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映画「バービー」を観ました(ネタバレあり:2024/4/6追記あり)

映画「バービー」を観て「これは面白い」という感想を抱いたので、そのへんの情報を整理しつつ、感想を適当に述べます。
あんまり体系的に「評論」とかする気のない「感想」ですので、よしなに(免責事項)。


いわゆるネタバレについて

もともとこのへんが「いまツイッターで書くのは無理」だとしたのがここで書くことにした主因です。
普通に映画の内容、あるいはそれが推察できる内容を含みますので、原則、自分で観る予定のあるひとにはおススメしません。ここで止めよう。

事前情報

公開前に自分のアンテナに引っかかったのは、こんな所でした

「2001年宇宙の旅」のパロディのティーザー

半年くらい前に観たのかな?
最初にこの映画に「なんだこれ」とフックを感じた情報です。
幼い少女たちが、それまで手にしていた赤子の人形を、バービー人形の存在で覚醒するなり自分たちで叩き壊すという爆笑の映像。
「攻めてるなあ」とは思ったけど、宣伝用のネタ動画かと思ったら、そのまんま本編のオープニングとして使用されていたのは衝撃でした。

なお日本では映画「バービー」は全年齢ですが、USAではPG13なんで、もともとこの映画の元ネタは知っている…とまでは言いませんが、少なくとも何も知らない子供にはショッキングな映像であることは否定しないのでそのへんは注意。

日本の劇場の予告編

「君たちはなぜ生きるか」で観ました。
いま改めて公式サイトで見返すと「結構、情報量があるね」だったんですが、基本的には「なんだこれ」というか「夢の世界バービーランドから、僕らの現実の世界に来てしまったバービーが酷い目に遭う?」という程度のシニカルな話なのかなぁ、という感じでした。
そういう要素も確かにあったんですが、それだけじゃないというか、そこからさらに凄く面白い展開が待っていて驚かされたというか(ここではまだ触れないでおきます)。

日本公開直前の炎上騒動

まずはその海外での「叩き」の話からなのですが、そもそも自分が最初に強い違和感を感じたのは、このツイートだったんです。

7月19日のマンチェスター(英国)のツイ

自分がコレの存在に気がついたのは日本でも炎上騒動が始まった7月31日なんですが、このツイート自体は時差の関係と思えますが英国やUSAでの双方の映画の公開日(7月21日)から、公開前ないし公開初日から「この映画を叩こう」というムーブメントが明確に発生していたという事実を示していると考えられます。

もとより「バービー」は結構ブラックジョークもあるという予備知識はあった自分は「英国の映画ファンって相変わらずシャレがきついんですね」程度の認識だったんですが(オッペンハイマーは?)、深読みをせず素直に解釈すれば、バービーとオッペンハイマーを並べてゴミ箱に「あなたはどっちの側?」と聞くという行為は、これはどっちの映画もゴミだよな?という意味にしか解釈できませんよね、やはり。

そして日本でも炎上したツイッターでの#Barbenheimerという悪意のあるタグと、直接の起爆剤になった問題のイラスト。※もっと酷いのも多数あるけど

すでに公開前から出回っていたコラ
日本での直接の炎上原因になった、火に油を注いだUSA「バービー」の公開日の公式ツイ

ここからは皆様もご存知の展開だと思いますし、すでに「決着」はついた話なのですが事実関係は

  • この画像は双方の映画の公式でもなんでもないSNSの悪意あるコラ。

  • これをUSAの「バービー」公式が公開日に悪乗りして加担したのが最大の問題(コラ自体は公開前に作成されていたことも分かります)。

  • どこの会社でも「中の人」が馬鹿をやって炎上は、まああるよね。

  • 「バービー」日本公開直前の最悪のタイミングだったこともあり、日本の「バービー」公式がUSA本社の公式に抗議。

  • USA公式は陳謝。やらかした中の人がどうなったかは知らない。

といった所でしょうか。
いずれにせよ、ここで日本では公開前の「バービー」に対して猛烈なバッシングが発生して「こんな映画は観るな」みたいな声もまあ、出ました。

映画「バービー」と「オッペンハイマー」を否定したがる方々

僕自身は、すでにムビチケは買ったし、この日本での騒動を見て「バービー観に行くの止めよ」という気持ちはゼロで、むしろ「これは打ち切られる前に観に行かねば」と思って8/11の公開初日(祝日)に「バービー」を観に行きました。
「オッペンハイマー」はいまもなお日本公開されるかどうかすら怪しいんですけどね…。

