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映画「17歳の瞳に映る世界」

『旅路』

 その場所がペンシルベニアでもニューヨークでも彼女たちの瞳に映る世界は変わらない。世界中のどこであっても。

 長距離バスと地下鉄。どうなるのかと、手汗を掻いて観る人もそこにいるような圧倒的臨場感。緊張、不安、屈辱、恐怖、絶望の中でオータムは若い女の自分を否応なしに知らされていく。
 こんなに危うい長い夜はないけれど、朝を向かえても暗く紛れもなく痛い現実が突き刺さる。

 少女たちが声を出せない分、際立つカウンセラーとのセッション。
 少女たちの悲しみの行先がない分、あまりにも愛しい繋がれた小指。

 苦しみの底で少女が選択した生きる術を受け止めてくれたのは、知らない大人の女性たち。もう会うことはないがオータムの記憶に刻まれる人たち。

 切ない温もりはスカイラーと一緒に頬張るお菓子と、ヘアゴムとコンシーラー、手術の後の甘いパン。

 辛かったね…。
 泣きじゃくっていい、怒っていい。

 なかったことにすると傷が癒えない。
 時は解決してくれない。
 消せない。

「一度もない、めったにない、時々、いつも」
 なかったことにしないために、偽りのない言葉だ。


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