ワクチンとキャンパス開放、そして社会
今週は、ロックダウン明けのキャンベラで、今繰り広げられている「キャンパスにいつ戻れるか」の議論についての報告と、社会についての考察をしたいと思います。
コロナ・デルタ株の蔓延により、キャンベラでは8月の半ばからロックダウンをしていましたが、10月15日から解除になりました。ソーシャルディスタンスシングの規定はありますし、マスクも着用しなければいけませんが、レストランや小売店も徐々に再開しています。1番混み合っているのは、ヘアサロンや床屋さん、DIYショップでしょうか、笑。
当大学では、1部の実習科目に参加する学生や教員を除いては、10月29日までは原則キャンパス内の施設に戻るのは、許可を取らないといけません。11月以降については、また発表があるそうですが、現在学内でアンケート調査を行っています。その内容は、教員やスタッフ、学生について、ワクチンを2回とも接種した者のみがキャンパスに戻ることを許すかどうかを問うものです。キャンベラでは、現在ワクチンの1回目を接種した人の割合(16歳以上)は95%以上に達しています。また、2回とも接種した人に関しては、78.8% (10月17日現在)です。ワクチン接種率は高いといえますので、ワクチンを2回とも接種した人のみキャンパスに戻ることができると言うのは、決して理にかなっていないわけではありません。もちろん体質やアレルギーなどでどうしてもワクチンを打てない人は、この除外の対象となります。しかしこれには議論の余地があると思っています(私自身は、教員ですので、基本自分はワクチンを接種しているべきだと思っていまし、2回とも終えています)。アメリカの大学では、基本的にはワクチンを2回とも摂取している人のみをキャンパスに入れるようになっているようですね。
悩ましいのは、この「ワクチンを打つか打たないか」で、キャンパスどころか社会が2分してしまっていることです(特にアメリカでは顕著ですね)。昨年、Divided societyについての論考を書きましたが、当時は、属する社会グループによっていかにコロナウィルスの脅威が違うかと言う事について着目しました。
Nakanishi, Hitomi and Kobayashi, Yasuko Hassall, Society Matters in Surviving COVID-19 (June 25, 2020). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=3635167 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.3635167
今年になって、社会全体の議論が「ワクチンを打つか受けないか」と言う、個人的なチョイスの問題になっています。背景にあるのは、ワクチンへの正しい理解であったり、宗教的なことであったり、個人の主義であったりと様々です。私自身、「ワクチン」によってこれほど社会が2分するとは思ってもいませんでした。そうは言っても、コロナ以前から起こっていた格差の広がり、人種間問題などに起因して、このような社会の分裂が大きく進んでいるようです。
先日、‘Educated’という本を読んで世の中には全く違った考え方の人がいるんだなと非常に衝撃を受けましたが、無差別に社会を脅かすコロナとの戦いによって、今の現在の社会の有り様が浮き彫りになったような気がします。
(この本については、高等教育論とも関係しますので、また後日詳しく取り上げたいと思います)
そして、私の研究テーマである都市計画や、コミュニティープランニングなどと繋げて考えると、今後このますます分裂していく社会において、この分裂がコミュニティー、そしてこれからますます増える災害へのレジリエンスに与える影響は大きいと思っています。これから、世の中がコロナ禍で大きく変化していく中、社会の有り様がどう変わっていくかを注意深く見てみたいと思います。
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