2024/4/6追記1)めでたく「オッペンハイマー」はIMAXを含めて大々的に全国で公開されました。もちろん自分も即座に行きました。最高でした。

そして「バービー」の大変に面白い内容と、「オッペンハイマー」についての聞く限りの情報で判断したうえで自分なりに出した現状分析は以下の通りです。

  • このコラ画像はむしろ「よくこれだけ双方の映画のテーマを外してるな」と感心してしまうほどに酷いシロモノだった。

  • まず「マッチョでキリっとしたオッペンハイマーの肩に乗るバービーがへらへら笑っている」基本構図自体が、映画「バービー」では真っ先に否定されているのが誰にでも分かる「マチズモに基づいた男女関係」である。まずこれ自体が、映画「バービー」をちゃんと見ていれば、ありえない。

  • オッペンハイマーは未見だけど、すでに得られている「オッペンハイマーは原爆を開発し日本への投下にも反対しなかったが、その後の広島・長崎の惨事を知って後悔し、今後の使用にも反対するようになったが、それが冷戦下のUSAでアカ(共産主義者)扱いされることになった」という基本情報は知ってます。だからこのポスターのような「イケイケドンドンの原爆ドーン」みたいな画像にすること自体が、映画「オッペンハイマー」をちゃんと見ていれば、ありえない。

2024/4/6追記2)実のところ「オッペンハイマーの原爆に対する姿勢」は今も公開後の日本でもいささかの議論になっていますし、オッペンハイマーの原爆の及ぼす被害についての予見や個人としての男性性というのも映画の重要な要素であることも判明したんですけど、でも基本的に、あれだけ原爆投下による惨禍の予見をわかりやすく否定的に扱っている映画を観てから「しょせんUSAのやつらの本音は日本人なんて原爆で死ねばそれでいいというイケイケ原爆ドーン!で、これはそういう映画」みたいなことを考えるのは、さすがに曲解がすぎないですかねという話。ええもちろん、そういうことを考えるヤツも当時のUSAの政治家に居たのも明白だしそういう主張の保守ウヨが令和の今のUSAにいるのも明白なんですが、でもそれ基本的に「この映画への評価」の話じゃないよね…。

  • つまり二重に「映画をちゃんと観ていればあり得ない」酷いコラ画像なんですよ、これは。

  • でもこのコラを拡散したり、ハッシュタグで悪乗りするようなUSAに大量に居るバカについては「その程度の映画のテーマも読み取れないバカ揃い」と解釈するのは困難で、これはむしろ「それは百も承知。むしろそのテーマを映画ごと否定したい方々」と考えるバカであると考えるのが自然であろうというのが僕の結論なんです。

  • つまりこれは今のUSAにも普通に大量に居るであろう「マチズモを肯定したい」「フェミニズムなんてまっぴら」「女は男に黙って従い奉仕するのが自然な姿だ」「強いアメリカ万歳。もちろん他国への核攻撃はOKだぜ」といったような割と類型的なバカの右翼・保守のアメリカ人による映画への反対ムーブメントであると理解すべきだな、という話です。

これが自分の結論。
だからこのコラ画像を見て日本でも沸騰して「これがアメリカ人の奴らの考えだ」「こんな映画はボイコットしろ」とイキっている方々は、いまいちど冷静に立ち止まって「バカな右翼・保守なんてどこの国にもいるよね?」「ていうか僕ら日本のSNSでもいくらでもいるよね?」と言う事実を認識したうえで「とりあえず映画を観てから批判しませんか」と思う次第なのであるのですよ。

ここまでを踏まえたうえで、映画「バービー」の凄さについてじっくり語りたいので、いよいよネタバレ混みで語りたいと思うわけですが…。

とりあえず最低これだけは言っておくと、映画「バービー」は、これを日本でも嬉々として不快感を表明したり叩きたがる方々が言ったり想像したりしているような「糞フェミどもが男性を踏みつけにして喜ぶ」「田嶋陽子」といったような不快な内容の映画ではありません。この映画の本題はその先なんだけど、映画見ていてそこは読み取れなかったんですか?とだけは言っておきたいのです。

ではいよいよ、この映画「バービー」の話の構造とその意味の凄さについてを語っていきたいと思います。

映画「バービー」の物語の流れ

正確を期するなら何度も見返したりスクリプトを読んでチェックしたりするんでしょうけど、とりあえず初見時の記憶に頼って、つらつらとこの映画「バービー」について、冒頭から話の展開とそこであったことを追っていきつつ気がついたポイントを並べていきたいと思います。抜けはそこそこあると思います。

