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オーストラリアの経済と雇用状況

今週、日本の国立大学で「コミュニティマネジメント」の非常勤講師をしました。そして学生さんからオーストラリアに関する質問を頂きました。
その中に「オーストラリアの経済はどういう状況で、若い人向け(大学卒業を控えている人たち)の雇用機会はどうなっているのか?」という質問がありました。今回は最近のオーストラリア経済の動向と雇用状況を簡単にまとめたいと思います。

1.オーストラリアの経済 before and under COVID -19

オーストラリアにも、日本銀行のような役割を果たすReserve Bank of Australia があります。そこの資料を見てみましょう。
まず1国の成長を表すのに最も使われる指標、GDPの成長率です。

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GDPの成長率は上がったり下がったりしながらもだいたい2%以上を維持していると言う感じです(ちなみに、日本の最新の国内総生産(実質GDP)成長率(年率)は、0.65%、世界の平均値は3%です)。
オーストラリアでGDPの成長率が割と安定している理由は、人口が上昇していること、まだ若い国なので成長の伸びしろがある事などが考えられます。しかしコロナ禍に陥った2020年に大きく下がっています。

次に消費者物価インフレーション指数を見てみましょう。下図のように、上がったり下がったりを繰り返しながら1%以上を維持しています。特に2016年以降は上がり調子でありました。しかしやはりコロナ禍ではで大きく下がっています。

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では、世帯の収入と消費はどうでしょうか。下図のように、2015年以降所得は上がり調子なのがわかります。消費もそれに準じていると言えるでしょう。そして、貯蓄は2020年に一時急上昇しているのがわかります。これはコロナ禍での出入国規制(原則海外渡航は禁止)で、これまで旅行などに消費していた分を貯蓄した、或いは今後の不安から買い控えが起こった(図から消費が落ち込んでいることがわかります)などが考えられます。

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次は雇用です。図のように、こちらも上がり調子であったことがわかります。特にGFCの影響がある程度落ち着いた2015年以降増えています。2020年はこちらも大きく下がっていることがわかります。しかし、2021年前半は回復しているのが分かります。オーストラリアは比較的感染が抑えられ、ロックダウンもアメリカやイギリスに比べると長引かなかったことが要因だろうと思います。

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2.若年層の非雇用率

この図は15歳から24歳までの年齢層の非雇用率を示したものです。ご覧のように2018年以降少し下がったものの、横ばい状態が続き2020年に急に増えています。これは明らかにコロナウィルスによるロックダウンなどの影響と言えるでしょう。オーストラリアのようなジョブ型雇用では、経験の少ない若年層は圧倒的に不利となります。

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また、この図は男女別の労働あるいは学習への従事率を示していますが、男性と女性では、この年齢層(15-24歳)ではほとんど男女差はありません。

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3.もし職を失った時のサポートは?

2021年7月現在オーストラリアの非雇用率は4.9%です。悪い数字ではありませんが、コロナ禍においては非常に流動的な数字と見た方がよいでしょう。

もし突然職を失ったら、オーストラリア政府から様々な財政的なサポートが受けられます。16歳から21歳までの方には、Youth allowance,、22歳以上にはJobseeker payment などがあります。例えば、私が22歳以上でコロナにより職を失ったとしましょう。もし私がシングルで子供がいなければ2週間あたり約620ドルの政府からの援助があります。もし子供がいれば、この金額は約667ドルとなります。その他、個人の状況に応じて金額は異なります。

Jobseekerの他、ローンの支払いの優遇措置や医療費のサポートなど様々なサポートがあります。また、住んでいる州によっても様々なサポートがあります。これら情報は、各州のウェブサイトで見ることができます。

4.まだまだ続くコロナ禍と準備しておけば良い事

オーストラリアは、2021年7月末現在、デルタ株の蔓延により、シドニー、メルボルン、アデレードでロックダウンが実施されています。このロックダウンによる経済への影響は非常に大きいものと考えられます。またいつ終息するかは見えておりません。コロナ禍でなくても言えることですが、政府が用意しているサポートに関して詳しい知識を持っているべきでしょう。また情報は常にアップデートされているので、気を付けてみておく必要があります。もし、これを機にもっと需要のある職にCareer Changeを考えているという場合は、この機会に政府のJobTrainer 制度を利用する手もあります。無料、或いは低料金でさまざまなコースが受けられます。各大学も、色々なコースを用意しているので、見てみると良いでしょう。

次回は今回の続編として、オーストラリアの産業、証券市場について少し触れたいと思います。

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