特別なんかじゃなくっても
「かあちゃん取り扱い説明書って知ってる?」
いきなり娘が聞いてきた。知らないけどどうして?と尋ねると、「すっごく面白い本だよ!」と興奮気味にいった。
聞けば、その本に出てくる『かあちゃん』。家では、いつも溜めておいた韓国ドラマを、夜に見るのが楽しみとのこと。そしてある日、焼き肉を家族で食べていたら、かあちゃんは野菜しか食べない。お肉はみんなで食べて、という。なぜなのか。
するとかあちゃんは、言った。
数日後に『韓国行ってきます!そこで美味しいお肉食べてくるからいいよ』と(※これは、あくまで10歳娘が本の内容をかいつまんだ情報)。
娘は「もうお母さんと一緒じゃん!」と大興奮。私もあんまり似てるものだから、驚いて一緒に大笑いした。娘は、その本を借りてきて私に見せたいが、4年生の教室の本だから借りて来れられなかったの、と残念そうだった。今度探してみなくては。
それにしても、私が韓国ドラマにハマったのは3年ほど前。それも、大好きなFMラジオ局の番組内で紹介されていて、なんとなく観てみようか、と思ったのがきっかけだ。それまで周りにそんな人物はいなかった(いや、実家の母は、20年ほど前の『冬のソナタ』ブームからずっと韓国ドラマにハマっていたのは事実。私はその頃から今の今まで興味がなかった)。
そこからあまりの映像の美しさにすっかりハマってしまったのだが、世の中には、本に書かれてしまうくらい、同じ状況の母親がたくさんいるらしい、ということが判明した。いや、知っていた気はしたが、明白になった。もう可笑しいやら、恥ずかしいやら。
そして、私は娘に言った。でも、それほどお母さんたちが韓国ドラマにハマるには、何か理由があるはずだと。
言いながら、共通項を考えた。
例えば、恋愛に飢えているとか、本当はももっと大事にされたいとか、美しくいたいとか、優しくされたいとか、現実が忙しすぎるから夢を見たいとか、もういくらでも思いつく。
そんな母たちと、時間を忘れて語り合えたらどれほど楽しいだろうか。泣き笑いしてしまうのではないかと思う。
この話を聞くと、もしや世間には『また韓国ドラマか』と呆れる人もいるだろう。
それは仕方がない。耳にタコができるほど聞いているだろうから。
でもね、本当に素晴らしい出来栄えの作品ばかりなのです。
もともと私は日本のドラマも好きだったし、洋画もよく見てきた。それでも、ちょっと別格に感じるほどだ。
音楽は珠玉のバラードが揃っていて、歌はとてつもなく上手い。
俳優たちは、本当に演技が素晴らしく、特に日本人にもとにかく『分かる!』と思えるような、ピッタリの配役ばかりで、誰もがハマり役。しかも、健康的で美しい老若男女が揃っている。
こんな世界があるのか、と驚嘆した。物語も丁寧に作りこまれ、ファンタジーですら、現実と融合して違和感がないほど。
本当に人が活きて、生かされていると感じる。
この素晴らしいものに感動しない人があろうか、というくらいだ(大げさ)。見るほどに心動かされる。
おかげで、私は世界が広がった。お隣に、これほど似て非なる興味深い国があったとは。
というわけで、私はある意味一般的?な母の一人だということを自覚した今日。今更感があるが(一般がどこまでかとかの難しい話でも、母はハマらないとおかしい、とかでもありません)。
日々のいろんなことに一喜一憂したり、崇高な才能なんて持ってないことにがっかりもするけど、大きく括れば、私もただのそんな『かあちゃん』だったのだ。ひとりじゃないのね。
それで、私も家族も愉快ならそれでいい。
案外悪くない。
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