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オーストラリアの大学:学期と課程

オーストラリアには43の大学があり、ほとんどが公立です。また、7校が世界トップ100位にランクインしており、創立後50年以下のカテゴリーに入る大学では15校がこのカテゴリーでのトップ100に入ります。
(ちなみに私が勤めるキャンベラ大学は世界ランク184位(Times Higher Education ranking)、創立50年以下の大学では世界ランク16位です。日本の大学でTHE 世界トップ200に入っているのは東京大学(36位)と京都大学(54位)のみです)

また、留学生の数は年々増加傾向にあり、2019年は約74万人の留学生がオーストラリアで学んでいました。

コロナ禍における留学生の動向は注目されていますが、確かに入学者数は減っているものの、国境が開くまでキャンパスで学習できないということを承知で入学してくる学生は少なからずいます。ですので、現在どこの大学もたいていハイブリッド型といって対面とオンラインの両方のモードで講義をしています。

オーストラリアの大学の学期や課程って実はあまり良く知られていないのか、日本の先生方や他の国の先生方からよく質問を受けますので、ここでご紹介したいと思います。

まず、学期はいつ始まるのか。

よく忘れられがちなのですが(昨日も日本の先生とオンラインミーティングをしていて、私の服装から「そうだった、そちらは冬だね。」と言われました)、オーストラリアは南半球にあり、季節が北半球とは反対ですので当然学期が始まる時期も違います。
新学期、いわゆる第1セメスターは大学により1~2週異なりますが、2月半ばから後半にかけて始まります。夏休み後、ということですね。そして5月半ばに第1セメスターが終了。冬休みがあり、第2セメスターは8月半ば(春の初め)から始まり、11月半ばで修了、その後は夏休みです。冬休みの間は、大学によっては冬季特別講義をするところもあります。当大学は、Winter Term といって、7週間集中的に講義をして、通常のセメスターと同等の単位が取れる仕組みがあります。このタームを上手に利用すると、全課程の履修期間を半年程度短くすることができ、早く卒業・修了できます。

Undergraduate degree

日本でいう学部専攻。
日本と違って、理系、文系ともに、たいていの課程はフルタイムで3年です(卒業に必要な単位の基準や単位数は大学によって異なる)。ただ、Professional Accreditationといって、専門分野の業界団体から認定を受けている課程はその認定の基準に沿ったカリキュラムになるので、4年以上の場合もあります。このProfessional  Accreditationについては、学生が卒業後の就職を考えて非常に重視するポイントですので、また別の機会に書きたいと思います。
いわゆる卒業論文というのはあまりないですが、卒業前最終セメスター(あるいは卒業を控えた前年1年を通して)ではプロジェクトベースの科目があります。
また、学生がそれぞれのペースに合わせて履修数を変えられますので、パートタイムで学習することも可能です。この場合は卒業にかかる時間が長くなります(修士も同様)。

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実務経験者とのフィールドワークは重要な学びの機会です!(2012年著者撮影)

Postgraduate degree

日本でいう大学院。修士課程と博士課程に該当します。
修士課程は、日本の場合は理系だと、多くの課程が修士論文を課しますが、オーストラリアの大学院は通常coursework といって、論文は課しません。ただ、最終年度にインターンシップや研究プロジェクト(最終アウトプットはミニ論文)の科目が組み込まれている場合が多いです。
また、日本と違うのは、修士課程の途中である程度の単位を取得したら、そこで修了することができる、Graduate Certificate とGraduate Diplomaという、日本語に訳すと準修士と言われる出口があります。それぞれの目標に応じて、この出口でいったん学習を修了して、また戻ってマスターをやっても良いし、そのままでも構いません。その出口での最終学歴となります。
博士課程はだいたい4年です(日本では3年ですね)。

入学の基準

日本で実施しているような入試というものはありません。ではどうやって入学志願者を選ぶのかというと、学部入学の場合は、ATAR(Australian Tertiary Admission Rank)といって、99.95満点のスコアリングシステムがあり、個々の高校生が、全国の同学年の高校生でどの辺りに占めているかを測るものさしになっているものを使います。
例えば、ATARスコアが80点の場合は、その学生はトップ20%に入っているということを示します。

ATARは、「優秀な成績を収めた英語2科目」及び「その他優秀な成績を収めた8科目」の10科目(最低4つの異なる科目で構成)の総合得点に基づき算出されます。

大学は、このATARスコアを基準に、その志願学生がどの程度の学力を有しているか、そして他の提出書類(アンケートや、過去の作品のポートフォリオ、学習履歴、など)や面接などで、自身の大学で無事に課程を修了できるか等を判断して、入学のオファーを出します。

例えば、オーストラリアのトップのLaw School, シドニー大学の法学部に入学するならATAR 99.5とほぼ満点に近いスコアが要求されます。私の専門分野に近いArchitecture and Enviromentsだと85と、同じ大学でも学部によって違います。

大学院の場合は、「学部卒業」の要件とともに、それぞれの課程で必要要件を設けています。入学希望者は自分が要件を満たしているかを、注意深くチェックする必要があります。

Australian Qualifications Framework (AQF)

大学にとって、カリキュラムは商品です。それぞれの大学が個性的で、学生のニーズに沿ったカリキュラムを作り、人気を集めようと、日々カリキュラムの更新やレビューを行っています。しかし、個々の大学のカリキュラムがばらばらの質や基準ではいけませんので、カリキュラムはAustralian Qualifications Framework (AQF)という国で統一された基準に沿ったものであることが定められています。

Bachelor Degree だとAQF Level 7、Master Degree だとAQF Level 9と定められた5つの評価軸、Purpose, Knowledge, Skills, Application of knowledge and skills, Volume of learningのそれぞれの基準を満たしていなければなりません(AQF ガイドラインはこちらからダウンロード可)。どの大学もカリキュラムを作る際には、AQFを非常に重視します。

実際のカリキュラム作りに関しては、私が責任者をしていたMaster of Urban and Regional Planning を例に後日書きたいと思います。

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