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【代表×クリエイティブチーム】ひとはなコンサルティングのリブランディング対談 / プロセス編 (前編)

2023年で5期目となる節目に、リブランディングを行ったひとはなコンサルティング。そのリブランディングを手掛けられたクリエイティブディレクターの森田賢吾さんと、コピーライターの塩谷泉太さんとともに、今回のリブランディングプロジェクトを振り返りました。

前編は【プロセス編】。リブランディングを行うことになったきっかけやそ
の経緯、それぞれの考えや想いをお伝えします。

ひとはなってこういう会社、という人格をつくりたかった


田中:
まずはあらためて、今回はありがとうございました。森田さんには共通の知り合いを通じてお会いしまして。それからもうすぐ1年くらいですね。私が会社のロゴを新しくしようとしていることをお客さんの一人に話したら「知り合いにデザイナーさんがいるから紹介しますよ」と。

ひとはなコンサルティング代表 / 田中 祥一郎


森田:
それで、顔合わせの場が食事の席だったんですよね。そのとき、なんかこういう感じって減ってたよなと思ったのを覚えています。コロナ禍で実際に会うことなく終わるプロジェクトもあるなかで、始めのタイミングからざっくばらんに話せたのは大きかったですし、思い返せば、あのときから話すことを大切にしている田中さんの人となりを実感していた気がします。

Hi! Design クリエイティブディレクター / 森田 賢吾さん

田中:そのときに森田さんの手がけられた仕事をいろいろ見せてもらって、すごいなと。特に酒井商会さんのロゴがとても印象的で、それが森田さんにお願いする決め手だったかもしれないです。あと、最初はロゴの刷新以外のイメージは持っていなかったんです。けど森田さんと話すうちにブランド自体を見直すことの意味も見えてきて。

森田:これからどうしていきたいですか?といったことを聞いたとき、社員さんも増えていく中で“会社の人格”をつくっていきたいというお話をいただいたんです。

田中:
そうですね。それまでは“会社の人格 = 田中”だったんです。つまり私自身への信頼でお仕事をいただくことが多かった。でも「田中さんだから頼む」ではなく「ひとはなだから頼みたい」とならないといけないと思って“会社の人格”をつくることを大切にしたいと考えたんです。企業名にも込めている“人と話す”という人格をより際立たせるというか。
そうすれば、顧客への営業訪問や採用などの場面で「ひとはなってこういう会社なんですよ」ということがとても話しやすくなるので。

森田:そのお話を聞いて、ロゴだけをつくるより、その元になる言葉から考える必要があると思ったんです。それで塩谷さんに入ってもらって、後日ヒアリングする場を設けまして。
ただ、その時点で田中さんはすでにミッション/ビジョン/バリューを考えられていて、ヒアリング後に塩谷さんと「めちゃくちゃ整理されてるんだけど…」と話したのを覚えてます(笑)

塩谷:そうでしたね。すでに会社のあるべき姿について丁寧に考えられていたのと、話すこと、つまり言葉を大切にされている方であることがとてもよく伝わってきたので、これは頑張らないとと(笑)

THING コピーライター / 塩谷 泉太さん


森田:
ただ整理はできているものの、それがお客さんや社員さんに伝わるものになっているかというと見直す必要はありました。なのでまずはやはり会社の核となる言葉を整理して、そのうえでインナー用のツールからWebサイト、名刺などのアウター用のツールまで一気通貫したひとはなという人格をつくり、みんなに伝わるかたちにしていこうと思ったんです。
とはいえ田中さんの中で言葉や考えがしっかりとあったので、やりやすい反面、それを越えねばというプレッシャーはあったかもしれないですね。でもたしか一回目の提案のときに「さすがプロですね」みたいな言葉をいただいて。結構委ねてくれる部分が多いこともわかったし、それが燃える部分にもなった気がします。


自分の想いの“解釈”としてのデザインやコピー


ひとはなコンサルティングのタグライン

塩谷:最初の提案ではまず、どういった言葉をつくっていくか、の整理のお話をしたんですよね。「ミッションとビジョンは刷新しましょう。でもバリューはあえて言葉で規定しなくてもよいかもしれません。個々のメンバーが獲得する強みを価値にしましょう」みたいなかたちで。
そしてその提案の冒頭で今回のリブランディングプロジェクトの合言葉をつくりましょうと提案したのが「もっと話す」と「もっと開く」というふたつの言葉でした。それが結果として「もっと話す。もっと開く。」というタグラインになったんですが。今思い返せば、これが田中さんとお話しして、ひとはなの人格についてうかがった一番の印象だったんだと思います。

森田:タグラインもいくつか考えてもらったんですけど「これじゃん!!」ってね。

塩谷:なりましたね。すでにあった、っていう(笑)

田中:今回、ロゴも言葉もつくったのはもちろんお二人ですけど、私はそのデザインやコピーライティングのネタになるものをどれだけ出せるかを考えていました。そしてそれをかたちにしてもらったわけですけど「なるほどこういう解釈なのか」と。自分が伝えた想いからこんなことになるのか。「すごいじゃん」と(笑)驚きを持って受け取ることが多かったですね。

塩谷:“解釈”というのは本当にそのとおりで、僕は田中さんから聞いたお話や受けた印象をどれだけうまく翻訳できるかを考えていて、今回はそれがとてもよくできたケースだと思います。

