを保つジャイロスコープを持っているからであり、ロボットであるホンダのASIMOが転けないのはジャイロスコープを搭載しているからである。

ジャイロスコープは船や飛行機のような大きなものには搭載され利用されているが、ジャイロスコープはいうなれば回るコマなので、ドローンに搭載するには不適当である。このため、ドローンにはジャイロスコープの機能を持たせるためにジャイロセンサーを搭載し、姿勢制御を行っている。例えば、ドローンを飛行中、風にあおられて傾いた時、ジャイロセンサーがその角速度や加速度がどれくらいかを検知すると、コンピューターがドローンを水平に保つためのモーター出力を計算し、それぞれのモーターに伝達する。

つまり、ドローンが安定飛行できるかどうかは、このジャイロセンサーで検知されたデータを瞬時に計算するシステムの精度が鍵であり、4D GRAVITYの精度の高さが実用的なドローン配送を実現している。配送するものが卵一つだとしても安心して利用できるドローン配送サービスを提供するのはこれ程までに技術力が必要なのだ。

2016年にアメリカのセブン-イレブンがドローン配達を成功させたニュースを聞いた時は、日本ではできないのか、と思っていた。日本でも2021年に東京の日の出町で「セブン-イレブン日の出大久野店」から、日の出町内の4つの配送地点へ、注文商品をドローンで配送する実験が行われたが、実験止まりだった。決して技術的にできなかったわけではない。

一番の壁は法律である。その法律も2022年12月にレベル4飛行が解禁されたことで、自律・自動ドローンによる配達の実用化に近付き、SkyHubへと繋がったのである。日本では、個人が使用していた撮影用ドローンが祭事の最中に落下した事件から、ドローンを危険視し、規制する方向に進んでいると思える。新しい技術には予想もしないリスクもあるだろうが、規制をすれば、技術の進歩はなく、衰退するだけである。

ドローンの規制を考えると、Winny事件と同じ道を辿っている様にも思えてならない。日本の技術を衰退させているのは、一部の政治かもしれないと思ってしまう。レベル4飛行がやっと解禁になり、これから大きな前進を期待したい。

河野太郎デジタル大臣は、2023年6月にスカイハブにつながる阿賀町の実証実験に参加された。当時「ドローン物流や自動運転による公共交通機関の運行、こうしたものをなるべく早く、単に実験するのではなく、実装していきたい」と仰っていたことが少しずつ現実の社会に実装されているのだから、河野太郎デジタル大臣も喜んでいるのではないか。

ドローン配送や自動運転の発展には行政のサポートが不可欠である。河野太郎デジタル大臣にはこれからも最新技術に触れて頂き、デジタル技術で豊かになった新しい日本の姿を早く我々に見せてくれることを期待している。

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