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スタートアップの人事制度は能力ベース?


スタートアップ企業の人事制度の特徴

人事制度のみならず採用のプロジェクトをご支援することもあり、色々なスタートアップ企業の採用ピッチ資料を拝見することが多い。シンプルな人事制度の企業もある一方で意外にも年功的な制度になっていそうな企業も見受けられる。実際、IPO後の企業が人事制度を見直す場面にも携わったが、能力ベースの等級構造になっていたり、重複型や複数賃率の給与テーブルを持っていたりしていた。

何故、能力ベースの人事制度なのか?

全てはわからないが、実際に確認できた範囲では役割や職務では組織内で仕事が変わった際にグレードを落とすことになるため必然的に能力ベースになったとの説明を複数回聞いたことがある。確かに職務型は変わる可能性があるが役割型でそこまで変わるのかは少しピンと来なかった記憶がある。釈然としないのが「能力ベースだとなぜ仕事が変わってもグレードが変わらないのか?」の部分。これはつまりは年功的な運用になっているとのことではと感じられた(降格もあるとのことではあった)。おそらくポータブルスキルを重視しているのだろう。なのでよくよく見てみるとコンピテンシーを用いたグレード定義になっていたりする。

IPO後スタートアップで起きていた共通課題

IPO後は徐々に牽引してきたリーダー人材がSOを持っていることもあり抜けていく運命にある。この後、何が起きるかと言うとメンバークラスをミドルマネジメントに登用したり、中途で大企業出身者をマネジメントクラスとして採用したりし始めることになる。結果、ミドルマネジメントクラスが機能不全を起こし始め、メンバークラスの離職なども増え始める。つまり「マネジメント力の向上が必要になってきた」が共通課題でした。

人の能力を評価してグレードを決める難しさ

能力ベースの場合、「人」をみて能力を評価してグレードを決めるわけですが、実際にはコンピテンシー項目の評価だったり実態としては役割レベルの評価だったりするので抽象度が高い世界になります。このため能力の目利きがマネジメントによってばらつきが出やすいところが特徴になってきます。もう少し言うと好みが入ってきます。こうなってくるとメンバーにとっての自身のグレードへの納得感が徐々に落ちてくることになります。職務型であれば、マネジメントは組織の事業計画やOKRを達成するために用意するポジション毎の職務要件を踏まえて適切な人材をアサイメントすることになるため適材適所な配置につながり、比較的グレードの説明がしやすいところはあります。

2000年代の大企業の人事制度みたい?

大企業の人事制度をメンバーシップ型とよく言いますが、結果的にスタートアップの人事制度の中には徐々に複雑化し同じ道をたどっていく可能性がありそうな印象を受けています。各社の判断次第ですが、「人」を評価するということ自体が難しいことであり、それによってグレードを決めるという発想は避けられるのであれば避けた方が良いと思います。「人」を評価してグレードを決めるのではなく、その人が最も活躍・成長できる仕事にアサインすることでグレードを決めていく方がマネジメントにとってもポジティブなコミュニケーションが行えるのではないでしょうか(勿論、その過程としてメンバーのことを深く理解する必要があります)。