『幕』 自我が重い幕を下ろした傷に、自己は粘り強く諦めずに傷を見ろ、という。 脚本、稽古、舞台、ドライブ、が刺繡をするように丁寧に幾重にも織り上げられ、記憶の幕を開けていく。見事だ。 車から宙に突き出た2つの手と、2本の煙草の灯火は静かで尊い。けむりは過去を弔うかのように夜の空にほどけていく。 白い雪の中を赤い車が走って行く。それは血のように鮮やかで、真っすぐな生命のようだ。 自己は『ワーニャ伯父さん』のようにつらかったことを認めることを最初から知っていた
『旅路』 その場所がペンシルベニアでもニューヨークでも彼女たちの瞳に映る世界は変わらない。世界中のどこであっても。 長距離バスと地下鉄。どうなるのかと、手汗を掻いて観る人もそこにいるような圧倒的臨場感。緊張、不安、屈辱、恐怖、絶望の中でオータムは若い女の自分を否応なしに知らされていく。 こんなに危うい長い夜はないけれど、朝を向かえても暗く紛れもなく痛い現実が突き刺さる。 少女たちが声を出せない分、際立つカウンセラーとのセッション。 少女たちの悲しみの行先がない