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あんなこともあったよね、と笑えた夜

 先日、学生時代のライバル、竹内彩華と久しぶりに再会しました。彩華は100mで当時の中学日本新記録(11.73)を樹立し、全中は二冠。しかも試合や合宿の夜も部屋で勉強していたのが印象的で、足が速くて頭も良くて、雲の上の存在でした。ところが高校に進学してからは記録が伸び悩み、私が勝つことも。大学に進学してからは私も記録が停滞し、試合で時々会うことはありましたが、陸上について話すことを避けていたというか、触れてはいけないような気がしていました。お互い苦しいのはわかっているけれど、打ち明けられない。会話も表面的だったように思います。

 彩華は大学卒業後、一般企業で働いていると風の便りに聞きました。また会いたいなとは思っていましたが、そこから特に連絡を取り合うことはありませんでした。ところが、私が入籍したことを何かの記事で見つけてくれたらしく、10年以上ぶりに連絡をくれ、ごはんでも行こうか、ということになりました。

 ひとしきり近況報告をした後、競技生活の話になりました。「彩華ってそういえば、いつ引退したの?」「大学4年。途中でやめようと思った時もあったけど、4年間はやるって決めたから。でも、やりきって良かった。」そこから話が止まらなくなり、試合に出たくないと思っていた時期があったこと、当時お互いに対して思っていたこと、自分自身を受け入れられた時のこと、苦しかったときに助けてくれた人たちのことなど、初めて腹を割って話せたように思います。

 2人で共通していたこともたくさんありました。「走るのが好き」、「陸上を通して学んだことがたくさんある」、「アスリートとしての自分だけでなく、人としての自分に気づけた、なれた時に、スッと心が軽くなったし、いろんなことが受け入れられた」などなど。

 ほんのひとときでしたが、本当に良い時間でした。月日が経ってもこうして語り合える仲間がいることは、幸せなことだなと感じました。なにより嬉しかったのが、彩華の表情が明るかったこと。そして、「久しぶりに競技場で走ったよ~!」と子どもと楽しそうに走る映像を見せてくれたこと。あの伸びやかな走りも健在でした。

「瞳ちゃん、競技はやりきった方が良いよ。納得がいくまで、とことん。」
ありがとう、がんばるね。そしてまたいつか、一緒に走れるといいね。 

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