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映画を英語でレビュー#36 英国王のスピーチ The King's Speech (2010)

エリザベス女王のお父様の映画

ジョージ6世と言語療法士の友情

この映画の主人公はジョージ6世。英国で非常に人気の高いエリザベス女王のお父様です。ちなみに幼いエリザベスはこの映画で何度か登場しますが、長女らしいしっかりとした女の子な雰囲気が、さすが時期女王、という感じでした。

映画は王になる前のアルバート王子(ジョージ6世)が大英帝国博覧会閉会式で、国王代理でスピーチするところから始まります。吃音に悩まされているアルバート王子は、まともスピーチをすることができません。そんな夫を優しく見守る妻のエリザベス。何とか夫を助けたいと、エリザベスは、オーストラリア出身の言語聴覚士、ライオネルを訪ねます。

ここから、アルバート王子とライオネルの二人三脚の治療/訓練が始まります。生まれつきの吃音はいない、と言うライオネルは、アルバート王子に、お互いの呼び方から全てを対等にして、彼の心の声を聞こうとしますが、ロイヤルファミリーとしてのプライドがあるアルバート王子はなかなか心を開きません。

そして、国王である父ジョージ5世が崩御します。次期国王は兄であるデイヴィッドですが、彼は、離婚歴があるアメリカ人の女性と付き合っており、しかも彼女はまだ2番目の夫と婚姻関係にあり、とても不安定な状態。
(この「アメリカ人で離婚歴がある」っていうところが、ヘンリー王子の妻、メーガンを思い出させてちょっとクスッとしちゃいました。歴史は繰り返すのですね)

父を亡くしたアルバート王子は、ついにライオネルに、子供の頃の苦しい思い出を語ります。乳母による虐待や、左利きから右利きへの矯正など、隠していた悲しみをライオネルに打ち明けることによって、2人には友情が芽生えます。

一方、国王になった兄エドワード8世は、国務そっちのけで、愛する女性の尻に敷かれてやりたい放題。結局国王は離婚歴のある女性とは結婚できないと言われ、エドワード8世は退位します。結果、アルバート王子は国王になります。(ヒトラーが勢力を強めていたこの時期、アルバートはドイツっぽ過ぎるということで、「ジョージ6世」になりました。)

なりたくないのに国王になってしまったジョージ6世。そして時は第2次世界大戦直前。よりによって国が危機に瀕しているというとても難しい時期に国王になったジョージ6世。そして、とうとう第2次世界大戦がはじまります。国王の大事な職務の一つが、国民へのスピーチです。しかも今回は、世界大戦がはじまるその日に、国民に向けて鼓舞するという重要なスピーチです。そしてそれは、吃音のジョージ6世にとって一番難しい仕事です。
紆余曲折を経て絆を深めたライオネルと共に、ジョージ6世は歴史に残るスピーチをするシーンは、こっちまで緊張するほどのリアルさです。

 

子供の頃のトラウマ

劇中でジョージ6世は、家族で一番親しい人は乳母だと言っていました。(最初の乳母は虐待していたので、彼女以外の乳母だと思われます)
以前ダイアナ妃が王室の慣習に逆らって、ウィリアム王子とヘンリー王子を自分の手で育てたことが話題になりましたが、王室では、母親ではなく乳母が子育てをします。実の母親と一緒に住んでいるのに、一緒に過ごす時間が短い、というのは、子供心にどのような影響を与えたのか。
また、ジョージ6世は左利きやX脚を矯正させられた、と語っていました。

最近は左利きでも矯正することは少ないのではないかと思いますが、日本でも以前は左利きを右利きに矯正していたみたいですね。私の祖母世代は、やはり右利きではないといけないという考えがあるようです。

ありのままの自分ではなく、周りが思う「あるべき姿」に矯正させられるのは、自我を否定されたようで、その苦しみは大人になっても影響を与える、ということをこの映画は私に教えてくれました。

