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楽曲『KAGAYAKI』の話をしよう

いつだったか友人に「作った人の話を聞くのは面白い」とご意見いただいたので、今年の楽曲『KAGAYAKI』について思いつきを書いてみようと思う。僕は自分の曲を語るのは好きだけど、反面、作者自身が「こう言っている」が正解みたいになるのは本意ではなくて。この歌を聴いた人が「こう思った」「こう感じた」みたいなことを喋ってもらう方が、その歌に広がりが生まれると考えているから。

なので、作者が語る「1つの側面」くらいの気持ちで読んでくれると助かります。どうぞ。


夕暮れ過ぎは朧げで 迷い走り眠り過ぎていく歳月
どうしょうもないほど劣等感を抱いて抜け出せぬ咎人
そんなんじゃいけない絶対 絶対なんかは空想論
「でもだって」と現実逃避 現実逃避でどうすりゃいい
小さな祈り 儚い祈り
舞い降りた再現性のない世界で
孤独に打ち震えながら
突破できない困難も あなととならば 喜び合える

暁を包む風 笑いはしゃぎ踊り過ぎてく日々
当たり前じゃない
一瞬一瞬がかけがえのない輝き
手を取り合って 今すぐに
際限のないやさしさをあなたにも伝えたいから
いつでも名前を呼んで

去年からサビが2つある歌を始めた

よさこい祭りで使われる楽曲の多くは最後サビが1つあって、それに至るインスト曲が続く、という形式です。途中か冒頭か最後か、どこかによさこい節やよさこい鳴子踊りが入るのがよさこい祭りのルールですけど、それを抜きにしても『特殊な形式』の楽曲がよさこいチームでは重宝されます。いわゆる”ストーリー性のある楽曲”が要求されるわけです。
で、それはよさこい的であるが故に世間一般に流れているポップスからすると変わった構成の曲になります。普通のリスナーはAメロがあってサビがあって、1番と2番がある歌を聴いているじゃないですか。

「初見さんをちゃんと受け入れる」というチームの理念を思うに、曲の形式を一般的なポップスに寄せてみたらどうなるかな?という実験をやってみたのが去年。セーニョマークをロゴデザインにしたのは、セーニョってとかAメロに戻ることが多いからっていう意味も裏テーマとしてあったんですよね。

(あとサビ2回の振付が一緒だったら踊りが楽だなぁみたいなスケベ心もあったんですがそうはならなかった笑)

『KAGAYAKI』はチームジングル(チャララランっていうオルゴールの音)が2回登場します。気がつきましたか?
イントロと1サビ後にチームジングルが鳴ります。これは単純に「ここが1番と2番の境目だよ」という意味でもあるんですが、、、、

話は2014年にさかのぼります。


表裏の関係

2014年の楽曲『風は歌う』は2曲目の同年『Another Story』と表裏になっているんですが、『KAGAYAKI』も同様に1番と2番が表裏の関係になっているんです。

(1)
夕暮れ過ぎは朧げで 迷い走り眠り過ぎていく歳月
どうしょうもないほど劣等感を抱いて抜け出せぬ咎人
そんなんじゃいけない絶対 絶対なんかは空想論
「でもだって」と現実逃避 現実逃避でどうすりゃいい

(2)
暁を包む風 笑いはしゃぎ踊り過ぎてく日々
当たり前じゃない
一瞬一瞬がかけがえのない輝き

1番の情景描写は夕暮れ、2番は暁(夜明けのこと)で、夜を通過して2番になった。つまり「ちゃんと寝たら元気になるよ!」みたいな?いやそんなことは作った時は考えてなかったんですけど、、、、
要するに1番から2番に移る、ネガティブからポジティブに転換する瞬間をチームジングルで表現した。それすなわち「ひとひらで元気になって」という意味を含ませたんですよね。

ひとひらの楽曲や歌は’ひとひらシステム’というものがあるので「似て非なるもの」を両立させなきゃいけない、という技術的な視点をもって作ってます。暗い世界観の歌ができたら他方底抜けに明るい曲を用意しなきゃいけない。今年の『KAGAYAKI』はそれを1曲の中に詰め込んだ、というのが一番のコンセプトですね。


「乗り越えられる」が普通なんだろうけど

1サビの最後のフレーズは「喜びあえる」になったんですが、西野ちゃん(ボーカル)と作詞していて僕が感じたのは「『突破できない困難』って、本当にどうしようもないことだよな」ってことでした。たとえば障害をもって生まれてきたとか、突然の事故で不自由になったとか、不治の病を患ったとか。それって、心理的には乗り越えられるかもしれないけど、現実としては乗り越えられない問題だったりするでしょ。
だから、”乗り越えられる”はちょっと誇張だし傲慢だと思ったんです。そうじゃなくて一緒に並走する、手を繋いで歩く方がやさしさだし、そうすることで楽しければ人生は悪くないだろう。ということで「喜びあえる」にしました。
これはチーム理念にも重なっていて、踊り子さんが抱えているタスクや問題について、一緒に頑張りたいっていう気持ちを表現しています。まぁ踊りは頑張れば”乗り越えられる”だと思うんですが、そうでない問題も、あるじゃないですか。どうであれ、チームにいる時は一緒に楽しく、集まれる喜びを分かち合いたいという願いは、ずっとありますね。


当たり前じゃない

タイトルである『KAGAYAKI』は歌詞に登場する「一瞬一瞬がかけがえのない輝き」から取りました。タイトルは正直かなり悩みましたが、このインタビューで心が決まりました。

難しいお願いになってしまうかもしれませんが、どうか騎手として輝いていた康太を忘れないでやってください。そして、輝いていたたくさんの瞬間を時々でも思い出していただけたら。そうやってみなさんの心のなかで生き続けてくれたら、兄としてこれ以上うれしいことはありません。(藤岡佑介)

僕は競馬ファンなんですが、悲しい落馬事故で弟を亡くした兄のメッセージの一節にも輝きという言葉が選ばれていました。
そうだよな、人には輝いている瞬間がある。輝いている瞬間を作らなきゃいけないから、僕もチームを続けたいって思っているよな。ということで、当初はあまり意識してなかった歌詞だったけど、思い直して『KAGAYAKI』にしました。

ご存知かどうか、我々チームでも辛い交通事故があったりして、こうしてチームに集まること自体がとても貴重で大事な瞬間だと日々感じているんです。そういうこともあって「交通安全!」とかいって光る缶バッジを作ったんですが、やっぱり少しでもそういう不幸なことがないように現実的にやれることはやっておきたいなという背景もあってのグッズでした。

ガチャしてくださいね!

一つの曲にも様々な想いや願いが詰まっていますね。ひとひらってそういうチームです、初見さんはじめまして!
ということで要望があれば楽曲について語るはいくらでもやりますので、またの機会に。音楽プロデューサーの西岡良治こと牛心。でした。



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