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人事制度は運用が大事と言われるわけ


従業員にとって人事制度の運用とは?

 人事制度を導入するとその制度を活用していくわけですがその場面をまずは従業員の目線から整理してみたいと思います。一番最初の接点は採用になります。これは新入社員、中途入社関わらず。企業によっては採用プロセスの中で人事制度について説明の機会を設けたり、会社説明の資料に盛り込んでいたりします。オファーを受ける際には等級(グレード)と併せて役職・月例給・賞与・理論年収などが記載された労働条件通知書を提示されることになります。丁寧な会社であればどのような業務を想定して提示しているのか、期待値なども含めて詳しく説明しています(これ割と大事です)。続いて、入社後のオリエンテーション・あるいはオンボーディングのプログラムなどでより詳しく人事制度に関する説明が行う機会が盛り込まれているケースが多いです。
 採用の後は実際の業務の中で触れていくことになるわけですが、業務開始後すぐに目標設定を行うことになります(お試しで設定しない企業もあります)。ここでまず採用段階でしっかりと説明を受けていれば求められていることが理解できているので従業員自身でも比較的目標は設定しやすいです。この後のプロセスは企業によりますが、評価が実施されるまでは1on1、中間レビューなどの中で適宜補正し、最終的には自己評価を行い、上司と面談を行なっていくことになります。この面談でどこまで擦り合わせられるかは頻度高くコミュニケーションをとっているか、ネガティブフィードバックも行えているのかなどによって変わってきます。ここから先では従業員自身は上司からのフィードバックを待つしかありません。
 評価のフィードバックは調整会議・人事委員会などを経て最終的に確定したものが伝えられるわけですが、上司との面談時よりも下がっていたりするとその理由を説明する必要が出てきます。この理由が相対評価の場合は良い評価の枠が決まっていたりするので高評価者が多いと下がる人が出てくるというわけです。会社業績も加味した係数設定が行えると辻褄を合わせることもできますが、単に「致し方なし」で済まされることも多いです。結果、人事制度の納得感は低下します。

人事部は何をするの?

 ここまで従業員にとっての人事制度との接点を中心に見てきましたが、お気づきの通り人事部が出てきていません。人事部はこの目標設定から評価のプロセスにおいてはスケジュールを案内し、人事委員会の運営、システムの運用を行なっています。なので目標や評価について直接的に従業員とコミュニケーションをとることはありません。よって従業員にとっては上司が唯一の人事制度の運用上の接点になってくるわけです。この上司(マネジメント)がどこまで人事制度を理解し、メンバーと適切なコミュニケーションを行えているかで従業員の人事制度への納得感は変わってきてしまいます。会社へのエンゲージメントが低い際などには人事制度が悪者になっているケースもあり、マネジメントが「人事制度がイマイチだから申し訳ない」と言っているようなケースも見られます。
 人事部はマネジメントが運用できるようにサポートし、一緒に改善していくことが必須となります。その意味でも人事制度を導入する際には経営だけではなく、マネジメント層にもしっかりと理解してもらえるように落とし込むことが不可欠になります。

どんな人事制度かよりも運用プロセスを

人事制度はシンプルなものが良いという声が多いですが、これは運用しやすいものを求めた結果です。シンプルという言葉には色々なニュアンスがあるのでざっくりした人事制度でも良いように聞こえてしまうこともありますが、これは危険で運用していく中であれやこれやとルールが追加されていきスパゲッティー化する危険があります。最初は等級、報酬、評価制度の主要な論点を中心に筋肉質に作っておき、後は運用プロセスをしっかりと整備していくことをお勧めします。今回、人事制度はマネジメントの運用次第で従業員の納得感が大きく変わってきてしまうことを述べてきました。運用プロセスの整備は何をすれば良いのかについては次の機会に触れていきたいと思います。