2023年に読んで心に残った本TOP10 Part2
前回に引き続き、2023年に私が読んだ本の中で、特に心に残った作品、TOP5の発表です!
どの作品も本当におすすめですので、ぜひ選書の参考にしてください!
皆さまが今年も素敵な本にたくさん出会えますように
No.5 ザリガニの鳴くところ Where the Crawdads Sing(早川書房)
ディーリア・オーエンズ(著) 友廣 純(訳)
主人公のカイアには素敵な母親と兄弟がいた。しかし父親の暴力のせいで母が家を出てしまい、彼女を追うように兄弟もいなくなってしまい、6歳の時に遂に父親も彼女を置いていなくなってしまう。
貧困地帯である湿地で育ったカイアは「湿地の少女」と言われ、町の人に蔑まれていた。親もお金もなく、いつ死んでもおかしくない状況の中、カイアはお店を営む黒人夫婦と、初恋の少年の助けを得て、たくましく、そして美しい女性に成長した。
そんなある日、湿地である青年の死体が見つかる。青年の名前はチェイス。町でも有名な裕福な家の息子で、プレイボーイとしても悪名高い青年だが、チェイスとカイアにはあるつながりがあり、そのせいでカイアは容疑者として捕まってしまう。
果たしてカイアは本当にチェイスを殺したのか。それとも、、、、。
家族との別れ、カイアと初恋の少年との切ない恋、チェイスとの出会い。
常に孤独と背中合わせのカイアの人生に心苦しくなりながら読んでいましたが、最後に真実が明らかになったときは、かなりの衝撃を受けました。
映画を見てない人は、ぜひ原作を先に読むことをお勧めします。
No.4 絞め殺しの樹(小学館)
河﨑 秋子 (著)
結構インパクトのある題名ですが、内容はそんな題名を上回る重ーいお話です。
舞台は北海道 根室。
幼い頃母親を亡くしたミサエは、祖母の知り合いである吉岡家に引き取られます。元屯田兵であることを家の誇りとしている吉岡家でミサエは召使のように毎日毎日ボロ雑巾のようにこき使われます。
吉岡家には定期的に訪れる薬屋がいるのですが、頭の賢いミサエは薬屋に見込まれ、札幌で薬屋で奉公することになり、やっとで地獄のような生活から解放されます。
もともと勉強が好きなミサエは、保健婦になりますが、命の恩人でもある薬屋の頼みで再び根室に戻ることになります。
大人になったミサエは前のように吉岡家に虐げられることはありませんでしたが、吉岡家の紹介で出会った男性と結婚することによって、新たな苦難を迎えることになります。
この本は2部構成になっており、1部はミサエ目線。2部はミサエの息子目線です。
1部はとにかくミサエの苦労話で重くて辛いです。
特にミサエが結婚し子供を授かってからの苦難は、子がいる者が読んだらかなり胸が苦しくなる内容ですので要注意です。
一方、2部は、そんなミサエの息子が大学を卒業し社会に出ようとしているところまでが描かれていますが、こちらは希望が持てる内容でした。
ある意味ミサエは自分がかわいそうで哀れな人間だと思われていることを受け入れ、厳しく言えば”悲劇のヒロイン”でいることを自分に許しているように見える節があるのですが、息子は、自分を哀れむことなく、前向きに生きています。
決して幸せな子供時代を送っていない、という点では、差はあれ、母であるミサエと変わらないのですが、自分の人生を受け身で生きるミサエと、積極的に自分の将来を築いていこうとする息子の人生は対照的で、そんな息子の生き方からは学ぶものがあります。
No.3 すべて真夜中の恋人たち(講談社文庫)
川上 未映子(著)
新聞の記事で「全米批評家協会賞 小説部門ノミネート」という記事を読み、世界で評価された本作に興味を持ったのがこの本との出会いでした。
校閲の仕事をしている冬子と50代の男性、三束の恋愛物語。
いつも気配を隠し人とのつながりもなるべく持たないように生きてきた冬子はカルチャーセンターで三束という年上の男性と出会う。
学校の教師をしているという三束と少しずつ距離を縮めていく冬子だが、過去の男性とのトラウマなどもあり、なかなか結ばれない2人。
さらに二人にはそれぞれ秘密があった、、、。
キラキラした恋愛ではなく、どこか痛々しさを感じる冬子と三束の恋をとても美しく描き、一気読みでした。
私には恋愛小説は面白くないという思い込みがありましたが、この本と出会い、そんな偏見が吹っ飛びました。
(ちなみに、TOP3は全て恋愛をテーマにした本です。そういう意味ではこの本が私に与えた影響は全ての本の中でNo1です)
No.2 月の満ち欠け(岩波書店)
佐藤 正午(著)
映画化もされた名作。
主人公の小山内堅は、15年前に娘と妻を交通事故で亡くし、今は荒谷清美と言う女性と、彼女の連れ子と暮らしています。新しい彼女が出来たとはいえ、最愛の妻と娘をなくした堅の心は暗く沈んだままでした。
そんなある日、堅のもとに、三角哲彦という男性が訪ねてきます。
そして彼は堅にとても信じられないことを言いました。
それは、亡くなった娘は、かつで哲彦が愛していた女性の生まれ変わりだ、
ということでした。
三角哲彦が愛した不運な女性、正木瑠璃。
彼女は人妻でした。しかし結婚生活はモラハラ夫のせいで、幸せとは遠くかけ離れたものでした。そんな時に彼女が出会ったのが大学生の三角哲彦。彼女をありのまま受け止め愛してくれた哲彦を誰よりも大切に思っていた瑠璃でしたが、彼女は事故で亡くなってしまいます。
本当に瑠璃は哲彦に会うために生まれ変わったのか?
一途に一人の人を愛する強い気持ちに感動間違いなしです。
No.1 汝、星のごとく(講談社)
凪良 ゆう(著)
2023年ダントツで1番感動した本でした。
瀬戸内の小さな島で出会った高校生、青埜櫂と井上暁海。
櫂には母親がおり、その母親は男性に依存して、子供より男を優先しネグレクトもしてしまう、今で言う毒親。
暁海は父親が不倫し家を出ていき、そのせいで母親は心を病んでしまいます。
お互い大人の嫌な面を見て育った二人は出会ってすぐに惹かれあいます。
高校を卒業し、櫂は漫画原作者として成功し上京します。
一方暁海は情緒不安定な母親を一人にすることが出来ず、島に残り就職。
漫画家として成功し裕福な生活を送る櫂と、高卒で収入も高くはなく、かつ母親の奇行のせいで生活が苦しくなる暁海の遠距離恋愛は、どんどんすれ違い、強く愛し合っているはずなのに2人の心の距離も遠く離れていきます。
ここまで書くと典型的な悲劇物語のように見えますが、この本の素晴らしい所は、櫂と暁海の周りの登場人物たちのキャラクター設定です。櫂と暁海の母親ですらどこか愛おしく感じる描写。そして櫂の仕事のパートナーや二人の高校時代の先生など、周りの登場人物にもそれぞれのドラマがあり、それがこの本をより深く感動的な内容にしています。
恋愛ものはあまり好きじゃない、と思っている人にも是非読んでほしい名作です。私はこの本を読んだ後しばらく2人のことが頭から離れずかなり長い間余韻に浸っていました。
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