森田:ブランドという言葉って、自分の家畜と他人の家畜を差別化するために焼印を押す「Burned」が語源になっているんですけど、僕はそうした差別化や価値を高める活動がブランディングだと思っていて。ただ、強みや人格って他者と差別化しようと思ったときになかなか見出せないことも多いんです。でも今回はひとはなという名前も含めて田中さんの中にしっかりと答えがあったので、あとはそれを伝わりやすく翻訳してあげるだけという状態で。そこが難しいところではあるのですが、言葉もデザインも比較的スムーズに導き出せた気がしますね。


ひとはなでしか表せないかたちの探求


森田:
田中さんとの会話からはいわゆる“コンサルティング”という印象を受けなかったんです。「話す」や「楽しい」といったキーワードが多くて、「硬くて頼みにくい」みたいな印象は一切なかった。なのでタグラインにもしたように、コンサルティングという仕事自体が開かれた存在になっていくような、ロゴや世界観にはそんな親しみを込められたらと思いました。
ただ、とはいえコンサルティングなので、砕けすぎず信頼感もありつつ、でもちゃんと開けているみたいな、ちょうどいいバランスを目指しました。

田中:たくさん検証いただいて、案も結構つくっていただきましたよね。

森田:コンサルティング会社のロゴを比較・検証した上でどのあたりを狙っていくかを踏まえて、3案のロゴとその展開を提案しました。検証をする中で考えたことは、独自性の強調や社内の意思統一をする意味でもマークはあったほうがよいとか、ひらがな表記は開けた感じはするけどコンサルというより施設のロゴみたいに見える懸念があるとか。ボツ案も含めいろいろ検証しましたね。

ロゴのボツ案の一部

田中:お花のマークだと本当にお花屋さんのマークになってしまうとかね。

森田:それで案としては今のロゴの元となるものを選んでいただいたんですが、田中さんがけっこうこのマークの形状にこだわっていたんですよね。いろいろと検証した記憶があります。

田中:“花”という漢字に見えることにこだわっていたんだと思います。このマークは“Hito”のアルファベットを組み合わせてつくられていますが、漢字にもアルファベットにもどちらにもちゃんと読めることを意識していました。

マークとロゴタイプの検証過程

塩谷:このマークの吹き出しの形状は、ひとはならしさをとても見事に表しているし、吹き出しというモチーフはWebサイトやパンフレットなど、あらゆる場面で象徴的に扱われていますよね。ミッションやビジョンの考え方を表したイラストの吹き出しの花の絵もすごく印象的ですし。デザインやイラストの力が、“ひとはならしさ”の世界観を非常にうまく高めていると感じました。

多くの検証を重ねて完成したロゴ


リスペクトがあるからこそ生まれる仕事


田中:
デザインもコピーも私がこだわった部分もありますが、きっとプロにお任せしたほうがよい部分というか、やはり餅は餅屋なので。みなさんの目を通してかたちになってきたものを受け取って、それが自分にとってよいのかもうちょっと違う想いを乗せたいのかというかたちで接していた気がします。

森田:それを聞いてあらためて思ったんですが、ビジョンの「リスペクトできる人でいっぱいの未来へ。」という言葉や、バリューをあえて定めずに個々の価値や強みを大切にしてほしいという想いを込めたことなどは、わりと今の話と通じる気がしました。そういえば今回のリブランディングもそういう感じで進めさせてもらえていたなって。なのでけっこう言葉の部分が言い当てているんじゃないかと思いました。

塩谷:たしかにそうですね。嬉しい答え合わせができた気がします。思えば提案に対するフィードバックも、そうした観点で意見してくれていたんだなと思います。感覚的ではなく、けど伝えたい意志を明示してくれて、やるべきことが明確で毎回着実にフォーカスが合っていく感じが心地よかったですね。

森田:きっと共創する感覚をお持ちなんだと思いました。僕も今それを大事にしているんですが、田中さんの“仲間になるために話をしている感じ”がとってもいいなと思っていて。いわゆるクライアントと受注者が向き合うやりとりではなく、同じプロジェクトをともにして同じゴールを見ているというか、そういった共創関係をきっと大事にされているんじゃないかと。今回は田中さんも塩谷さんも含めてそういう仕事の仕方ができたのがよかったと思いますね。


後編へ続く


プロフィール


田中 祥一郎
金融業界や通信業界を中心に一貫してIT業界のシステム開発、プロジェクトマネジメント業務に従事。国内SIer、大手コンサルティングファームの経験を経て2019年1月より独立。自身の強みである「人と話すこと」「腹を割って顧客と話すこと」を経営理念の中核として、同年4月に合同会社ひとはなコンサルティングを設立。中小企業診断士、日本パートナーCFO協会認定パートナーCFO。

森田 賢吾さん
Hi! Design クリエイティブディレクター / アートディレクター / グラフィックデザイナー。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。大貫デザイン、デザインによるブランディングの会社 博報堂デザインを経て、2016年デザインユニットknot設立。2023年ブランディングをメインとするデザイン会社 Hi! Designを設立。NY ADC / D&AD / ONE SHOW / グッドデザイン賞など国内外の賞を多数受賞。

塩谷 泉太さん
THING コピーライター。日本デザインセンター、サイバーエージェントを経て、現在はTikTokのシニアコピーライターとしてByteDanceに在籍。フリーランスのコピーライターとしても活動し、ブランディングや商品開発に携わる。



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