バービーの誕生(2001年宇宙の旅)

公開前ティーザーの部分が、そのまま映画冒頭で流れます。たしか映画本編のほうがティーザーより映画「2001年宇宙の旅」と同じ尺で延々と赤ちゃん人形を叩き壊していたと思いますが(笑)、基本、同じです。
映画「2001年宇宙の旅」を見ていた人はゲラゲラ笑う部分だと思いますが、何も知らなければ冒頭から「なんだこれ」と戸惑うでしょうし、この映画を否定から入り得るそこそこショッキングな映像であることは否定できません。

いずれにせよこのシーンは、かつてバービー人形は、そのような意味を持ってUSAで誕生し、それは当時「女の子は赤ちゃん人形を愛でるものだ」という母親になるべき価値観を強制された存在から「セクシーな美女」を自らの憧れにして良いのだという価値観への転換を示すものであるとは言えるでしょう。まあ「フェミニズムの誕生」と言えるのかもしれません。
いずれにせよ、この映画はそのことの是非より前に、それをひっくり返すことから物語が始まるのですけどね…。

理想のバービーランド

そしてオープニングタイトルから本編へ。
ここで主人公の「バービー」が、イキイキとしたバービーランドで朝を迎え、その楽しいだけの1日を紹介する形で、舞台であるバービーランドの説明を余すところなく行います。この流れがうまい。

  • 「主人公は白人・金髪・完璧なプロポーションのオリジナルバービー」(演:マーゴット・ロビー)

  • 「もちろん主人公以外の女の子も、みんなバービー!」

  • 「色々な人種や職業やらのバービーが」(ここで商品化されたバービーについての無数の小ネタ)

  • 「でもどのバービーも、みんなイキイキして、バービーランドでは大統領や科学者も、みんなバービーである女性社会!」

  • 「そして男の子は、みんなケン!」

  • 「いろいろなタイプのケンがいるけど」(ここでも無数の小ネタ)

  • 「男の子には1人だけアランがいるよ」(商品化ネタ)

  • 「でもどのケンもアランも、どのバービーにもいつも『ハーイ』と笑いかけてくれるだけのかっこいいナイスガイだよ!」

  • 「いちおう、主人公バービーと、よりお近づきになりたげな金髪男子のケンがいるよ!」(演:ライアン・ゴスリング)

  • 「でもケンたちは主人公バービーを巡って争ったりなんかしないよ!」

  • 「主人公バービーは特定のケンとステディな関係にはならないんだよ!」

  • 「ていうか、どのバービーにもケンにも性器がないんだよ!お人形だからね!」

という「理想郷」としてのバービーランドが描かれるわけですが、商品についての小ネタの連発にくすくす笑いつつ、あからさまに不自然な笑顔だけが溢れるバービーランドと、そんななかで主人公バービーが一瞬「死」のことを考えてしまった瞬間に、世界のすべてが暗転して一時停止してしまって慌ててその考えを否定するという、それは実はディストピアである、あるいはこれから崩壊する世界だということが誰にでも分かる演出で、主人公バービーはベッドに入って幸福な1日目が終わります。

バービーランドの亀裂

主人公バービーは翌朝、ベッドで目覚めるなりこれまでと同じハッピーな朝から始まるハッピーな1日を過ごそうとしたのですが、どうも周囲のものがいろいろとダメになっていてさんざんな朝を迎え、自身の身体にも異変が起こります。
それから色々あったうえで(省略)、どうもこの異変は「主人公バービーのもとの持ち主の、いまの不安な心が反映されているようだ」という話になり、主人公バービーがもとに戻るには、人間界に行ってその持ち主を探し出して、その不安を取り除いてやることだ」ということになりました。

バービー、人間界に行く

そしてバービーはただちに人間界に行くことにしました。この「バービーランドと人間界の間を移動する」のシーンは大変に面白いのですが、ストーリーには無関係でしょうから端折ります。ぜひ映画で!

そしてバービーが人間界に出発した自動車には、後部座席にケンがこっそり潜り込んでいました。バービーとお近づきになりたいというよりは、人間界に興味があったようです。
別に呼んでないんだけど「帰れ」とも言わず、バービーとケンは人間界へ。
いよいよここからが、この映画の本題です。

(つづく…と思う)(つづかない)

(2023/11/6追記)(2024/4/6追記)書きたいことは書いたから、もうこれでいいや。あとは自分でラストまでちゃんと見て。しかし「オッペンハイマー」がどうやら日本で公開しそうにないというのは、驚いたな…。


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