英国俳優とオーストラリア俳優

タイトルを見れば明らかですが、この映画のキャストはほとんどがイギリス俳優です。そして私の偏見かもしれませんが、英国俳優は基本皆クオリティが高いです。それはやはり、イギリスはシェイクスピアの国でもあり、また、役者は舞台で鍛えられるからだと思います。

私はアメリカ留学時代演劇のクラスを専攻していたので、舞台ももちろん経験しました(裏方ですが)。やはり舞台は、やり直しがきかない、また観客の反応がストレートに伝わってくる、という意味で、とても難しいです。
また、舞台はごまかしがきかないので、演技力を磨かざる負えません。
なので、舞台で鍛えられら役者は、とても演技が上手だと思っています。

そんな舞台の国、イギリスから
コリン・ファース(「ブリジット・ジョーンズの日記」の頃からファンです)
ヘレナ・ボナム・カーター(イギリスを代表する女優で、よくティム・バートン監督の作品に出てました)
マイケル・ガンボン(「ハリー・ポッター」シリーズのダンブルドア校長)
など、日本でも有名な役者が出ています。

そして、オーストラリア出身のライオネルを演じたのは、オーストラリアを代表する名優、ジェフリー・ラッシュです。
私は彼が大好きです!特徴的な顔をしているのですが、彼はどの作品でも、演技をしているの忘れるくらい、いつも自然なのです。お勧めの作品は、ちょっと古いですが、「恋に落ちたシェイクスピア」です。

もう一人、オーストラリアから、名優が出ています。
それが、頼りない兄エドワード8世を演じた、ガイ・ピアースです。
私が最初に彼を知ったのは、ノーラン監督の「メメント」です。
ラストから物語が始まり時間を巻き戻すという斬新な設定で、当時衝撃を受けました。
その頃はまだ二枚目俳優程度の認識でしたが、その後も話題作に出続け、今はかなり個性派俳優になった印象です。

国旗を見れば分かるとおり、オーストラリアは昔イギリスの植民地でした。かつて支配されていた国の出身の役者が、英国王のエドワード8世と、次の国王ジョージ6世を陰で支えた言語療法士を演じているというのは、なかなか興味深い配役だな、って思いました。


イギリス英語とアメリカの英語で違う単語

イギリスとアメリカは同じ英語を話すのですが、両国の英語はかなり違います。私はアメリカに留学していましたし、今の日本の学校の英語はアメリカ英語なので、アメリカ英語は理解できるのですが、イギリス英語は正直、難しいです。

以前イギリス人の英語の先生と親しくなり、イギリス英語について教えてもらったことがありました。

まず、イギリスとアメリカでは使う単語が全く違うものが結構あるんです。
なので、今回は少しだけそれらの単語を紹介したいと思います!

「フライドポテト」 (米)french fries (英)chips
「ポテトチップ」 (米)potato chips (英)crisps
「ゴミ箱」  (米)garbage can (英)dustbin
「ごみ」  (米)garbage/trash (英)rubbish
「ガソリン」 (米)gasoline/gas (英)petrol
「ガソリンスタンド」 (米)gas station (英)petrol station
「映画」 (米)movie (英)film
「映画館」 (米)(movie) theater (英)cinema
「サッカー」  (米)soccer (英)football
*サッカーが国民的スポーツであるイギリス人にsoccerと言うと、めっ    ちゃ笑われるか、下手すると怒られるので要注意です!(私は何度もやらかしました、、、)

などなど、他にもたくさんあるので、興味がある人は調べてみてください。
また、イギリス留学を考えている人は、これらの違いを意識して、イギリス英語を勉強することを強くお勧めします。
私のイギリス人の友人は、冗談でよくアメリカ英語は偽物だ、なんて言っていましたが、やはり、英国のプライドはあると思いますので、アメリカ英語ではなく、イギリス英語を話せた方がかわいがられると思います。


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