オーストラリアの政策金利と若者の心理
第2セメスターも3週目になりました。今週は最初の課題の提出があるので、学生たちの間に緊張感が漂っています、笑。
8月に入り、ニューヨークおよび日本の金融相場が荒れていましたね。オーストラリアでも、オリンピックのニュースには紛れていましたが、注視していた方は多いように思います。この金融相場の乱高下について、学部2年の学生たちと議論をしました。特にオーストラリアの立ち位置について。
その議論の際に、この論考を用いました。
この記事は8月6日に出されたものなので、その後の株価のリカバリーはこの記事が出された後です。
学生たちは、アメリカの状況や、日銀の利上げの件は概ね理解していました。ただ、どうして日本が長年ゼロ金利政策をとってきたのか、長引いた不況の原因は何だったのか、そして日本社会の課題(高齢化以外の課題)については理解度がまちまちだったので説明を加えました。私のこの講義は経済学というよりは、建設系の学生たちが自分のキャリアを形成する分野においてどう経済指標を見るか、という視点で組み立てていますので、こうした視点から、議論をしてもらいました。
彼らが意識しているのは、オーストラリア内でのインフレです。現在消費者物価指数(CPI)は3.8%です(2024年6月時点)。ちなみに同時期の日本のCPIは2.6%です。オーストラリアの中央銀行、Researve Bank of Australia (RBA)はCPIの目標値を1990年代半ばから2020年までの期間に続いた2-3%を目標としていますので、今の水準はまだインフレが強い状態で、物価高の影響が懸念されています。これでも、2022年につけた7.3%をピークに下がってきていますので、落ち着く方向にはあると言えます。
RBAは、政策利率を現在4.35%としています。これは、2023年11月から据え置きの水準です。長いスパンで見ると、1990年代前半までは、非常に高いレートでした。オーストラリアが高成長していた事が背景にあります。それから徐々に下げ、2020年にコロナで大打撃を受けた時は、0.1%までに下げました。それからその水準を2022年半ばまで保ち、コロナからの経済の回復と同時に徐々に上げてきました。私が日本から移住した2008年は、7.25%と高い水準で、銀行でこんなに利息がつくものかと驚きました(その当時の日本がゼロ金利だったため、銀行預金に利息がつくことをもはや忘れていた位です。)
今回のNYや日本市場の乱高下を見て、オーストラリアのRBAは金利を据え置きにしました。オーストラリア市場も影響は受けましたが、日本ほどではありませんでした。この記事のように、オーストラリアの経済はまだ中国との関係が強いとの見方もあります。私が感じる(特に若い方々からの)雰囲気は、生活費の高さの心配は常にあって、そのために色々と将来への不安はあるものの、彼らが物を買い控えているかというと、そういう風には見えません。旅行や外食を控えているようにも見えません。とりあえず、それほど溜め込まなくても銀行に預けている分は、利息がつくし、やれる範囲でやっていこう、でもそこまで我慢はしないけど、という感じだと思います。楽観的に見えるかもしれませんが、こう思える背景には、続く人口増加と、経済成長があります。インフレ水準に追いついていないという指摘もありますが、収入もあがっています。
オーストラリアの経済界は、今のNY市場は日本の同行は静観するという感じです。学生たちも、もちろん自分のお財布状況には注意するけれど、だからと言って必要な消費を控えることはせず、日々の生活を楽しみたいようです。
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